- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104372041
作品紹介・あらすじ
9つの物語を包みこみ、生き地獄のような世界に希望を灯す、かつてない小説体験! 親の介護に追われる男は謎の団体に父親を託し潜入取材を始め、人間がお金となり自らを売買する社会で「ぼく」が見たものとは。真夏の炎天下の公園で、涙が止まらない人で溢れかえる世界で、自分ではない何かになりたいと切望する人々が、自らの物語を語りはじめたとき――。地上に生きるすべてのものに捧ぐ著者渾身作
感想・レビュー・書評
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事件前夜、のような妙な予感を孕んだ、謎の高揚感と悪夢感があり、しりあがり寿に通ずるものを感じた。読ませる文章で面白かった。
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なんとも不思議な感じのする作品、短編9編を繋いでいく部分が書き下ろしであり短編自体はさまざまな誌に2011年から2017年に亘って発表された作品。
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★「焔」というより「熔」★人が人でなくなるような、溶けていくような瞬間を味わえる。ばらばらの短編なのか、もともと一連のものとして構想したのかは分からないが、各編をつなぐブリッジを入れることで趣きが3倍になる。うまいなあ。
半地下に暮らす男が土と一体になる小説が特に好き。地下では土に囲まれて暮らしていることをすっかり忘れていた。純血信仰の正反対をいく「混血でなければ弱い」という未来の相撲の設定も見事。 -
焔を囲む人々が、渾身の思いを込めて一人ずつ不可思議な話を語っては消えていく。
九つそれぞれの物語は、人が生きていくうえでのアイデンティティが揺らいでいて、不気味。そして、そもそも語り手たちは何のために集まっているのか、具体的な状況は明らかにされず、取り残されていく「私」がどうなるのか、何が起こっているのかと引き込まれて読み進めた。
そしたらなんと、それぞれの物語の初出媒体は様々で、単行本化するにあたり不可思議な設定を書き下ろして長編に仕立てたようだ。
なるほど、これを単なる短編集として読んだら印象は薄まり、読後の高揚感は味わえなかっただろう。巧みな仕立てに舌を巻いた一冊だった。 -
自分とは、人間とは何かを認識し、自分以外の、人間以外の何かになりたいと渇望する。
人間に対する絶望。世界の崩壊。でも。焔は燃え続けている。
排除することは簡単なのだ。完全なる相互理解は叶わなくとも、理解しようと努めることは出来る。ただ知ることだけでもいい。そこから始められる。
自分とは何か。自分の物語を語る術を得たならば、他人の物語を生きることができる。絶望に満ちたこの世界で、希望はきっと、そこにしかない。 -
文学
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語ること、物語のすばらしさ
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「私」も野原のようなところで輪になって座っている。
中央にはオレンジ色の焔。
ふいに草の香りが立つ。星は一つも光ってない。
窓の外にはカラス。「じんえん」…
本を読み終えて間も無く。
小説と現実の境目が揺らぎ出すほどの豪雨と
暴力的なニュースが飛び込んで来て…
ひょっとしてくるくる回れば涼しくなるかもよ?
そんな馬鹿な想像に背筋が凍る思いがした。
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面白いものとそうでないもののバラツキがある。
ディストピア的なものは凄く良かったが、最後の二つは私には全く理解できない。