私の嫌いな10の人びと

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104397037

作品紹介・あらすじ

「いい人」の鈍感さが我慢できない。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の考え方と自分の考え方は非常に近似なところがある。冷めていると言ってもいい。著者はバカを徹底的に嫌うが、それはバカであることそのものではない。その人自身がバカであろうが,利口であろうが考えない者はバカである。逆にバカであっても、考え続けるひとはバカではない。言えば、スカラーとしてのバカはバカではないが、ベクトルとしてのバカはバカである。孔子の「過ちて改めざる、これを過ちという」やソクラテスの「無知の知」と言っていることは近い。知っていると思い込み、間違っているという可能性を省みずに行動したり思ったりすること、人をバカという。

  • 表紙を見て
    ・笑顔の絶えない人
    ・みんなの喜ぶ顔が見たい人
    ・いつも前向きに生きている人
    ・物事をはっきり言わない人
    この辺は確かに私も嫌いだなぁと思った。例えば、笑顔の〜でいうと、接客のときの笑顔とかずーっと微笑みっぱなしの店があったんだけど、こちらもそれに合わせなければいけないのか、という妙なプレッシャーがあった。ニュースや身近な出来事について、世間的には何故か是とされているんだけど、本当にそんなにいいもんかな?、などとすぐ疑問に思ってしまう人にはなかなか共感するところが多い本なのではないだろうか。

    ・「おれ、バカだから」と言う人
    これは私にも思い当たるところがあるので、見直したい。でも、知識量の多い人などと話すと、どうしても自分の無知加減が晒されてしまい、つい言ってしまうのである。著者の仰るとおり、そんなこと言わんでもバレてるわけですが。

    理屈だけ言わせると痛烈な物言いで気に障る読者もいるのかもしれないが、はなむけの言葉を書くエピソードを読むとなかなか深みのある人だなと思う。表向きの当たり障りない言葉でなく、「ほんとうのこと」を綴ったという文章は辛辣だが温かい。

  • 気分が落ち込んでいる人、またはそうなりやすい人。
    おまけに嫌なことがあったり、理不尽なことがあった人。
    この本は読まないほうがよいかもしれない。

    言い方がアグレッシブなものだから、それなりに広い心か覚悟をもって臨まないとこちらの身がもたない気がする。

    周りに流されず、己の考えや思想を伝えること。
    言うのは簡単だが、現代社会ではこれを実行することが難しくなっている。
    世間でいう「常識」が、そうさせているから。
    「危険思想とは常識を実行に移そうとする思想である。」とはよくいったものだ。

    ぬるま湯から抜け出したい。熱湯大歓迎という人は、よんでみるといいかもしれない。

  • 笑いと皮肉が満載の、中島義道ワールドが存分に楽しめる一冊。書名に「嫌い」とありながら、取り上げるのは世間からは「好ましい」と思われている人たちばかり。「当人がその思想をどれだけ自分の感受性に基づいて鍛え抜いているか」という一節に、笑いと皮肉だけではない、著者の信念を感じた。

  • 共感できる部分がとても多くて、読んでいて楽しかったです。
    私の性格の方向性は著者と似ているんだと思います。

  • 観点が面白かったですがここまで強くなれない。
    でもこの人の別の本も読んでみたい。

  • わりと好きでよく読んでいる哲学者さんの本。
    この本に限らず、彼の本は読んでいて「そんな捻くれた考え方しなくてもいーのになー」って思うんだけどw、でも、一般的な人たちの考え方や常識に僕たちがどれだけ妄信的で欺瞞的になっているのか考えさせてくれる。
    そーゆー意味では読む価値は充分にあるし、1つの考え方としてとても興味深いです。

  • 分かる。でもそれってなかなか口にできない。

  • 考えることを怠って生きてきた私に、グサリと刺さる意見ばかりだった。
    もっと自己理解を深め、個性を大切にしていきたいと思った。

  • ◆筆者の姿勢は、よくいえば自分で徹底的に考え自分を貫くということ、わるくいえば、(多数派の人びとが思い描く”社会”にとって)反社会的としかいいようがありません。ところが、そんな筆者が描く「嫌いな人」だからこそ、多くの読者はこの本から、世間で「いい人」だとされている人びとの裏側にひそんでいる気持ち悪さを感じ取ってしまうのかもしれません。その点では、ちょうど、セーターの内側に毛虫を入れるような本です。

    ◆じつはこの本に現れる10の人びと(下部に記載)は、”自分にとって”ポジティブな考え方だけを受け入れ、ネガティブなものに対しては拒絶するかフタをし続ける人、といえるのではないでしょうか。そのポジティブな考え方はおおむね世間にあるものであり、それを無抵抗で受け入れることは、「自分」で感じ考えることを放棄しながら生きてゆくため(つまり楽に生きる)のもっとも簡単な手段なのです。そして、ずるがしこい一部の人は、そこにネガティブなものがあることにも気がついているのに、むしろそれを自己肯定の糧にしてしまう。この本で挙げられている「嫌いな人」からは、そんな気持ち悪さが感じ取ることができると思います。

    ◆『中には「ほんとうのことを書いているのは中島先生だけだ」とさえ言ってくれる人もいました。ただそう言うだけの人、そして自分は依然として因習と慣習にがんじがらめになった言葉を発している人、そういうずるがしこくて不誠実な人に正確に矛先を向けて、私は書いているのに! (p. 52)』

    * 目 次 *
    1章:笑顔の絶えない人
    2章:常に感謝の気持ちを忘れない人
    3章:みんなの喜ぶ顔が見たい人
    4章:いつも前向きに生きている人
    5章:自分の仕事に「誇り」をもっている人
    6章:「けじめ」を大切にする人
    7章:喧嘩が起こるとすぐ止めようとする人
    8章:物事をはっきり言わない人
    9章:「おれ、バカだから」と言う人
    10章:「わが人生に悔いはない」と思っている人

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著者プロフィール

1946年生まれ. 東京大学法学部卒. 同大学院人文科学研究科修士課程修了. ウィーン大学基礎総合学部修了(哲学博士). 電気通信大学教授を経て, 現在は哲学塾主宰. 著書に, 『時間を哲学する──過去はどこへ行ったのか』(講談社現代新書),『哲学の教科書』(講談社学術文庫), 『時間論』(ちくま学芸文庫), 『死を哲学する』(岩波書店), 『過酷なるニーチェ』(河出文庫), 『生き生きした過去──大森荘蔵の時間論, その批判的解説』(河出書房新社), 『不在の哲学』(ちくま学芸文庫)『時間と死──不在と無のあいだで』(ぷねうま舎), 『明るく死ぬための哲学』(文藝春秋), 『晩年のカント』(講談社), 『てってい的にキルケゴール その一 絶望ってなんだ』, 『てってい的にキルケゴール その二 私が私であることの深淵に絶望』(ぷねうま舎)など.

「2023年 『その3 本気で、つまずくということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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