さよならクリストファー・ロビン

著者 :
  • 新潮社
3.69
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本棚登録 : 628
感想 : 88
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104508020

作品紹介・あらすじ

お話の中には、いつも、ぼくのいる場所がある──いつも考えている幼い少年と、なにかを書く仕事をしているパパ。「お子さま携帯」が時々「けいほう」を鳴らす日々。ぼくは何でもパパに聞き、パパは一緒に考える。物語をめぐり、あらゆる場所を訪れ、新しい物語の誕生に立ち会う。「虚無」と戦うものたちの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 大好きな『くまのプーさん』の関連本?と下調べもなしに読んだ。
    短編集の構成で、表題の話はプーさん関連で間違いはないのだけれど…

    『さよならクリストファー・ロビン』
    最後、ポロポロ泣いちゃった。
    「みんな、誰かが書いたお話の中に住んでいて、ほんとうは存在しない」という”うわさ”に物語の住人達は翻弄され、しまいには”虚無”が彼らの世界をも飲み込んでいく。
    『はてしない物語』にも同一の危機が迫っていたが、あの時は何とか免れた。自分がラストで泣いたということは…。
    著者よ、物語の創作者でありながらこれは酷い仕打ちですぞ!(泣)

    『峠の我が家』
    またもや目頭がジーン…(泣)
    イマジナリーフレンド(空想の遊び友達)達を保護する”家”(通称「ハウス」)の話。彼ら「お友だち」は自分達を生み出した「ご主人さま」に忘れ去られてしまうと、「ハウス」を訪れる仕組みになっている。そして、どの「お友だち」も子供のように無垢でどこまでもはかない…よくこんな設定を思いつけたもんだ。
    彼らを思い出すことが出来たら、「ハウス」から心に戻ってきてくれるのかな。

    『星降る夜に』
    前半は現実味が、後半にかけてはファンタジー色が強くなる。しがない小説家の男が、ある時「本を読む仕事」を紹介される。
    思えば、そこから男にとっての本当の人生が始まった気がする。読むことで、聞き手の人生が開けることは以前読んだ『本を読むひと』で実感したが、今回も果たしてそれに当てはまるのか、次に移る前に考え込んでしまった。

    『お伽草子』
    『アトム』
    何故かこの2作品の間に下記の『ダウンタウン…』が収められていた。
    恐らく両作品とも話が繋がっている。しかしどちらのメッセージも認識できた自信がないから、ここでは自身が感じた事だけを書き、その後で他の方のレビューや考察を覗いていこうと思う…汗
    ディストピア系になるのかな。『お伽草子』から『アトム』へと、時系列で話が続いているのは確かだろう。
    「考える」という行為を不安がる子供、成長どころか退化する人間たち、気づいた時には別の人間になっている現象。どれも異常事態なのに殆どの人は平気でいる様子。
    本来は読者としてメッセージ性を汲み取らなきゃ…だろうけど、考えるほど気がおかしくなりそうだったので、そのまま流してしまった。ここらでは、あまり楽しめなかったのが残念。

    『ダウンタウンへ繰り出そう』
    「死んだひと」が現世に生きる人達の前に現れ、共生していた時期があった…という話。「お盆のこと?」と勘違いしかけたが、「死んだひと」の中には議員になった者までいたと言うから、まず只事ではない笑
    天国・地獄・輪廻転生とは違う死後の世界は、現世の延長線だったりして。


    トータルで見ても、超フィクション。
    泣いたり首を傾げたり…、アップダウン差に御用心!

    • akikobbさん
      ahddamsさん、こんばんは。

      レビューを読んだだけでアップダウンにやられそうになりました…。
      高橋源一郎さんは、テレビやラジオでお話し...
      ahddamsさん、こんばんは。

      レビューを読んだだけでアップダウンにやられそうになりました…。
      高橋源一郎さんは、テレビやラジオでお話しされてるのを聞いたり、エッセイ的なものは読んだりしたことはありますが、小説は読んだことがないのです。
      短編集だし、こちらちょっと興味を持ちましたが、でも表題作なんか特にツラそうですね、、すでに泣きそう…。ガツンとやられたいときに読んでみようかしら…(ドキドキ)
      2022/11/09
    • ahddamsさん
      akikobbさん
      こんばんは。コメント有難うございます!

      全体的に儚い雰囲気でしたが、前半と後半とでカラーが違い、特に後半は自分の読解力...
      akikobbさん
      こんばんは。コメント有難うございます!

      全体的に儚い雰囲気でしたが、前半と後半とでカラーが違い、特に後半は自分の読解力ではうまく消化しきれませんでした…中途半端なレビューになったなーと反省しています汗
      逆に本書で初めて高橋源一郎さんのことを知りました.。oO 実際のご本人のトークはどんなものか、ちょっと気になります…!
      表題作は泣かされましたが、結構好きな作風だと直感しました♪ 良い(!?)涙活にもなりそうですね(^^;;笑
      2022/11/09
  • これは夢なの?

    微睡の中、夢と現実が行き来するとき、物事のストーリーは曖昧になりつかまえたはずのつながりも、ゆるゆると解けてばらばらになっていく。思考は繰り返し、時間の流れも行きつ戻りつ。

    夢の世界も心の奥底で流れる思いが反映しているはず?作品で描かれる世界のモチーフは何だろうと考えるのだけれど、つかみどころがなく、幻想的な世界が広がっていく。現代版「不思議の国のアリス」のような雰囲気。

    表現の試みが多様で、こんなに自由な文章表現、構成もあるんだと感心することしきり。うまいなあ。

  • 文学賞受賞作とはいえ、恐らく通常であれば絶対自分では買わない本。失礼を承知で言うならば、通常であればミステリやら耽美なものやらバディものやらが中心で、たまにSFやファンタジーと言ってもいかにもそれらしい単語で煽られたりしないとなかなか知らない作家など手に取らず、唯一別ルートが「装丁買い」なので、申し訳ないけれどこの単行本の表紙は全くもって私の琴線には引っかからない。
    ではなぜこの本を読んだか。いわゆる「ブラックボックス式」で購入したためです。とはいえあんまりそういう買い方もしないのですが、たまたま店舗限定版でたまたま通りすがっちゃって、何よりいちばん大事な紹介文がなんとなく引っかかった。あとはそこのブックカバーが好きだったから(笑)。
    なので、普通では絶対に巡り合わないであろう本を読む機会を得て、それがまた結構良かった。こんな偏読な自分でもブラックボックス式の恩恵を受けられたので、案外良いもんなのだなと。(でもこれって選別者の人と趣味が合わないと成立しないと思っているので、いまだに信じきれないところはあるのは許してほしい)

    さて本編。
    帯は「第48回谷崎潤一郎賞受賞」のみ。裏にはこの一文

    ”最後に残ったのは、きみとぼくだけだった―お話の主人公たちとともに「虚無」と戦う物語。”

    他にあとがきもあらすじも無い。
    強いて言うならばダークファンタジーに近い。しかも皆がよく知っているようなあの物語や登場人物たちも多い。けれども残酷だとかそういうことではなくて、裏側とか見えなかったところとかもう一つのあったかもしれない話のような、外側から語られていたものを内側から語るような。優しくて悲しくて寂しくて暖かい。
    短編のようで繋がっているような、同じ世界のようで別の世界の中で、最初に感じたわずかな不安、寂しさ、悲しみ、ゆっくりと確実に大きくなる感覚はまさに”虚無”。
    いくつかの世界を渡り歩いてきたようなラストは、読者もまた銀河鉄道のようなその列車に乗ってきたのだと、ふいにシンクロした瞬間にふわっとそのまま浮き上がって暗く深い宇宙に飲み込まれる。

    これが幸せな話なのか悲しい話なのかはなんとも言えないけれど、少なくとも読後感はとても良い。痛みを超えて脳内麻薬で何も感じられなくなった幸福感のような。良くも悪くも天国とはこういうところなのかもしれない。

  • ごめんなさい。何も感じとることができませんでした。
    懐かしい思い出との決別?それは子供たちの未来を願えばこそ?
    これを読んでトイストーリーを思い浮かべた僕はまったくの的外れな捉え方なのだろうか。
    いや、ほんと。ごめんなさい。
    でも好きです。高橋さん。

  • 眠りにつく前に語られる曖昧な世界
    たくさんの童話がちりばめられているけれど
    ぼくたちはだれかがかいたおはなしのなかにすんでいてそんざいしない
    ふわふわとした言葉たち
    虚無?
    眠くなったよ
    よくわからないよ
    さようなら高橋源一郎
    ≪ 続いてく お話の中 きみとぼく ≫

  • お話というか空気を読んでいるみたい。
    (よく言う空気を読むじゃなくて)
    ええと、風景をもぐもぐする…というか
    情景をもぐもぐするというか…。
    お話に入り込むのではなく
    そこにあるお話に触れているような感覚になる1冊でした。
    こういう感覚になる本、私にとってとてもとても大事なのです。
    出会えてよかった!

  • 2021/12/22購入

  • 1時間50分

  • タイトルもだけど、こんなにおおっぴらな有名作品の二次創作ってかオマージュ書いていいんだな…

  • 短編集。「ずっとむかし、ぼくたちはみんな、誰かが書いたお話の中に住んでいて、ほんとうは存在しないのだ、といううわさが流れた」という書き出しで始まる表題作は童話や物語の登場人物たちが住む世界での話。浦島太郎や赤ずきんのオオカミ、そしてピグレットやティガーたち、どんどん消えてゆくキャラクターたちが切ない。最後に誰が残ったかはタイトルから察して。

    「峠の我が家」もこれに通じる話で、こちらはイマジナリィ・フレンドたちの住む家。イマジナリィ・フレンドは、きわめて個人的なお友達だから皆が知ってる物語の登場人物とは違うけれど、それはただ彼らが物語に書かれなかったというだけで、存在の在り方としては大差ない。人々に忘れ去られたときに彼らはやっぱり消えてゆく。

    おなじみランちゃんとおとうさんの「お伽草紙」、死んだひとが蘇ってくる「ダウンタウンへ繰り出そう」も良かったけれど、ラストの「アトム」がとても辛かった。鉄腕アトムとクローンのトビオのアナザーストーリー。最近読んでとても気に入った『銀河鉄道の彼方に』と繋がっている世界観だった。

    ※収録作品
    さよならクリストファー・ロビン/峠の我が家/星降る夜に/お伽草紙/ダウンタウンへ繰り出そう/アトム

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著者プロフィール

作家・元明治学院大学教授

「2020年 『弱さの研究ー弱さで読み解くコロナの時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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