脊梁山脈

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 225
感想 : 42
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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104393053

感想・レビュー・書評

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  • 三浦しをんさんの書評を読んで以来、ずっと読みたかったのだが、なかなか手が着けられず何度も図書館で借り直したこの本をやっと読みました。
    戦後の引き上げ列車でお世話になった人を捜すというストーリーだが、その捜し当てるまでが長く、話が脇へ逸れまくって途中で本当に再会するのだろうかと不思議に思うような内容だった。主人公が終戦直後こそ畑を耕し貧困に苦しんだが、その後叔父からの遺産により働きもせず、自己満足な目録を作るために母親を放り出して旅行に行きまくってる姿はなんだかなぁ…。でも、不真面目とか怠惰な印象はなかったので(^_^;)
    私は以前宝塚で蘇我入鹿のお芝居を上演してから、入鹿有能説推進派なのだが、この主人公の解釈はなかなか斬新で面白かった。

  • 大佛次郎賞,という感じ。私には難しかったけど,理解できるところがあるのが有り難かった。読後感も良い。
    こんな風にして生活していける人がいるんだなぁと嫌みじゃなく思いながら読んだけど,最後,そういう人に存在してもらうことも重要なんだろうなと思った。

  • 文章が上手い。それがあるからこそ最後まで読めた感。

    話題があちこちに飛びすぎて散漫になりすぎてると思うねんなぁ。終戦後の日本の風景を陰惨に描いているかと思ったら、木地師の丁寧な木工の仕事を評価して、その延長で日本人のルーツを大化の改新というテロ事件に遡って探ってみたり、そうかと思ったら飲み屋の女とゴニョゴニョ、芸者とゴニョゴニョ、おかんに家を買ってやったり、コンクリート企業の社長ときったはった…

    なんで、終戦直後の兵隊引き揚げ列車で世話になった人を探す小説でここまで無造作な寄り道をしまくるのか?それが一本につながる快感はなく、最後にちょっとだけ種明かしして寄り道は寄り道のままでは、読後のイメージは散漫なまま。

    カラオケがない時代のスナックの会話ってこんな風に迷走する感を楽しんでたのだろうか?なんとなくそういう懐かしさ(っちゅうても俺はほとんどそういうスナック知らないけど)を思い出させる小説だった。

    さすが、時代小説家の書いた現代小説というべきなのかも知れないな

  • 正月に義理の父に借りて、なかなか手が伸びなかった一冊。
    読み出すと、文章は魅力的なんだけど、イマイチ主人公には共感できず。。

    主人公を通して著者の想いは伝わってくるんだけど、いかんせん歴史あり、男女の話あり、旅あり、と、いわゆる「ブンガク」なのかなあ、と。
    それでも最後までちゃんと読ませるのだから、面白かったんだと思います。
    が、ちょっと世代的な問題はあるかなー。

  • いま生きている作家でいちばん好きな作家、乙川さん初の現代小説。
    時代は戦後すぐの木地師の話。復員中に世話になった人に恩返しにいくところから木地師との関わりが始まる。古代史や日本書紀のくだりは、正直ついていけなかったが、旅の様子や多希子の芸ごとの場面は、時代小説でも得意としていることから安心して読めた。
    感想としては重かったなあ・・・氏の本でなければ手は伸ばさなかったであろうと思う。

  • 現代小説と言っても、昭和20年代の戦後復興の時期の物語です。戦争に傷ついた人たちが懸命に生きていくなかで、主人公が木地師とか秦氏とか天皇の万世一系とかを調べ、考えていきます。
    戦後復興時期の社会の様子や人の生き方・悩みなどが知れて参考になりました。
    木地師までの話は興味深かったですが、日本書紀に関する記述は入れなかった方が良かったと思いました。新解釈の根拠説明が十分でなく、納得性が弱かったです。また、戦争との絡みで天皇家の万世一系問題を書くなら、そのようなストーリー展開が必要と感じました。

  • 骨太の作品です
    敗戦直後からの15年を
    このような視点から眺めていく作品を読んだのは
    初めてのような気がする

    途中で挫けそうになりましたが
    結局 最後まで行きつきました
    青息吐息で終末を迎えた
    久しぶりの小説でした

  • 戦後の主人公は,お金に困っていないせいか,登場人物の女性たちと比較して,生きていく必死さというのが感じられず,木地師についての調査もそこはかとなく金持ちの道楽感がつきまといました。
    私には,木地師に魅せられた熱さというのがあまり感じられず,二人の女性に対するどっちつかずの態度のそうですが,淡泊な印象だけが残りました。

    飛鳥時代の考証については,歴史好きとしては斬新でなかなか興味深かったです。

    全体的にしっとしとしたお話なので,このような雰囲気が好きな人には合うと思います。

  • この小説の主人公は、若い大陸からの復員軍人で、復員列車で知り合った人との縁がもとで、また付き合いの薄かった親族の遺産を手にすることで、戦後の人生を木地師の研究に没頭するのだが、彼と彼を取り巻く人々の描写に戦後の人々の生活や心の葛藤が重く見せ付けられる。戦後の復興で発展する社会の一方で、伝統を守ろうとする人たちや、そのしがらみから抜けられない人、或いは伝統を新たに見つめなおそうとする人、など様々にいて、それぞれが四苦八苦して必至に生きて行こうとする姿は、当時の大変な生活がよく分かるが、一方で登場人物がそれぞれに個性が立ちすぎている感もある。副題にもある、「結局、人生はひとつの窓から眺めた方が良く見える」というニック・キャラウェイの言葉がキーワードである。これを作品にしたのが本書なのかもしれない。

著者プロフィール

1953年 東京都生れ。96年「藪燕」でオール讀物新人賞を受賞。97年「霧の橋」で時代小説大賞、2001年「五年の梅」で山本周五郎賞、02年「生きる」で直木三十五賞、04年「武家用心集」で中山義秀文学賞、13年「脊梁山脈」で大佛次郎賞、16年「太陽は気を失う」で芸術選奨文部科学大臣賞、17年「ロゴスの市」で島清恋愛文学賞を受賞。

「2022年 『地先』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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