- 新潮社 (2018年5月22日発売)
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感想 : 16件
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784104371068
作品紹介・あらすじ
彼女は消えない炎のような人だった。この美しい年上の人に、僕は恋をした──。炎は消えてもその来歴は残る。ひとりの男の人生を根底から動かして、海の向こうへ、燃えさかる炎へと向かわせた、崇高なその行為とは。二人の間を流れた電流とは何だったのだろうか──。戦後の日本とヴェトナムを舞台に人間の尊さと愚かさ、平和と戦争、愛と憎しみを描き出す激しくも美しい物語。心震わせる著者入魂の飛翔作。
感想・レビュー・書評
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北川が平和運動家のレターナ・ヴァイスと文通を続ける過程を、メーデー事件を皮切りに当時の世相を織り込みながら綴っていく物語だが、北川の思いが迸り出てきて楽しめた.ヴァイスの焼身自殺で文通は終わったが、圧巻は鈴本教授の誘いでベトナム戦争の最中に現地を訪問する件だ.文通の甲斐あって通訳として参加した北川.アメリカの裏面を直接見てきた彼は、最終的にヴァイスと同じ形で逝く.
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戦争、平和を考えるいいきっかけになりました。
小さい頃によその国でやっていたベトナム戦争。その真実を少しでも知ることができてよかった。
ただ、ラストは私には、、受け入れられない。でも、あの終わり方でなければ終わらなかったのかな、とも。
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湿気をはらんだ、熱い空気。
行きかうすさまじい量のバイク。
活気あふれる若々しい国。
そう、この街には、老人が少ない。
何十年にもおよぶ長い戦いが終わって、
まだ40年しか経たない、私が見たホーチミン。
欧米人のツアー客に紛れて、見た戦争証跡博物館。
長くバスに揺られて訪れた、クチトンネルツアー。
ベトナム戦争は複雑だ。
事前に勉強していったのに、今でもさっぱりわからない。
大体の人の認識は、ベトナムは大国アメリカに勝ったということと、
アメリカは人体に甚大なる影響をもたらす「枯葉剤」を撒いた、
という2点のみ。
だけど違う。
アメリカは後から介入してきただけで、
ベトナム人はもともと、ベトナム人と戦っていたのだ。
本書、『炎の来歴』は太平洋戦争真っ只中に少年期をすごした青年と、
偶然が縁を結んだアメリカ人女性の間で交わされた
往復書簡がキーになる。
平和はどこにもないのだろうか。
祈り続ける彼らの間にあったベトナム戦争。
なぜ平和はこんなにも遠いのか。
異民族だけでなく、主義や主張の違いだけで、
同じ容貌をした人々をも残酷な刑で殺してしまうことができる。
そうだ、その後もずっと様々な国で起こり続ける、
内戦は、民族紛争は、異国間の戦いより、ずっと恐ろしい。
昨日まで親友だったとなりのおじさんが、おとうさんを殺す。
実は本当は、よく似た顔をした、違う民族だったから…。
そんなことが、世界中で起きている。
悲しいことに、今も。
日本は1945年以降、ずっと戦後である。
それ以前はそう、「戦国時代」――今でこそ歴史ロマンのようになっているが
そもそもあれは内戦ではないのか――は、
日本人も同じ民族同士で戦っていた。
わずかそれは150年前まで。
今が戦前ではないと、誰が言い切れるのだろう。
同じような顔かたちをした他民族を簡単にヘイトするその口で、
人はなぜ、戦争のない世界平和を祈れるのだろうか。
戦争は国がやることで、個人のことではないと
思っていやしないだろうか。
この物語をきっかけに、もう一度、考えたいと思う。
そして多くの人に読んでもらって、このことをよく考えてほしいと思う。 -
小さなきっかけから、アメリカに住む平和運動家の女性と文通することになった北川。
14年間の文通期間を経て、戦時下のベトナムを訪問することになった。
文通という手段が、二人の関係を濃密にした感があると思う。
ましてや、北川にとっては異国の言語で、それを読み解くために、何度も何度と手に取っていたのだろうから尚更。
私にとっては、二人の話よりは、知識の薄かったベトナム戦争の本という意味合いの強い作品でした。
戦時下のベトナムを訪れ、病院裏の光景を見た北川が壊れてしまった結果のラストかなと感じました。
私には、まだまだ知らなければならない戦争の話が沢山あると思います。
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2022.10.18 図書館
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愚かで残酷で無意味。
犠牲になるのは、力を持たない無抵抗な人たち。
それが戦争というものなのだろう。
日本では表向き平和な時が流れているが、世界のどこかでは理不尽な時間が流れている。
PEACEはいつ訪れるのだろう。
その道のりの果てしなさを思うにつけ、自分の力が小さいことを実感し、悲しくなる。
自分ができることはあるのだろうか。
この先もあきらめずに考えていきたいと思う。 -
ベトナム戦争,ひいては戦争反対への著者の強い思い,平和への希求が伝わってくる.始めは,きみというのが誰のことかわからなかったが,読むにつれ,主人公への嫌悪も募り,私にとって微妙な味わいの小説であった.
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日本とアメリカ、今よりもはるかに交流が大変だった時代に、文通で強く結ばれた1組の男女。
戦争と平和、峻烈な愛。
この物語の孕む熱量は、凄まじい。 -
とても熱量のある作品でした。面白かったです。
ベトナム戦争については世界史くらいの情報しかありませんでしたが、終盤の描写には圧倒されました。
暴力そして戦争の残酷さ愚かさ、平和の尊さ。「戦争をする世の中になったらいいと思う」という、昔少しの間やりとりした人はやっぱり病んでたのだと思いました。
作品から感じる電流や、ふたりを包んだ炎…そんな終わり方しか無かったのか、というやるせなさはありますが、読んで良かったです。 -
太平洋を挟んで「平和」で繋がった男女の物語。男はベトナムに行き、戦争の真実を肌で感じる。焼身自殺した彼女への思慕は、男の運命をどこに導くか?
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奥深~い、恋愛小説である。
爽やかな、とかドキドキと言った展開ではなく、
手紙による言葉の心への恋愛である。
平和とはあなた!
恋愛は思想確認!
壮絶な死による衝撃事実!! -
時代は、軍国少年が戦争の終わりにより価値観を変えなければならなかった、1940年代終盤だろうか。作家たちのぶつ戦争批判に賛同していたころ、生活階級の違いをまざまざと見せつけられた隣の先輩に届いた一通の手紙を開けてしまう。
中にはアメリカからの手紙。勉強していなかった彼だが一生懸命辞書を引きながら訳した。そして、先輩から委託されたことにして返信をした。それがこの物語のはじまりだった。
当時はどんな時代だっただろう、戦争反対、自衛隊反対のうねりの中で、海外からの圧力を受けつつ実質的兵力を持つ決断をした国の国民は、段々と愛想を尽かせやがて何も感じなくなっていった末路がいまの世の中のような気がする。一方この青年はそうした社会情勢をなんとかしたいという運動にのめりこむ。そのあと押しに、アメリカ人のヴァイス女史の手紙が、なっていないとは思えないが。
P111で"きみ"の正体がわかる。本当はもう少し早く気づいてもよかったのかもしれない。しかしここで誰かに話しかけていたことと手紙で海の向こうのあの人に話しかけていたということが明確に認知できるようになる。物語が一気に私たちを引き込んでくるきっかけともいえよう。
自分がこんなやり取りをしていたらどうだろう。その活動に相当な熱量を持っていなければ、主人公のような結末はきっと選ばなかった。逆に言えば、活動や、手紙の主に相当な熱量を注いでいたからこそ、その決断ができた。自分のよりどころにしていた人が、想いを共にしていたとしたら、なおさらだったろう。
戦後日本でのつつましやかな生活だけでなくヴェトナムでの生活もつぶさに語られる点では戦後ルポかと読み間違えるほどだが、太平洋を隔てる二人の愛と行く末を最終的に書ききったという点でこの小説は、やはり小手鞠るい作品ではあるが、決して甘くなくそして切なすぎる作品だった。
著者プロフィール
小手鞠るいの作品
