- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104541041
感想・レビュー・書評
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2021年の「読み初め」として、駅伝だし時期的にいいかな?くらいの動機で読み始めましたが、ひょっとしたら私の中では今年一番の当たりになるかも!?といきなり予感させてしまうほどに、笑いあり涙ありのストーリーも、個性豊かなキャラクターも、ユーモアと美学がバランスよく混在している文章も、私には大満足な内容でした。三浦しをんさんは今までも幾つか読んできたのになぜこれを今の今まで読まなかったのか謎です。
気を抜くと床板を踏み抜いてしまう程にオンボロな木造アパート竹青荘に住む大学生10人が、箱根駅伝出場を目指して奮闘する青春ストーリー。
トランス状態のランナーのことが書いてありましたが、ひょっとしたら三浦しをんさんご自身がこの小説を書きながらそのトランス状態に入ってしまったのではないか?とも思えました。ノリノリで滞りがなく、何か物語の中の人物達と一心同体になったかのように、自動手記かのように書いたところがあったのではないか?と感じました。改めて三浦しをんさんのファンになりました。
10人が1つの目標に向かって心を合わせながらも、走りながらそれぞれの立場で自分の人生を振り返り、意味や意義を見出して、新たな旅立ちをしていく所が感動的でした。新しい年の初めに、走る人達の見ている景色がこの物語を通して垣間見られてとても良かったです。 -
毎年、この時期に読み返している。
今年、印章に残ったのは、六道大の藤岡さんの言葉。
「変わらない理想や目標が自分のなかにあるからこそ、俺たちは走りつづけるんじゃないか」 -
小説の良いところであり、読む理由にもなることのひとつとして、そのキャラになりきって違う人生を疑似体験できる、ということがある。この本はまさに、大学生に戻って箱根を走った気にさせてくれる小説だった。
読み始めは、あれ?思った展開じゃないのかな?と思ったけれど、そこをぐいぐい修正してきて最終的には予想していた?展開になってくれる。予想といっても、ご都合主義的な「いやぁ実際そんなうまくいかないでしょ」と思うところももちろんあるのだが、それを期待しているのもまた真であり、読者の期待に応えてハラハラドキドキさせてくれる。
陸上競技というのはたしかに、原始的であり、なぜ走るのか、という究極的な問を与えてくれる気がする。そしてその答えはひとつではなく、各自の回答があるのだ。私自身は球技は好きだけど走るのはどちらかというと嫌いなタイプだが、最近は健康のために定期的に走っており、フィールドはまったく違うけれども、走る喜びを見つけていきたいと思った。 -
箱根駅伝はテレビでもあまり見たこともなく、どんなものかも知らなかったけど現実にもこんな青春があるのかなと想像したらわくわくした。
強い選手がいる部活には熱血な指導者による厳しい指導や、練習を強いられていることが多くその中で成長していくイメージがあるがそんな場所が向いてない人もいるのは当然だなと思う。
自分で楽しいと思わないと続けることは難しくて、楽しさを見出せなくてやめたり、苦しくなると逃げたくなることはスポーツに限らずあることだと思う。
高校時代の走も指導者に反発して事件を起こし、陸上をやることを諦めたけれども、走ることは好きで1人で走っていた。
そんな中で清瀬と出会い、個性的な仲間たちと箱根駅伝を目指す。
勝ち負けにこだわらず、走りたいから走るってすごい素敵なことだ。
私もそんな趣味を見つけて続けてより充実した生活が送れたらなと思った。
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大学1年生の走(かける)は、高校まで陸上名門校のエース選手だったが、とある理由で競技陸上を辞めていた。ある夜、ランニング中に4年生の先輩ハイジに声をかけられ、古びたアパート竹青荘に入寮する。これをきっかけに、同じ大学に通うアパートの学生達とともに、10人で箱根駅伝出場を目指すこととなる。
登場人物の人数に比例して会話文も多く、漫画を読んでいるように各キャラクターの特徴が色濃かった。箱根駅伝において無名の大学の学生達(ほぼ長距離未経験)が、たった10人で箱根を目指すというのは当初現実感の無い話に感じられた。
見どころはレースが始まってから。各区間を任される選手達の特徴や、区間ごとにどのような戦略が必要なのか、綿密に描かれる。また、これまで大人数で賑やかに描写されていた選手達一人ひとりにスポットがあたり、走りながらその胸中が明かされる。
毎年駅伝を見る時は、1位のチームの行方ばかりに目が奪われていた。でも、1位になるチームはたった一つで、その後ろに20のチーム×10人の選手達のドラマがある。あとに続くチームが、自分達は優勝は難しい、と理解したタイミングからどの様なモチベーションで走り続けるのか、そこにどんな思いがあるのか、この本を読んで初めて想像するに至った。 「p. 424意味とか無意味とかじゃない。自分たちがしてきたことの証と誇りのために、いまできるかぎりの走りを見せる」
高熱のため、前に進むだけで精一杯だったランナーが順位を大きく落とした場面で、チームメイトが彼を見て思う 「p.374 結果や記録とは全く違う次元で、彼が走りを体現していることも確かだ。強さとは、これなのかもしれない。苦しくても前に進む力。自分との戦いに挑み続ける勇気。目に見える記録ではなく、自分の限界を更に超えていく粘り。」 競技の中に身をおき、何百、何千という時間を費やした人だけが本来感じることのできる感覚、熱量を追体験することは、読書の醍醐味だなあと思う。 -
さすがしをんさん!10人が10人のキャラがとにかく好き!箱根駅伝が無性に見たくなる!
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10年位ぶりに再読。沈着冷静な清瀬君が感情を露わにする場面がそこかしこにあるんだけど、なんか萌えちゃうな~。母心かな?いや、封印してた乙女心をノックされた感じ。
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箱根駅伝出場を目指す竹青荘の住人の青春物語。
プロローグ
一、竹青荘の住人たち
二、箱根の山は天下の険
三、練習始動
四、記録会
五、夏の雲
六、魂が叫ぶ声
七、予選会
八、冬がまた来る
九、彼方へ
十、流星
エピローグ
天才高校生ランナーながら、高校で問題を起こしてしまった蔵原走は、竹青荘の先輩住人・清瀬灰二に出会う。
走に出会い、箱根駅伝を目指す決意をした清瀬は、陸上素人の竹青荘の住人、双子のジョージ・ジョータ、キング、司法試験に合格したユキ、元陸上部・ニコチャン、黒人留学生・ムサ、神童、漫画オタク・王子を誘い、寛政大駅伝部の練習を開始する。
練習は過酷を究めるが、少しずつ、皆の中の納涼句が覚醒していく。
走ることが自分を苦しめてきた走と、古傷を隠しながら理想の走りを求めてきた清瀬、そして仲間たちが箱根路を走る。
設定としては無理があるものの、最後は一気読み。
青臭くもあるが、自分と向き合う学生の姿に感動。