- Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104394043
感想・レビュー・書評
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江戸から明治に代わったばかりの時代、獄舎にて一人の打ち首の刑がまさに執行されようとしていた。そのとき半鐘の鐘が鳴り響く。数年ののち、その関係者に当時のことを語ってもらう形式で話が進んでいく。とても面白い。
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明治元年の年の瀬、徳川幕藩体制が崩壊し、明治新政府への移行がまだ落ち着かない混乱の江戸が舞台。
大火事が起こると牢獄の囚人たちを解放する「赤猫」という慣習により縄を放たれた三人の大物囚人を巡る物語。
明治に入った数年後、司法省の役人が当時の関係者に事情聴取をするという設定で、各登場人物による独白文といった形式で小説は進んでいくのですが、各々のキャラクタに合わせた生き生きとした口上が見事の一言で、著者の筆力には感心させられます。
江戸から明治へ、社会が大きく変わる時代感や、牢屋同心という下級役人の悲哀など、考証的な部分でも興味深いところが多く。
が、物語自体は大して面白いものではないので、口上が見事な分、やや冗長さを感じてしまったのも事実。
個人的に、人情モノはあまり好みでないというのもありますが。 -
人に定められた道を全うすることが「正義」その儀を問う浅田作品、今回は江戸伝馬町の牢屋敷囚人が迫り来る大火のため解き放ちの命を受ける。九死に一生を得た三人の囚人と牢の管理同心二人の生き方を、義という視点から考察する。許された限られた時間の中で自分の信ずる義を大罪を犯してでも遂行試みる三人、一方白砂の裁きを厳格に執行っする同心二人。不徳の義が徳の不義を嘲笑う、そんな流れに嫌気がさしたのか、天は同心に力を与えたのか?お白砂に不正、裁判に冤罪は付き物なのか!義に生きた「壬生義士伝」を思い出される。
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やっぱり浅田作品は引き込まれる!
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登場人物達の語りで物語を構成する浅田次郎得意のパターンですね。
各登場人物達が魅力的で、特に最後の丸山と杉浦の関係性には驚かされました。
もう少し丸山を描いてくれたらもっと良かったかな。 -
こういうの泣いちゃうんですよね〜
年を取って涙もろくなったのもありますが、やっぱり曲げられない正義ってのがあるんじゃないかと思います。 -
明治初期の江戸で大火事が起き、小伝馬町の牢獄の囚人たちが解き放たれた、これを赤猫の解き放ち、というらしい。
主役の囚人三人と二人の看守の役割は比較的はっきりしていて、浅田節の人情味溢れるセリフでホロリとさせるもいかんせん題材の火事での解き放ちってのがイマイチグッとこないんだなぁ…
やはり武士の本懐的な話が好きです。 -
泣ける、という内容ではないし、全面的に独白で書かれているために大変読みにくい。だが、内容はとてもユニークで楽しめた。価値観が大きく変化する時代にあって、人としての矜持とは何なのかを深く考えさせられる内容に感じた。
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赤猫とは,火事時の囚人解き放ちのこと。
そんな赤猫の際に起きた,三人の囚人と,二人の役人のお話。
時代が個人に与える影響は大きいな。
特に江戸時代までは,自分そのものの価値なんてどうでも良かった気がする。
与えられた立場や関係性の中にある自分の”分”をいかに正しく生きていけるかが,一番の粋だったんだろう。
そこに,個人の利益や合理性などはほとんど影響しない。 お上の威光を預かる役人として,親に育てられた子分として,朝廷ではなく幕府の末端である旗本として,そんな自分が通すべき筋は何なのか。その筋を通すことで自分が被る不利益は,筋を曲げることへの恥,怯懦と比べたら些細なこと。
同じ事象でも,人によって見方が変わる点が多いところが面白かった。当然のことだけどね。
そして宇江佐さんといい,時代小説では登場人物があっさり消されてしまうなあ(笑)