天国旅行

著者 :
  • 新潮社
3.39
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104541065

作品紹介・あらすじ

そこへ行けば、救われるのか。富士の樹海に現れた男の導き、死んだ彼女と暮らす若者の迷い、命懸けで結ばれた相手への遺言、前世を信じる女の黒い夢、一家心中で生き残った男の記憶…光と望みを探る七つの傑作短篇。

感想・レビュー・書評

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  •  文庫化されたということで、読みました。しをんさんの作品は、相変わらず綺麗な文章だ。
     この作品のテーマは「心中」だ。短編7作品のうち、5作品はダークな作品だ。だけれども、怖いテーマなんて、何のその、しをんさんの綺麗な文章にどっぷりはまり込んで、ページをめくる手が止められませんでした。
     
     「遺言」がよかったです。何度か死に接近した夫婦が、それでも生きぬいて、そして、夫は最後、妻に遺言を残す。これがよかった。
    「きみが大切だ。好きだとか、愛してるだとかいった、甘っちょろい言葉を超え、きみの愚痴や小言も含めてきみを大切に思う」
     素敵だ。死ぬほど好きとか、殺したいほど愛してるとか、そんなおためごかしをいうよりも、そんな想いを超えて尚、芽生え続けるこの感情をこそ、私は、愛と、呼びたいなあ。と、「遺言」を読んで感じました。

     私たちは、どんなことがあったとしても、いったん生を受けたからには、生きねばならない。終わりの来るその日まで。これは、最後の章、SINKを読んで感じたことです。
     
     心中をテーマにした作品で、生きなきゃな、と感じさせられるとは、さすが、しをんさんだ。

     

  • そこへ行けば、救われるのか。富士の樹海に現れた男の導き、死んだ彼女と暮らす若者の迷い、命懸けで結ばれた相手への遺言、前世を信じる女の黒い夢、一家心中で生き残った男の記憶…光と望みを探る七つの傑作短篇。
    「BOOK」データベース より

    ◆短編集それぞれを一行で表現すると…
    言い訳できる人は、死なないものだ.
    変わる心と変わらない心、分かれ道はどこにあるのだろう.
    深い情と死者がつなぐ恋.
    妄想の恋、身の破滅.
    真実は闇の中.黒なのか白なのか.
    残る想い、一緒にいるがゆえのやるせない想い.
    消したい記憶、向き合う心.

  • 巻末に『心中』をテーマにした短編集とありなるほど言われてみればその通りと思いあたった
    読み進める中でテーマは『死ぬこと』だと感じていたので同時に少しびっくりした
    確かに『心中』について書かれているのだがそれでは題名の『天国旅行』にそぐわない気がしたのだ
    『心中』はマイナスのイメージだが『天国』も『旅行』もプラスのイメージが自分にあるからだと思う
    『心中』することが『天国』に続くと考えた人々の物語ということだろうか?
    よくわからん
    考えてということかもしれん
    よくわからん
    よくわからん物語は苦手だ

  • 4.6
    心中をテーマにした短編集
    不思議な話もあり、切なくなるはなしもあり。
    自分にも思い当たる話もあり。
    一気に読みました。

  • 「死にいたる病」と言う、まだ見ぬ小説のタイトルがふっと浮かんだ。

    (確か、その病って『絶望』だったはず・・・。)

    死んだ事はまだ一度もないので、
    その時の苦しみ、は想像もつかないが、

    『絶望』の痛みは良くわかる。

    私のまわりだけ、
    (もう生きていたってしょうがないでしょ)と、強制的に灯りを消されてしまうような感じ。

    暗闇。

    また呼吸は続くのに、まだ鼓動してるのに、
    生きていくため必要な光を失う。

    そんな感じ。

    読書中感じていたこの胸苦しさは、
    「死」(心中をテーマにした短編集だそう)が覆いかぶさっているのではなく、
    『絶望』が支配している為であろう。


    読後は戻ってこられるものの、
    一瞬あの世を垣間見てきたかのような、
    そういう意味では
    『天国旅行』と言うタイトルはぴったりだな♪と、思った。

  • 心中をテーマにした短編集と最後に書いてあったので、暗い内容ばかりかと思いきや、そうではありませんでした。7編の作品それぞれ、バラエティーに富んだ内容で、読みごたえがありました。題名に「旅行」とありますが、様々な生と死の物語を、まさに旅行している気分になりました。

    「初盆の客」が中でも気に入りました。

  • 三浦しをんさんの『心中』をテーマにした短編集。
    テーマが『心中』なので、どれも暗い。特に『君は夜』が…。中には救われる話もありますが…。
    この前、めちゃくちゃはっちゃけてるエッセイを読んだので、そのギャップに驚いてますが、私のしをんさん小説のイメージはこっちに近い。
    好きなのは『炎』でしょうか。他人の気持ちはわからないものなんですが、私は信じたいなって思います。

  • そこへ行けば、救われるのか。富士の樹海に現れた男の導き、死んだ彼女と暮らす若者の迷い、命懸けで結ばれた相手への遺言、前世を信じる女の黒い夢、一家心中で生き残った男の記憶…光と望みを探る七つの傑作短篇。
    「BOOKデータベース」より

    心中をテーマにした短編集.
    哀しく重い内容かと思い読み進めていたら、重い内容も中にはあったが、どこかに救いがあったり、人間臭い行動があったりして、死をテーマにしつつもどこか生とつながっている印象を受けた.

  • いろいろな形の「心中」がある。

    樹海で自殺しようとする中年男、駆け落ち同然で連れ添った夫婦、老女の初盆に現れた不思議な客、前世の記憶と現世が曖昧な女、いつの間にか幽霊になっていた彼女、一家心中の生き残り。

    「遺言」と「星くずドライブ」が好きでした。
    死に瀕したとき、人は取り繕わない素の自分に戻るというけれど、やっぱりその瞬間は怖いのかな。

  •  心中をテーマに書かれた7つの短編です。

     青木ヶ原樹海で自殺をしようとした男と、青木と名乗る奇妙な男とが連れ立って樹海を歩く。(森の奥)
     過去に心中しようとした妻へ、夫から綴られた遺言。(遺言)
     亜利沙は、謎の自殺を遂げた立木先輩のことを元カノの初音と一緒に探ることになる。(炎)
     などなど読み応えのあるものばかり。

     読んだあと、死と対で生がある、死者に向き合いながらも生きていく、そんなことを感じました。

  • この作品のテーマは「心中」。ほかの方もレビューで書かれていたように、しをんさんの文章は美しいのだけれども、いかんせんテーマ的に暗くなってしまった。
    意思を強く感じたのは「炎」。あんなふうに身辺整理をして、自分の意思を表現できるものなのだろうか。
    「星くずドライブ」はこの先どうなってしまうのか、気になった。
    当たり前だけど、同じ「死」でも、心中と殺されるのでは大きく違うな。。。

  • 1.この本を選んだ理由

    基本、短編集は読まないですが、たまたま三浦しをんさんの作品で読んでないものが図書館にあったので手にしました。


    2.あらすじ 

    心中をテーマとした短編集。
    ①森の奥
    ②遺言
    ③初盆の客
    ④君は夜
    ⑤炎
    ⑥星くずドライブ
    ⑦SINK

    それぞれ、作風が違っていて、全く別物に感じました。


    3.心に残ったこと

    やはり、テーマが心中というだけで、心が暗くなります。


    4.感想

    面白いということはないけど、
    人生観を深めるきっかけになる本だと思います。


    5.登場人物

    ①森の奥
    富山明男
    青木


    ②遺言
    私と君

    ③初盆の客
    及川駒子
    及川ウメ
    及川辰造
    及川寅一

    石塚夏生 なつき

    ④君は夜
    理紗
    小兵
    根岸

    ⑤炎
    亜利沙
    立木
    楢崎初音


    ⑥星くずドライブ
    香那
    佐々木英ちゃん
    下條


    ⑦SINK
    日高悦也
    悠助
    田代恵美

  • 心中をテーマとした短編集。
    心温まるストーリーから、寒々しくなるもの、深く考えるのはよそうと思えるものまで様々。
    絶望の中にも希望は見いだせるし、希望の中にも不安は消えない。
    老人が妻への愛を語る「遺言」や心中の生き残りの男性の「SINK」も読後感がよかったけれど、一編を選べと言われたら、「初盆の客」。浅田次郎さんの怪異譚ぽくて、好き。

  • 表紙がえらいおどろおどろしいとおもったら、「心中」を共通テーマにした短編集だった。。。

  • “心中”。同じ瞬間に息をひきとることが、そんなに慰めをもたらすだろうか。どんな最期だとしても、人はこの世を去る時、限りなく独りだと思う。

  • 7作をおさめた短編集。
    死をモチーフにした…というと何だけれど、そこは三浦しをんのこと。
    哀しいけどかすかな救いがあったり、怖いけどユーモラスだったり、どこかほのぼのしたり、かなり好感度高いです。

    「森の奥」は、自殺を考えて樹海に入り込んだ中年男。
    ずるずるとロープがゆるんで木から落ちて失敗した所を若い男に発見され、まだ遊歩道のすぐ近くだと知らされる情けなさ。成り行きでついて行く。
    自衛隊の訓練で一人で樹海を突っ切るのだという男の話には半信半疑だが…

    「星くずドライブ」は、恋人の香那が手ぶらでやって来て、着の身着のまま寝てしまう。
    実は交通事故で死んでいるらしいとわかるが、死体はなかなか発見されない。
    見た目は生きているときのままで、話は出来るが、他の誰にも見えない。触ることは出来ないまま、ずっと一緒にいることに…

    「SINK」は金属造形を仕事にしている若者・悦也。
    じつは一家心中事件の生き残りで、子供の頃の記憶を時折思い出す。
    あの時、母親はどうしようとしていた?母の手を自分は蹴って浮かび上がったのか…
    臆病な自分から離れたくて、引っ越すことにする。
    何かと手助けしようとする幼なじみの悠助にひどいことを言い、好意を寄せてくれた女性・田代にも応えられないが…
    記憶を少し塗り替えようかと考える。

  • いろんなカタチの「心中」をテーマにした短編集。
    樹海に入って自殺しようとする男性、「遺言」というタイトルだけれど内容的には長年連れ添った妻への凄まじいラブレター、ファンタジーっぽい時間差心中、心中の王道物語ともいえる江戸、男女、前世の生まれ変わり、どれもこれもひねりが効いていて流石はしをんさんです。
    そして物語の最後に心中のテーマの中でも核心とも言える一家心中に辿りつく。
    この構成も見事でした。
    重苦しいものばかりでなく読み終わったあと生きていくことの大切さ誰かを愛していたいという思いを痛切に感じました。 
    行く(死ぬ)だけだと旅行と言わないんだよ、帰ってくる(生きていく)から旅行と言うんだよ。『天国旅行』というタイトルにしをんさんの思いが込められているような気がします。

  • 好き!

    それぞれの胸中はうかがい知れないものを秘めていたり、破滅的だったりなんか切なかったり。

    心中を考える時の人間って、なんかやっぱり余裕がない。

    自分勝手…死のう、死のうよという言葉がすっごくいい。

    私も一緒に死んでくれる人いたらありがたいかもしれない。

    心中をテーマに、それぞれの結末へ…どのお話も好きだぜ〜良い本でした。

    自殺について考えたくなって、そういう本を探してこの本を見つけたのだけど、なんとなく、自殺やめろ!って本じゃなくてまさしくそれをテーマに面白い話を描いてくれた本だから、好きになれた。

  • Y

  • #読了。短編集。
    心中がテーマ。自殺する地を求め富士の樹海に入り込んだ者、幼少時に一家心中から逃れ1人生き残った者、既に亡くなっているはずの人物との対話など、心中がテーマ。
    様々な角度から”心中”をとらえた作品が並び、読後感もずしりと重たく感じるもの、またほのぼのとするものなど色々。自分だったら・・・と考えさせられる作品もあった。なんとなく先が見えてしまうが、「初盆の客」が温かくよかった。

  • “本書は、「心中」を共通のテーマにした短編集である。”と、巻末にあり、あ、そうか、そうだ、と思い至った。

    心中というと…誠を見せるために命をかけて命を捨てる不条理、後がない息苦しさ、というイメージ。
    でも、何故だか、明るい暖かいストーリーもあったりするのが、しをん流ということかな。

    前者のマイベストは『君は夜』
    後者のマイベストは『初盆の客』。

  • 死と生、この世とあの世の狭間にあって浮き彫りにされる人間の心の闇と光を描いた短編集。生はそもそも、死の反対ではなく、内包しているものなのではないだろうか?読後、そういった意味で人生観が変わるような気がする。

  • 「新しい物語を紡いでもいいのかもしれない。これからも生きのびるために。記憶を消すことができないのなら、せめて都合良く改竄してみるのもいいかもしれない。」
    生きのびるために。

  • 心中をテーマにした短編集。
    『森の奥』青木ヶ原の樹海で首吊り自殺に失敗した中年男性と男の話。
    『遺言』年老いた小説家の妻への馴れ初めから始まるラブレター。
    『新盆の客』祖母の新盆に現れた祖母の孫と名乗る男の話。を語る孫娘の不思議語り。前夫と夫を等しく愛し、その縁は孫娘の縁に…☆
    『君は夜』幼い時から夢の中で夫婦として男に尽くす人生を生きる女。
    『炎』焼身自殺した高校の先輩の死因を、先輩の元恋人と探す凡庸な私は、彼女に使い捨ての都合のいい共犯者役にされただけたったんだろうか?
    『星くずドライブ』死んでからずっと僕の側にいる彼女。会話をして一緒に暮しながら彼女には触れられない…。閉塞感。
    『SINK』一家心中の生き残りの自分は、なんやかんやと心配してくれる幼馴染の友人の親切の中の哀れみや暗い偽善的満足感を感じている。あの日海に沈む車の中で、自分の足を掴んだ母親の手を振りほどいた。あの手はもし自分を押し出す為に掴まれたのだとしたら?

  • たまたま図書館で手に取った本なのだけど、
    なんともまあ、故人をお迎えするこの時期に
    ふさわしい本でした。
    この前に読んだ本が『ツナグ』でしたので、
    なにか不思議な巡り合わせを感じます。

    死は誰にでもいつか等しく訪れ、
    これは抗いようのない事実なのですが、
    「ああ、おもしろかった!」と
    自分も家族にも思ってもらえるような
    終わり方がいいな、とふと思いました。
    そういう気持ちにさせてくれた
    『遺書』が一番心にせまってきました。

    『初盆の客』『星くずドライブ』は
    『世にも奇妙な物語』でドラマ化できそう。
    どちらもこの時期に読むのにぴったりなお話。

  • 本のタイトルが独立していて、所謂「表題作」を冠した作品は無いのだね。
    ちょっと珍しい。
    テーマがテーマだから、暗い話が多い…暗いというか重い?湿気が高い?
    うまく言えないけど、それでも生きている。

  • 富士樹海のお話がものすごく好きです。互いが互いの愛の証明だというお話も好きです。長い年月をかけて一緒に死んでいくお話も好きです。生まれ変わっても一緒に居ようとするお話はちょっと好きになれません。若気の至りで暴走するお話も少し好きになれません。スピードを出し過ぎると追いていかれてしまうお話は少し好きです。一人取り残されたお話は好きです。「心中」ってあんまり良いイメージが無いものですが、『天国旅行』にはあなたの好みの「心中」が見つかるかも知れません。

  •  心中をテーマにした短編集だそう。
     人はどんな理由で死にたくなるのか、と興味をもった。
     心中という感じのするものがあまりなかった、のは、私がわからなかっただけだろうか。
     
     もっと重いものを想像していたけれど、その心の準備のおかげか
    そうでもなかった。

  • 短編集 7編収録
    共通テーマが「心中」なのですが、ドロドロ感はなく読後感もいいです。
    それぞれに趣が異なっているので、読んでいて飽きない。  
    「森の奥」「星くずドライブ」「SINK」が好み。 「星くずドライブ」はラストで号泣。軽いタッチでサラリと書かれているのに、切なくてたまらない。 
    「遺言」のラスト1行にはやられました。ここまでの静かに激しい愛情(激情)をアタシは知らない。

  • 「心中」をテーマにした短編集。どれも、死は軽く取り上げているののに、話は深い。人間、こんなに簡単に死なないで欲しいと思いながらも、話に引き込まれてしまう。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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