- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104451029
作品紹介・あらすじ
果華の絶頂から一転、奈落の底へ。頼りにしていた夫との再会も束の間、勇太郎は強制労働に取られ、病で命を落としてしまう。すべてを失い、夫の屍を乗り越え、食うや食わずで二人の子供を守る母・波子。そんなとき、密かに思いを寄せていた男・氷室の消息が聞こえてきた。再会に胸躍らせる波子だが、彼女の前に現れたのは、阿片に体を蝕まれた廃人同然の男だった…。母として子供を守るか、女として一人の男を愛するか?極限の選択が波子に迫る!家族、愛、究極の選択。自伝的大作。
感想・レビュー・書評
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女性の強さ、賢さ、怖さ、執念深さというか、なんというか…。読み応えのある本だった。戦争って、戦時中も戦後も本当に悲惨で恐ろしいものだ。
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昔読んだ本
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ドラマはみてましたが、そうとは知らずに購入。映画もあったそうですね。
主人公は波子だと思いますが、牡丹江保安局(簡単にいうとスパイ)の氷室を軸に読んでいました。それぞれの立場で、「幻の満州国」の希望と絶望を味わうのですが、国家とのはざ間で、「満州」にいや日本に翻弄されていた姿は印象的でした。
それが阿片にやられて、それを克服していく中にでてくるのですが、そこまで追い込まれないと自分を表現してはならなかった当時の状況が鮮明に伝わってきました。その意味では原作のほうがよかったですね。
また牡丹江に波子一家が着いた頃、まだ何もないところから繁栄(一時的にでも)していく姿は、満州=引揚げのイメージが強かったので、印象的でした。 -
ロマノフカ村に引っ越してきたエレナ一家を訪れた牡丹江地方保安局の牧田と氷室はエレナの父ノヴァノフを日本・ソ連の二重スパイにしたて、ハルビンのモスコー館に妻とともに戻した。しかし、エレナは人質としてロマノフカ村に残さなければならなかった。ノヴァノフはエレナにハバロフスクへの交信を受け継がせる。
協和物産の塚本により、氷室は協和物産の社員として、エレナはロシア語の家庭教師として森田酒造に送り込まれる。
いつしか氷室とエレナは愛し合うようになる。
波子も氷室に興味を抱くが、相手にされないことにいらつく。
そんなある日、長男の一男が出生するため満州に帰ってきた。一男もエレナに興味があるので、波子と二人でエレナの家に行く。そこで、カーテンのすき間からエレナと氷室の密会を目撃してしまう。
その数日後、大杉が森田家をたずねてきた。牡丹江に赴任したのだった。そのとき、波子は廊下で聞き耳を立てているエレナに気付き、ソ連のスパイではないかという疑念を持つ。
エレナのハンドバックから小型カメラ、小型拳銃、青酸カリらしきものを発見し、匿名で告発文を牡丹江市警察署長あてに出してしまう。
昭和20年8月9日の夜、氷室はエレナを斬った。(物語の冒頭部分とつながる)
話は、軍用列車でやっとの思いでたどり着いたハルビンの避難民収容所に戻る。
収容所での生活が何日か過ぎた頃、夫の勇太郎がやってきて家族は再会する。しかし、45歳以下の男を連行するソ連軍に46歳でもあるのに関わらず、自ら志願して捕虜に加わってしまう。
ハルビンから牡丹江までの行軍の途中我が家の前で泣き崩れる勇太郎を励ましたのは氷室だった。氷室はかつての森田家の従業員で足が悪く兵役を免除されていた者に入れ替わって、ソ連軍に取り入り、通訳をしていた。
氷室のおかげで勇太郎は作業免除を受けた。その後、民間人の捕虜は解放され、氷室に助けられながら、ハルビンに戻った。
波子たちは、収容所から出て、アパートを借りて、タバコの行商で生計を立てていた。
過酷な捕虜生活で肺壊疽を患ってしまった勇太郎はハルビンに帰って2ヶ月でこの世を去った。
生活に絶望していた波子の下にハルビンに到着した時に取り上げられた荷物が帰ってきた。それは、氷室のおかげであった。
氷室はエレナの父親に右足を撃たれ、その手術のため阿片を使ったことから阿片中毒になってしまっていた。
そんな氷室を立ち直らせ看病したのは波子だった。
長い闘病の末元の体を取り戻した氷室は「ハルビン市日本人遣送民会」に身をおき、日本人を祖国に帰す作業に従事した。
1946年8月、波子たちも氷室のおかげでやっと日本に帰ることができた。
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公平60歳の時、氷室から茶席への誘いがあり、67歳の美咲とともに訪れ、日本に引き上げてからの消息を語り合う。 -
2004年5月。
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これが「母」の話なら、結末が変わっていたのではと思います。「母」であり「女」として生きたから、こうなったのだと感じます。そして今まで遠くに感じていた中国残留孤児の問題を、近いものとして考える事が出来ました。読んで良かったです。