墨のゆらめき

著者 :
  • 新潮社
3.62
  • (3)
  • (10)
  • (6)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 668
感想 : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104541089

作品紹介・あらすじ

実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 三浦しをんさんの書き下ろしをオーディブル先行配信ということで、少し前に聴いた。
    政と源、まほろ駅前シリーズなど、破天荒で陰のある男と、振り回されつつも変わっていく実直な男、その友情以上愛情未満(?)な関係性を描かせたら、しをんさんは天下一品なんですよ。今回はホテルマンと書道家という異色な組み合わせ。
    それに櫻井孝宏さんのナレーション…!贅沢でした!

    小さな老舗ホテルに勤める続力(つづき・ちから)は、人からよく話しかけられる親しみやすい風貌のホテルマン。
    ホテルでは結婚式やお祝いの会などの宴席も設けるのだが、案内状の宛名書きなどを依頼する筆耕との仲介も行う。
    ある時、続は、大切な常連客の「お別れの会」の招待状の宛名書きを依頼するため、最近登録されていた遠田薫のもとを初めて訪れる。遠田は父の後を継いで、町で書道教室を営んでいた。名前からは女性かと思っていたら、出てきたのは作務衣を着た背の高い男。態度はぞんざいで、物言いは乱暴だが、子供には懐かれているらしい。また、書道の腕前は一流で、様々な筆跡を自在に書きこなすことができた。
    続は、遠田の教え子から頼まれて成り行きで、続が文面を考え、遠田がそれを書き記すという形で、協力して手紙の代筆を行った。
    それがきっかけで、続はしばしば遠田の家を訪れるようになり、代筆業も行うことがあったが、遠田にはなにやら、語ることのできない過去があるようで…?

    櫻井さんの演じる続と遠田が良すぎて何度も掛け合いに笑いそうになるし、後半の遠田の過去か語られるシリアスな場面では泣きそうにもなる。最初は押されっぱなしでたじたじだった続が、イタコでも乗り移ったかのように手紙の朗読を始めるシーンも必見。笑

    実際にはまじで追うか耳で聞くしかない書道をテーマとしているのに、遠田の筆から生まれる「墨のゆらめき」が眼前に浮かぶようで、その描写もとても素晴らしかった。しをんさん、さすがです。

    第二弾もぜひ!!

  • Audible書き下ろし 三浦しをん 新作長編『墨のゆらめき』本日配信開始|Audible, Inc.のプレスリリース(2022年11月17日)
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000155.000036126.html

    三浦しをん 『墨のゆらめき』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/454108/

  • Audibleにて。
    何となく堅そうなお話なのかと思ってたけど、遠田の「ズッ友だよ」で心を鷲掴みにされた。

    遠田と続のやり取りが何とも面白くて、題名の墨が書道から入れ墨と、そこにも繋がっていくのかーって感じ。もっとこの2人のお話が読みたくなる。

  • 実直なホテルマン続と奔放な書道家遠田。ホテルの業務の一環として、続が遠田に筆耕を依頼したことから二人の付き合いは始まり。人との距離感を踏みぬいて人の話を聴かず、それでいてなにかしら人を惹きつけずにはいられない遠田。その強引さに最初は腰が引け気味だった続だったが、いつしか足繁く遠田のもとに通い。しかし突然の絶縁宣言。その理由を手繰り寄せようとした時、遠田が語った己の過去とは…と。筆耕から発展して代筆屋シリーズ物として続けていくのかと思いきやのこの展開。そして大人な上にも大人な小学生遥人くんの存在が光るなあ。過去作からすると、まほろ駅前のシリーズかなとちょっと思った、続が実直な多田で、遠田が奔放な行天みたいな。まったく何から何まで一致するわけじゃないけど、雰囲気がね。書の奥深さと漢詩の滋味にもふれられてよかった。「気になるなら、会いにいけばいい。勝手に下ろされたシャッターなど、ぶち破ればよかったのだ。」と今まで実直一本だった続がはじめてそれを突き抜けるかのようなシーンが愁眉。個人的には。「働いて食ってクソして寝て、あっというまにお別れのときが来る。それでも俺たちは、その日が来るまで忘れたふりをして、賭けて笑って悔しがって、せいぜい楽しく生きるのだ」(p.76)

  • 最近体調不良の影響で読書がはかどらないので、読んだ小説。
    小説は読みやすくて、いろんな人の感情や考えを疑似体験できるので面白い。この本では主人公がある人と距離を縮めていく過程での、心の変化が繊細に描かれていて、どこか懐かしい感じがした。

  • オーディブルにて
    書道家とホテルマン

    友情の物語

  • 5/31➡6/2

  • 2023.04.24 Audibleにて

    櫻井孝宏さんの声で

    三浦しをんさんの作品は、2つ目。
    あ、やっぱり面白い。Audibleに三浦しをんさんの作品今後増えてくといいなぁ~
    櫻井さんって普通?な感じが上手いんだけど、三浦しをんさんの作品に合ってるなぁ~人としては問題あるかもしれないけど、上手いんだよなぁ
    カメレオン俳優ならぬカメレオン声優
    モブにも主にもなれる。本当に凄い
    こういう本のナレーターもいいね
    ま、それは、さておき。

    大まかなあらすじ
    ホテルで働くチカラが案内状の宛名書きを頼みに、書道家のトオダを訪れると、そこに現れたのは、体の大きく、顔がイケてる豪快で適当で強引な人だった。
    遠慮のない物言いや態度は、決して不躾では無いことを知り、仕事を通して、時間を共にして、いつしか、チカラにとってトオダは、友達のような家族のような、居心地が良く、一緒にいる時間が楽しいと思える大切な存在になっていく──────────

    恋愛のない作品は大好きです。
    最後の方まで、この作品は、一体何をどう展開して終わるのかがわからなかった。
    ただ、チカラとトオダの二人の関係が淡々と近づいていくだけの話でも全然、ずっと聞いていたいなぁと思えるくらい、話のテンポや言葉が好きでした。
    声掛けられやすい人ってなんだろうね?
    私も声掛けられやすいタイプで、イヤフォンしてたり、旅行客なのに、道聞かれたりする謎。
    いや、方向音痴なんだけどね?
    あと、外人率高い。英語全く喋れないんだけど謎。でも、チカラ程では無いかなぁ~と思った。そういうのなんなんやろう~??
    後、なんか無性に字が上手くなりたいって思う作品です。

    以下、ネタバレあり
    トオダの過去がどうであろうと、チカラがトオダとの関係を切らないって決めた下りを聞いた時、あーなるほどって思った。
    大して、盛り上がりがある訳でも、事件がある訳でもないけど、二人が淡々と描かれていたのはそういうことか、ってなった。
    三浦さんは、描きたい!ことがすごくハッキリしてる人だなぁと。伝えたいからこそ、それまでいろんな布石があるというよりも、ここが描きたいんだ!ってところを、描きたいように描いてる感じする。上手く言えない。

    佐々木くんのお小遣い上がったかなぁ~?

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三浦しをんの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×