脊梁山脈

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 193
レビュー : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104393053

作品紹介・あらすじ

23歳の終戦、いかに生き直すか。直木賞受賞作『生きる』から十年、著者初の現代小説。福島県費生として上海の東亜同文書院に学び、現地入営した矢田部信幸。七年ぶりに戻った祖国は灰燼に帰していた。復員列車で助けられた男をたずね、深山を巡るうち、木工に魅せられ、その源流とこの国のなりたち、暮らしのありようを辿ってゆく。戦争の爪痕、男女の機微、歴史観……重さと艶が違う、第一級の長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 三浦しをんさんの書評を読んで以来、ずっと読みたかったのだが、なかなか手が着けられず何度も図書館で借り直したこの本をやっと読みました。
    戦後の引き上げ列車でお世話になった人を捜すというストーリーだが、その捜し当てるまでが長く、話が脇へ逸れまくって途中で本当に再会するのだろうかと不思議に思うような内容だった。主人公が終戦直後こそ畑を耕し貧困に苦しんだが、その後叔父からの遺産により働きもせず、自己満足な目録を作るために母親を放り出して旅行に行きまくってる姿はなんだかなぁ…。でも、不真面目とか怠惰な印象はなかったので(^_^;)
    私は以前宝塚で蘇我入鹿のお芝居を上演してから、入鹿有能説推進派なのだが、この主人公の解釈はなかなか斬新で面白かった。

  • 素晴らしい。
    物語、人物、文章、どれもこれも言うこと無し。

    戦後の痛み、木地師の世界、山の描写、男女の悲哀、古代史への考察、
    これらがしっとりと重なり合い、ゆっくりと進みながらも、
    要所要所で心乱され、どんどん惹き込まれていく。

    佳江と多希子、そして母、
    女は強く、痛々しく、現実を受け入れ、生きていく。
    それに比べて信幸の何と甘いことか。
    男ってなんでこう夢想の中で生きていけるのか。
    しかし、そこからこそ生まれるものもある。

    蘇我氏王家説は、面白かった。
    歴史は改変される。結局真実は分からない。
    それでも、人はそれを求めずにはいられないのだと思う。

  • 福島県費生として上海に学び、その地で入営した矢田部信幸が、大陸からの復員列車で助けられた男・小椋康造を探し深山を巡るうち木工に魅せられ、木地師の源流を探す旅を始める。それは、23歳で終戦を迎え、世の中に放り出された男が生きるということを見つめなおす、再生の旅でっあった。

    「ロゴスの市」でその文章の美しさにひかれた乙川さんが大佛次郎賞を受賞した話題作ということで手に取った。
    信幸、信幸の母、画家の佳江、芸妓の多希子、それぞれの戦後は女は強くたくましく、男は・・・。
    期せずして伯父の遺産を引き継ぎ、戦後の苦労も知らず働かずして生きていける信幸の人生が定まらないことには鼻白む思いもあったが、木地師の源流を明らかにする10余年にわたる旅は生活の心配がない人間にしか出来なかった仕業で、それはそれなりに価値があったのかなとも思う。

    途中、大化の改新あたりの史実とされている説に大胆に異論を呈するあたりは、本作における壮大な寄り道ととって、読み飛ばしたりしたけれど、歴史好きにはたまらない部分であるかもしれない。

    近江を起点に、良木を求め深山を転々としていく流浪の民、木地師が各地に流れ着いた歴史のくだりは胸を打つものがあり、一本の木に対する敬意や木目へのこだわりなど、お仕事小説の面も併せ持ち、木工品への見る目が変わったように思う。

    戦後15年を経ても未だ終戦はこないという康造。彼は決して稀有な存在ではないのだろう。

    ーー自ら作りえなかった民主国家を謳い、発展に酔い、戦争を忘れていくのは国で、その実態は権力欲と利己心に冒された野心家の群れであろう。・・・康造のような人は大勢いて、彼らは戦地の惨劇を自身の過ちとして悩み続けるーー

    美しい言葉で多くのものを盛り込んだ壮大な物語でした。

  • 復員列車で世話になった小椋という男を捜す主人公が、やがて木地師の世界にのめり込み、信州、近江、東北を訪ね歩く壮大な物語。
    お金と時間があり余り、左団扇の主人公は妙に老成。まるで浮き世離れしたご隠居さんのようでした。これで、20~30代とは…。一方で、戦後を精一杯生きる女性たちのたくましさが目を引きます。
    古代史の記述が異様に長~い。そのためか、最終章は駆け足です。海外に渡った佳江のその後が気になりました。

  • 品のある小説なのはわかるけど、なんとも重くて続きませんでした。

  • みうらしおん氏絶賛。

    読みづらい内容・文体・ことばなのに
    なぜか惹かれてしまう内容。

    人生観・歴史観・恋愛観・芸術観など多岐にわたって影響をうけた。

    この内容が面白いと思うのは、私が年を取ってきた証拠かもしれないと思うと少し悲しい。

    硬派な小説なので、時間を空けてもう一度読んでみたい。

  • 大佛次郎賞,という感じ。私には難しかったけど,理解できるところがあるのが有り難かった。読後感も良い。
    こんな風にして生活していける人がいるんだなぁと嫌みじゃなく思いながら読んだけど,最後,そういう人に存在してもらうことも重要なんだろうなと思った。

  • 大陸からの復員列車での出会いが信幸の人生に大きな影響を与えていく。
    本地師を探し深山を巡り木工に魅せられ、そしてこの国の成り立ちを紐解いてゆく。

  • 文章が上手い。それがあるからこそ最後まで読めた感。

    話題があちこちに飛びすぎて散漫になりすぎてると思うねんなぁ。終戦後の日本の風景を陰惨に描いているかと思ったら、木地師の丁寧な木工の仕事を評価して、その延長で日本人のルーツを大化の改新というテロ事件に遡って探ってみたり、そうかと思ったら飲み屋の女とゴニョゴニョ、芸者とゴニョゴニョ、おかんに家を買ってやったり、コンクリート企業の社長ときったはった…

    なんで、終戦直後の兵隊引き揚げ列車で世話になった人を探す小説でここまで無造作な寄り道をしまくるのか?それが一本につながる快感はなく、最後にちょっとだけ種明かしして寄り道は寄り道のままでは、読後のイメージは散漫なまま。

    カラオケがない時代のスナックの会話ってこんな風に迷走する感を楽しんでたのだろうか?なんとなくそういう懐かしさ(っちゅうても俺はほとんどそういうスナック知らないけど)を思い出させる小説だった。

    さすが、時代小説家の書いた現代小説というべきなのかも知れないな

  • 戦後の混乱は、経験した者しか分からない何かがあるだろう。その空気が感じられる良い作品であった。自由を手にしたら、何をやっていくか。生き甲斐とは、何か。一気に読ませてくれた。

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プロフィール

1953年東京生れ。1996年『薮燕』でオール讀物新人賞を受賞、97年に『霧の橋』で時代小説大賞、2001年に『五年の梅』で山本周五郎賞、02年に『生きる』で直木賞、13年初の現代小説『脊梁山脈』で第40回大佛次郎賞を受賞。

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