脊梁山脈

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104393053

作品紹介・あらすじ

23歳の終戦、いかに生き直すか。直木賞受賞作『生きる』から十年、著者初の現代小説。福島県費生として上海の東亜同文書院に学び、現地入営した矢田部信幸。七年ぶりに戻った祖国は灰燼に帰していた。復員列車で助けられた男をたずね、深山を巡るうち、木工に魅せられ、その源流とこの国のなりたち、暮らしのありようを辿ってゆく。戦争の爪痕、男女の機微、歴史観……重さと艶が違う、第一級の長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 三浦しをんさんの書評を読んで以来、ずっと読みたかったのだが、なかなか手が着けられず何度も図書館で借り直したこの本をやっと読みました。
    戦後の引き上げ列車でお世話になった人を捜すというストーリーだが、その捜し当てるまでが長く、話が脇へ逸れまくって途中で本当に再会するのだろうかと不思議に思うような内容だった。主人公が終戦直後こそ畑を耕し貧困に苦しんだが、その後叔父からの遺産により働きもせず、自己満足な目録を作るために母親を放り出して旅行に行きまくってる姿はなんだかなぁ…。でも、不真面目とか怠惰な印象はなかったので(^_^;)
    私は以前宝塚で蘇我入鹿のお芝居を上演してから、入鹿有能説推進派なのだが、この主人公の解釈はなかなか斬新で面白かった。

  • 小説の部分より、研究論文的な部分が興味深かった。こういう、よく調べて書かれている小説が好き。

  • 素晴らしい。
    物語、人物、文章、どれもこれも言うこと無し。

    戦後の痛み、木地師の世界、山の描写、男女の悲哀、古代史への考察、
    これらがしっとりと重なり合い、ゆっくりと進みながらも、
    要所要所で心乱され、どんどん惹き込まれていく。

    佳江と多希子、そして母、
    女は強く、痛々しく、現実を受け入れ、生きていく。
    それに比べて信幸の何と甘いことか。
    男ってなんでこう夢想の中で生きていけるのか。
    しかし、そこからこそ生まれるものもある。

    蘇我氏王家説は、面白かった。
    歴史は改変される。結局真実は分からない。
    それでも、人はそれを求めずにはいられないのだと思う。

  •  復員した矢田部信幸は列車内で腹痛に襲われ、同じ復員兵の小椋康造に介抱される。その名前と住所をたよりに、御礼を言うため15年間探し続ける物語。その間、木地師の世界が丁寧に描かれていく。また、女性2人が花を添えている。1人は上野のガード下、後に湯島に店を出す佳江、もともと画家で、欧州に絵の修行に飛び立つ。もう1人は、木地師の家で育ち、後に芸者、身体を壊して入院する小倉多希子。乙川優三郎「脊梁山脈」、連作6話、353頁、2013.4発行。一気に読了。信幸と退院後の多希子の2人に、幸福と希望が~!

  • せきりょうさんみゃく ある地域の背骨に相当するような大山脈で、分水界となるもの。
    付箋
    ・運よく生き残った者がさらに生きてゆくためにする苦労は、代わりに不運を背負って死んだ人への償いかもしれない。
    ・画家の場合、普通の神経の持主であることが却って障害になるときもありますから
    ・密やかな葦の群落が地下水の浅いことを知らせてくれるように、寡黙な、しかし淳良なものこそ実生活の中に浸透してゆくべきであった
    ・そのお友達のお父さまは息子さんの青春を知って喜ばれたでしょうか、わたしがその人なら充たされることはないと思います
    ・おのころと比べたら天国ですけれど、ケセラセラも悪くありませんね
    ・専門書に人生の正体や深層の世界はかかれていないし、隣人の苦悩や真因も教えてくれない

  • 重厚。人の生き方や国の歴史について考えさせられた。

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  • 木地師の歴史は韓国渡来人ではないか、という説の探求でもある小説。説の探求にしても、小説の出来としても、実に中途半端。

  • 福島県費生として上海に学び、その地で入営した矢田部信幸が、大陸からの復員列車で助けられた男・小椋康造を探し深山を巡るうち木工に魅せられ、木地師の源流を探す旅を始める。それは、23歳で終戦を迎え、世の中に放り出された男が生きるということを見つめなおす、再生の旅でっあった。

    「ロゴスの市」でその文章の美しさにひかれた乙川さんが大佛次郎賞を受賞した話題作ということで手に取った。
    信幸、信幸の母、画家の佳江、芸妓の多希子、それぞれの戦後は女は強くたくましく、男は・・・。
    期せずして伯父の遺産を引き継ぎ、戦後の苦労も知らず働かずして生きていける信幸の人生が定まらないことには鼻白む思いもあったが、木地師の源流を明らかにする10余年にわたる旅は生活の心配がない人間にしか出来なかった仕業で、それはそれなりに価値があったのかなとも思う。

    途中、大化の改新あたりの史実とされている説に大胆に異論を呈するあたりは、本作における壮大な寄り道ととって、読み飛ばしたりしたけれど、歴史好きにはたまらない部分であるかもしれない。

    近江を起点に、良木を求め深山を転々としていく流浪の民、木地師が各地に流れ着いた歴史のくだりは胸を打つものがあり、一本の木に対する敬意や木目へのこだわりなど、お仕事小説の面も併せ持ち、木工品への見る目が変わったように思う。

    戦後15年を経ても未だ終戦はこないという康造。彼は決して稀有な存在ではないのだろう。

    ーー自ら作りえなかった民主国家を謳い、発展に酔い、戦争を忘れていくのは国で、その実態は権力欲と利己心に冒された野心家の群れであろう。・・・康造のような人は大勢いて、彼らは戦地の惨劇を自身の過ちとして悩み続けるーー

    美しい言葉で多くのものを盛り込んだ壮大な物語でした。

  • 品のある小説なのはわかるけど、なんとも重くて続きませんでした。

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著者プロフィール

1953年 東京都生れ。96年「藪燕」でオール讀物新人賞を受賞。97年「霧の橋」で時代小説大賞、2001年「五年の梅」で山本周五郎賞、02年「生きる」で直木三十五賞、04年「武家用心集」で中山義秀文学賞、13年「脊梁山脈」で大佛次郎賞、16年「太陽は気を失う」で芸術選奨文部科学大臣賞、17年「ロゴスの市」で島清恋愛文学賞を受賞。

「2022年 『地先』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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