東電OL殺人事件

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104369010

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で借りた別の本に挟まっていた、誰か知らない人の貸出図書の詳細にあった本。
    「そういえばそんな事件があったし、その時は読んでみたいと思ったなぁ」ということで、今回図書館で借りた。
    そもそも私は、昼は大企業に勤めるエリート女性会社員が夜は売春婦だったという事実に興味を持った訳で、その興味というのもそういう境遇になった女性の心の変遷に興味があった。
    でもこの本は被害者になったこの女性の心の変遷にはほとんど触れておらず、容疑者となった(後に無罪)ネパール人の男性のこととか裁判の経過などを追うばかりで、全くの期待外れだった。
    エリート家族、優秀なOLなど紋切り型の形容も寒々しく響く。そもそも被害者はいわゆるOLと形容されるようなお茶汲み要員ではなく、大企業に総合職で採用された女性であり、それが男女雇用機会均等法による形ばかりの職だったとしても(或いは本当に期待されて就いた職だったとしても)、「東電」「OL」殺人事件などというキャッチーな呼称で呼ばれること自体にさえ違和感がある。
    初版は2000年5月10日だからもう23年も前の本になる。その時代にはこういう認識が一般的だったという証左なのかもしれない。

  • 再審決定の報道に再読。以前読んだときは「事実」の重みに圧倒されてしまい、それ以外の印象が残っていない。犯人とされた人は冤罪の疑いが濃厚であること、そして何よりも「エリートOL」が安い売春婦として夜毎街角に立っていたという異様さ……今思えばやはり野次馬根性を大いに刺激されていたのだと思う。

    再読したら、どうにも耐え難く思うことが目について、うつうつとした気持ちになってしまった。いったい何の権利があって、私はこの人達の個人的な事情をつぶさに読んだりしているのだろう。被害者の女性はもちろんのこと、被告の男性やその周囲の人たちの、どう考えても人には知られたくないことを、どんな大義名分があって知ろうというのだろう。

    著者はルポライターなのだから、これは「仕事」だ。被告の冤罪を晴らそうとして支援もしている。それでもなお、これはないだろうと思わずにはいられなかった。被害者の妹の行動を尾行までして調べ、家族間の軋轢を想像で書く。裁判に出廷した証人についての個人的な印象を「風采の上がらない」などと繰り返し実名と共に書く(何と多くの人がここで実名を曝されていることか!)。

    最も抵抗を感じたのは、殺された女性への勝手な思い入れだ。安吾の「堕落論」を持ち出して彼女の「大堕落」と世間の「小堕落」を対比させたり、妙な「聖性」を付与したり、いずれも安易で、しかも根拠がない。これは酷い。

    被害女性はまず間違いなく精神を病んでいたのだろう。彼女の考えていたことはわからないが、この世で安息を感じられる機会が永遠になくなったことを悲しく思う。

  • 会社の人に勧められて読んでみた。
    東電OLの心の闇について様々な推測が描かれていたが、結局のところ真実は謎のままである。
    悲惨な事件であることに違いはないが、私自身としては、やっとこのOLが解放されたのではないかという気がしてならない。生前の彼女の行動や境遇はとても痛ましいものがあった。彼女のご冥福をお祈りしたい。
    またネパール人の被疑者については冤罪となって気の毒だったが、最後には無罪判決が出たようでよかった。何故無罪判決になったかの記述がなかったが、この点をもっと知りたかった。

  • 事件から15年を過ぎた2012年6月7日、再審開始決定が出た東京電力女性社員殺害事件。ニュースで見た後、たまたま図書館に行って物色してたら目に飛び込んできたのが、分厚い黒地の背表紙にある「東電OL殺人事件」という白文字。
    絶妙なタイミングで出会った。
    私は当時の報道をほぼ覚えていない。事件概要もあまりよく知らなかった。数ヶ月前に著書「女という病/中村うさぎ」でフィクションではあるが事件について、被害女性について少し知識を持った程度だった。
    しかし、本書を読むについて、事件そのものの真相はもちろんだが、被害女性”渡辺康子”に引きつけられた。
    彼女の異常的行動の真相はいったい何だったのか。

    今回釈放される元被告人は無罪だろうと、私も思う。では、真犯人はいったい誰だったのか。本書にも登場する事件関係者の中にいるのか、全く無関係の人間だったのか。事件から15年、真相解明は非常に困難だろう。

    今、どうしても気になってしまうのは”東京電力株式会社”。被害者が勤めていた会社。昨年の東日本大震災での福島原発事故。政界や警察と当時(から)なにかあったのではと思ってしまう。

  • 事件自体に興味あり。ルポとしては泰子の部分はグロテスクを補強した。

  • 取材先の風景から被害者の人生に思いを馳せる著者。ここでこんなことまで想像する?!と思わずツッコミたくもなります。死人に口なし・・・・

  • グロテスクの後読んだ。同じような事が繰り返し書かれており退屈だった。。。ノンフィクションなだけに展開も薄く、途中で本を返してしまった。。。

  • このタイミングで被害者の体内から容疑者以外のDNAが検出されたと報道されたのには、どーしても恣意的なものを感じてしまう。

    東電OLの心の闇。いったい、それは何だったのか。

  • 読みにくくて疲れた…。途中飛ばし飛ばし読んだ。
    これを読むと『グロテスク』の方が面白かったなと思う。

  • 916

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編集者、業界紙勤務を経てノンフィクション作家となる。1997年、民俗学者宮本常一と渋沢敬三の生涯を描いた『旅する巨人』(文藝春秋)で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年、『甘粕正彦乱心の曠野』(新潮社)で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。

「2014年 『津波と原発』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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