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Amazon.co.jp ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784104393084
作品紹介・あらすじ
書下ろし長篇(12月刊)と連続刊行! 著者の原点と歳月を刻む記念碑的長篇。時に人は過ぎ去った日々から思いもかけない喜びを受け取ることがある。だからだろうか、響子は新たな世界へ繰り出し、追い求めた。完璧に美しい小説と馴れ合いでない書評を、カクテルのコンペティション、数十年来のパートナーとの休らいを。『この地上において私たちを満足させるもの』(12月刊)と対をなす長篇小説。
AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
静かに進行する物語が、深い余韻を残しながら読者を魅了します。主人公の響子は、作家との複雑な関係や自身の心の葛藤を通じて、人生の喜びや悲しみを探求します。文章は美しく、滑らかで、理知的な魅力を持ち、何度...
感想・レビュー・書評
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文章がとても美しいとういのか、なめらかというのか、読んでいてとても心地よい文章でした。
大きな事件が起こるわけではなく、決定的な悲しみがあるわけでもない。静かに物語は進み、深い余韻を残して終わります。それがなんとも心地よい。
タイトルに引かれて、借りて読んだ本ですが、よい出逢いでした。
本書を通して、読みたい本が4冊も増えました。
あらすじ:
主人公は中川響子、55歳。かつては旅行業界の新聞社に勤めていたが体調を崩し退職。その後はエッセイストとなり、やがて書評家となる。彼女は作家の谷郷敬(三枝昴星)と25年にわたる関係がある。彼には妻がいると知るのは2年ほどしてから。その妻は画家でベネチアに住んでいる。
響子は谷郷の才能と美しい文章に惹き付けられていたけれど、最近はそれに衰えを感じて始めている。そして、そこに不安を感じている。
その谷郷は妻がベネチアで病に倒れたことを知り、妻の元へと向かう。その後、喪失感もあり、響子は神経症を患い、休養を兼ねてパラオへと向かう。そこで、響子は谷郷の最新の書き下ろしを受けとり、彼女自身も再起していく。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文章の美しさに魅了される。2度読みした文章がいくつもあった。叙情的と言うより理知的な美しさの文章。
女としての自分を考えさせられた。もちろん落ち込みましたが。 -
美文調ではなく、よく磨かれた感じの文章を目指すのか。何か繰り返し、現代的な作品への不満が語られているが。
最後が温かな空気になっているから、それが心地よく。よかったなぁ 響子さん。 -
歴史小説の美文が素晴らしい著者が現代小説。高齢期を迎えたヒロイン響子は長年の公私にわたる深い付き合いのあった作家三枝の影響もあり、書評を書く立場になっている。三枝もまた歳を重ねてきた小説家の文章が枯れてきたという危機感をヒロインに感じる。これは著者自身?確かにあの美文は感じなかった。初めて現代小説を読む私自身の感じなのかなとも思うが…。メインテーマから逸れるかも知れないが、亡き従姉妹の夫が大学時代の恋人で、30年ぶりの偶然の出会いからのいろんな場面での会話が興味深かった。このような会話になるのかな、と。
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190105*読了
久しぶりに夢中で読み切った小説となりました。
出合ったきっかけはブクログの記事。なんとなく惹かれて、図書館で借りました。女性作家ものばかり読んでいるので、乙川さんのことも存じ上げず、もしその記事を目にしていなかったら知ることもなかったであろう小説です。偶然が繋げれてくれたご縁に感謝。
自分とは接点のない五十五歳の未婚女性。なのに、すごく惹かれる。孤独と戦いながら生きている人なのに、こんな風に生きたいとすら思ってしまう。わたしは響子さんのような五十五歳になれるだろうか。五十五歳になった時、こんな信念を抱いて、こんな生き方ができているのだろうか。
孤独になりたいわけではないのだけれど、自分の生き方を貫きたいとは思います。あと、書評家という職業にも憧れます。
響子さんが日本語の文章の美しさを何度も語るだけあって、久しぶりに整った日本語で書かれた小説を読んだように思います。文学に触れたというか…。今までに触れてこなかった単語もたくさんあって、難しく感じるはずなのに、流れるように読めてしまう。描写が上手くて、頭の中で人物が淀みなく動いていく。
最近、読んでいても、うっと詰まってしまう小説が多いように思っていたので、うーんこれはすごい。
乙川さんの他の小説も読もうと思います。乙川さんが創り出す文章をもっと味わいたいです。 -
初出2017〜18年
今年読んだベスト。
なめらかな美しい文体はさすが。
ラストが予想できたが、読み終えたくなかった。
旅行業界紙の記者からエッセイスト、さらに没良心と戦う書評家に転じた50代の主人公中川響子。30年近く前にパラオで出会ったカメラマン谷郷は、作家に転じ、美しい文学を間に置く恋人の関係が続いてきた。
最近良い作品が描けていない谷郷を響子は心配する一方、充分に推敲されず洗練されていない最近の小説、作家を、文学を愛する故に容赦なく批判する書評を書いて反響を呼ぶ。(当然そこには作者の思いが溢れている。)
別居してヨーロッパで画家として生きている谷郷の妻が病で苦境にあることを知って、谷郷は身辺を整理してベネチアに向かい、響子は喪失感と増えた仕事に追われて体調を崩し、南の島に西洋に向かう。そこに届けられたものが、この本のタイトル。
作者が好きらしいカクテルも物語の重要なアイテムだが、如何せん下戸なので理解が及ばない。
終盤の舞台、フィリピンのスールー海の小島での長期滞在は、一庶民には羨ましい限りで現実感が薄かった。まあ、行ってみたいけど。
気に入った作家たちが亡くなって、この3年、新しい作家を探して新刊書を週3冊読んできたが、過去の秀作も読んでみようという気にさせられた。
それにしても、作者はもう時代小説を書かないのだろうか。
追記
12/22の朝日新聞の書評欄に、諸田玲子がさすがと思える文章を書いている。「本を閉じたとき、文学への限りない愛を感じた。死や別離や苦悶の先にある希望、それが文学だよ——と、と著者の声が聞こえてきたような。」全く同感。 -
55歳、独身、書評家の響子は、作家の谷郷と関係を持っている。趣味は新しいカクテルを考案すること。優秀なバーテンダーと組んで、大会で勝つのを目標にしている。仕事、恋愛、趣味。彼女の人生はどう転がっていくのか・・・
まだるっこしいことをまだるっこしい文章で書かれたのを読むのが好きな自分にとってはご馳走。
これと言ってドキドキするような展開が続くわけでもなく、やや淡々と進む。その過程で、文学についてかったるい議論が続出する。そのかったるさはある人にとっては毒でしかないだろうし、私のような好き者のヘンタイには薬になる。
主人公の内面をひたすらに進むので、「55歳独身女性の人生はどんなものなのか」を体感している感じがした。時代小説を中心に書く、しかも男性作家が、現代小説でしかも女性の内面を描くのを読むのもまた趣き深いものがある。 -
旅行業界から転身してエッセイスト、そして書評家にと進んだヒロイン。
彼女の過去と現在にかかわってきた男たち。
人生の夕暮れに際して、彼らが選ぶ道はどこに続くのか。
クラシカルな文体がますます冴えわたり、これはもう、ひとつの芸の域。
思うがままに生きてきたようで、結局自分の望みを手に入れられてないという焦燥感を抱えるヒロインは、自分勝手な女だとは思うけれど、理解できる。
男も、女も、哀れ。 -
一気読み。
物語を追って止められなくなるのではない。
そこに書かれている文章を求めて、追ってしまう。
芳醇な言葉が紡ぐ大人の世界。ああ、好きだなあ。
『トワイライト・シャッフル』の「ビア・ジン・コーク」だったかな?その登場人物を広げて深めたような感じ。もしかして、同一人物だったりするのだろうか。
一筋縄ではいかない男女間を描いて、この硬質な雰囲気。
格好良い。
著者の読書への思いが、言葉に対する真摯な姿勢が、文章を書く者としての覚悟が、びしびしと感じられる作品。
読み終わると結構疲れた。でも、心地よい。
しかし、カクテルが飲みたくなるなあ。 -
「ロゴスの市」「トワイライトシャッフル」など、生きるということの例えようもない哀しさと力強さを、この上なく美しい文章で表現し続けてきた乙川さんが、「完璧に美しい小説」をテーマに描いた作品。
作中作である「この地上において私たちを満足させるもの」が12月に連続刊行されるという力のこもった作者の記念碑的長編小説。
文学は芸術であるという作者の思いがページの端々から感じられ、わかりやすいだけの言葉と、妥協の産物として量産される小説への痛烈な批判が止まらない。
作家、書評家、ひいては読者への苦言は、まさに現代の小説を取り巻く環境への静かな怒りと嘆きを表現して容赦がない。
作者は時間のせいにして文章をとことんまで磨く努力を怠っていないか、書評家は耳に心地いい無責任な賛美のみを書いて、核心をつく批判を避けてはいないか?私たち読者は、ただ読みやすく、奇を衒った作品ばかりをもてはやしてはいないか?どれもこれも思い当たり、耳に痛い言葉の数々。
それぞれがそういう努力をしなくなれば、文学というものは廃れ、活字の力も失われていくのかもしれない。先行きは暗い・・・
著者プロフィール
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