暴雪圏

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104555079

作品紹介・あらすじ

最大瞬間風速32メートル。十勝平野が十年ぶりの超大型爆弾低気圧に覆われた日の午後、帯広近郊の小さな町・志茂別ではいくつかの悪意が蠢いていた。暴力団組長宅襲撃犯、不倫の清算を決意した人妻、冴えない人生の終着点で職場の金を持ち出すサラリーマン…。それぞれの事情を隠した逃亡者たちが辿りついたペンション・グリーンルーフで、恐怖の一夜の幕が開く。すべての交通が遮断された町に、警察官は川久保篤巡査部長のほかいない-。超弩級の警察小説。

感想・レビュー・書評

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  • 道北の駐在警官、川久保を主人公にしたシリーズ2作目。前作とは変わって暴雪の一日に発生した事件を多視点で描く長編。登場人物たちの細かな悪意が積み重なって集結していく様は読んでいて面白い。その中で川久保は良心的な存在として描かれる。多くの視点と展開がゆっくりなために読み疲れすると思ったが流石の筆致でグイグイ読ませる。前作同様に痺れるくらいにひりついた物語構成には唸らされるしラストの余韻も好み(これは個人差あると思う)ミステリーというよりサスペンスに近いのでどちらかというと前作のが好きだが続編はないのかな。

  •  『制服捜査』は、本当に印象に残る短編集であった。帯広の駐在所に飛ばされた元道警捜査一課のやり手刑事。道警裏金問題によって失われた権威と信頼を取り戻すため、警察は無理矢理なローテンションを現場警官たちに強いた。その影響下で思いもかけぬ道東の片田舎に追いやられ制服警官となった川久保巡査は、十勝の四季の中で稀に起こる犯罪やトラブルに対処してゆく。そのローカルな生活感や、この風土ならではの独特の事件性が目を引く作品集だった。

     本書はその川久保巡査を主人公にした初の長編作品である。大いに期待したのだが、実際の読後感はその期待感をある意味で裏切る。それというのも、川久保巡査が思ったより活躍してくれないのだ。この『暴雪圏』の主人公は、吼え猛ける風であり、降りつのる雪であり、広大な原野であり、何よりも十勝の冬である。災害小説とも取れるような最大級の嵐に見舞われた十勝の大地に沸き起こる事件の数々と、人間たちの運命の絡み合い、そうした群像小説という形にもってきたのが、この作品。

     シリーズ的な楽しみはある意味奪われた感があるものの、別の独立長編としてのインフェルノ小説的楽しみが逆に満喫できるあたりが、曲者である。雪に閉ざされたペンション人質篭城事件などは、まるで別の小説のように思えるのだが、こういう風にまとめずに、できればモジュラー型ミステリーの楽しみのまま、川久保巡査にもっと活躍して頂きたかったというのが、わがままな読者としてのないものねだり。

     それにしても除雪車の出動順序によって道路が開通するという設定のあたりは北海道小説としては楽しいものがある。おかげで、ラストシーンは川久保巡査の西部劇みたいな活躍のシーンが用意されている。さすがに北海道開拓時代のガンマン小説(ぼくは勝手に蝦夷地ウエスタンと名づけているが)を書いている作家である。

  • 面白いのは面白かったが評価に悩む。何に重きを置いて読書するかによって評価が大きく分かれるのだろうが、謎解きを重要視する私は完全に拍子抜けした。社会派の警察ミステリと割り切っていても、やはり不完全燃焼という感は強く残る。
    暴雪に襲われ密室状態になった町、不穏な事情を抱えながら集まってくるキャラクターたち──このあたりのディテールが良かっただけに、全体のバランス不足が残念で仕方ない。プロローグと呼ぶには余りにも長すぎ、メインストーリーと捉えるにはさすがに中途半端。それでもそこそこの満腹感を味わえるのが不思議。いろいろなドラマが作中で展開するが、本作品の主人公はまぎれもなく暴雪。

  • 「制服捜査」続編。
    にっちもさっちも行かなくなった人達が
    暴風と暴雪の嵐の中で立ち往生。
    読み始めは重苦しくて暗~い、圧迫感があって息苦しくもあるなぁ、なんて思いながら読んでいると・・・

    だんだん三谷幸喜のシチュエーションコメディ風に。
    なんだかドタバタで笑えました。

    最後はみんな少し前向きになって爽やか。

  • 制服捜査シリーズ 第2弾 長編作

    元捜査一課刑事で志茂別駐在所勤務の川久保篤巡査部長は2回目の早春を迎えたころ、彼岸荒しという爆弾低気圧が北海道の街に猛威をふるっていた。

    そんな悪天候の中、ヤクザの組長宅に強盗が押し入り逃走する事件が帯広で発生し、犯人は志茂別管内へ。

    駐在所管内では変死体の発見の通報が入り、何とか確認に出かける川久保。身元が割れ所持品から襲われた組の企業舎弟の名刺が。

    その他、不倫の結末を迎える主婦や虐待から逃れるために家出した少女などが、交通網の麻痺によって犯人や登場人物が次第に一点へと集中していく。

    負のスパイラルにからめとられる登場人物たちは果たしてどいう結末を見るのか?


    群像劇で、上手く収束していくさまが良かったです。

    奥田英朗の「最悪」や「無理」に似た感じがしました。

  • 500ページほどあったけど長く感じない。面白かったけど最後突然おわった。

  • 猛吹雪で道路が遮断された。
    行き場を失った訳ありの人々がペンションに避難してくる。
    出会い系で知り合った不倫相手との関係を清算しようとした主婦。会社の金を持ち出した男。義父の虐待に耐え兼ね家を飛び出した少女。そして暴力団組長の屋敷を襲った強盗。
    TVで強盗殺人のニュースを見た避難者たちに緊張が走る。
    村でただひとり、警官として対処する川久保。
    そして暴風雪が終息した後の訳ありの人々の今後は読者の想像に託される。

  • 終わり方が惜しい。

  • 制服捜査は良かったのになあ
    佐々木譲は長編が多い
    自身も長編が得意と思っているようだが
    短編のほうがむいているのでは?

  • 北海道警察広尾署志茂別駐在所・川久保巡査部長の話。猛吹雪が巻き起こる日、様々な事件が繋がっていき、あるペンションに結集していく。吹雪の為に次々と計画が崩れていく犯人たち。自然の前に人間の思惑など、全く無力であり、太刀打ちできない様子がうまく描かれている。が、ラストはこれでお仕舞いなのだろうか。余りにも淡白すぎるのではないか。それに他の事件は・・・少し不満が残ります。

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著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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