沈黙法廷

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 388
感想 : 62
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  • Amazon.co.jp ・本 (557ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104555116

作品紹介・あらすじ

周囲で連続する不審死。被告人の女性は証言台で突然口を閉ざした。警察小説と法廷小説が融合した傑作。絞殺死体で発見されたひとり暮らしの初老男性。捜査線上に家事代行業の女性が浮上した。彼女の周辺では他にも複数の男性の不審死が報じられ、ワイドショーは「またも婚活殺人か?」と騒ぐ。公判で無実を訴える彼女は、しかし証言台で突如、黙秘に転じた。彼女は何を守ろうとしたのか。警察小説の雄が挑む新機軸の長編ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 一人の独居老人の強盗殺人を巡り、前半は事件解決までを警察目線で、後半は裁判の様子をこと細かく描いた500ページを超える力作。犯人と思われる女性の周囲では、何人もの男性が不審死しており、本作の中でも事件名として取り上げられているが、木嶋佳苗を彷彿とさせる。重量感があり、読み応えはたっぷりだけど、タイトルの意味がいまいち分からないところが残念。

  • 小金を持っている馬場幸太郎が殺害され、その犯人をめぐって多くの人物が交錯する物語だが、冒頭の高見沢広志と中川綾子のすれ違いが後になって重要な要素になるという構成は楽しめた.事件当時、馬場宅を訪れたデリヘル嬢、家事代行業の女性、遺体を発見した胡散臭い修理業者、その時に現れた息子の昌樹、不動産業者と犯人と目される人物は頻出した.捜査を担当した赤羽署の伊室らは家事代行サービスの山本美紀に注目していたところ、埼玉県警も彼女を探っておりタッチの差で取り逃がしてしまう.捜査に加わった鳥飼の強引な動きで、埼玉の検察が不起訴にした美紀を逮捕する.裁判の内容が詳述されているのでじっくり読んだ.高見沢は中川綾子が美紀であったことに驚き、裁判を傍聴した.矢田部完弁護士の巧みな指導で無罪を勝ち取った美紀と広志が合う場面が良かった.伊室らは真犯人の目星を付けているところでストーリーは終わったが、続編が読みたいと感じた.

  • 終わり方に爽快感はないものの、自分の想像を超えた結末になった。

    普段の作柄と違って警察官があまり表立っていないものの、同じ公僕としての心情はよく分かる。
    本庁が正しいというわけじゃないんだよね・・・

  • 結構なボリュームのある本だけど、読み終えての感想は読みがいがあった~というより、やれやれ、やっと読めたというもの。
    半分くらいからつまらなくなって数ページ読んでは寝てしまう、睡眠薬みたいな本だった。

    小金持ちの老人が殺害されるという事件が起きる。
    容疑者として浮上したのは老人の家に時々家政婦のヘルパーとして訪問していた女性。
    彼女の周辺では過去にも不審な死や金の動きがあった。
    その裁判を見守るのは以前彼女とつきあいのあった男性。
    裁判の中でふと沈黙をしてしまう彼女。
    その理由とはー。

    読んでいてずーっと思ったのはこの程度の状況証拠で犯人と確定した捜査をするんだ・・・ということ。
    それが本当にあるなら恐いな・・・と思った。

    あとは何も思う事はない。
    話の冒頭、裁判を見守る男性の目線で描かれ、彼が誰か女性を待っている、だけど、彼女は来ないという話から始まる。
    そこから一転、老人の殺人事件の話へ。
    事件を担当する刑事の目線で描かれる。

    私がこれを読んでいて思ったのは、登場人物にまるで個性がないということ。
    どんな受け答えにしてもまるで機械のようにあてはまった言動をしている。
    裁判の際に、こんなにきちんとした受け答えができる人ばかりだろうか。
    彼女は真面目できちんとした固い人物、寡黙な人と周囲の人に語られるも、それは周囲がそう言うからそういう人なんだろうな・・・って思うだけ。
    「沈黙法廷」というタイトルの割に、裁判の場面は後半から。
    しかも、沈黙していたのはある一時だけ。
    そこに彼女の思いが込められていた・・・という事が語られているけど、私には何も響かなかった。

  • 東京・赤羽にて不動産業を営む老人の絞殺死体が発見される。容疑者として浮かび上がったのは、フリーで家事代行を請負う山本美紀。捜査を進めると、過去に彼女の顧客達が変死していることが判明。彼女は連続強盗殺人犯なのか・・・
    弁護人と検察側がなぜそのような主張をするかなどの背景、裁判の全体の流れや、傍聴などのプロセスなども詳細に書かれている。勉強にはなるが、全体として淡々と進むトーンが最後まで続く。
    ラストは、もう少し感動的に盛り上がるのかと思ったが、それほどでも。

  • 家事代行業の女の周囲で連続する不審死。被告の山本美紀は証言台で突然口を閉ざした。有罪に代えても守るべき何があるのか、という警察小説と法廷小説が融合した傑作の謳い文句に、いつかググっと引き込まれる展開が待っているのかと期待しつつ読み進めたが、そのまま終わってしまったという感じ。

  • 東京の北区赤羽の古い住宅地で64歳の一人暮らしの男性が殺害される。
    被告となるのは、経済的に厳しい境遇に置かれてきた
    30歳の家事代行業の女性。
    淡々と裁判が進んでゆくあたりにリアリティを感じる。

    印象に残っているシーンとしては、
    縄張り重視で証拠固めをおろそかにしたまま
    かなり強引な逮捕に踏み切ってしまう警察の初動捜査のあり方や、
    何よりもメンツにこだわる検察、
    そして、警察発表をそのまま鵜呑みにして、
    裏を取らないままセンセーショナルに騒ぎ立てるマスコミの報道姿勢。

    凶器も物的証拠もなしに、状況証拠だけで罪に問えるのか否か。
    実際問題として、被疑者が否認したまま
    状況証拠だけで公判を維持するのは大変だろうな。

    過去にも、三浦和義のロス疑惑だったり、
    和歌山毒物カレー事件だったり、
    本書にも度々登場する首都圏連続不審死事件だったり。
    無罪になったり有罪になったり。
    だからこそ注目が集まるのだろう。

    有罪にしろ無罪にしろ、裁判という制度は、
    自分の生い立ちや人には知られたくない過去までも
    赤の他人の前で証言する必要があるのだな。しんどい。
    できれば経験したくないなあ。

  • 見込み捜査に走る一部警察のせいで冤罪に陥れられそうになる女性。にも関わらず,彼女は裁判で黙秘を貫く。前半冗長,後半急転直下というストーリーでこんなに神幅はいらないだろうというのが率直な感想。ただ,新聞小説はペースを掴むのが難しいんだろうなあという同情も。決してつまらないわけではない,ハッピーエンドになりそうな終末もでホッと安心。

  • 連続(埼玉・東京)独居老人殺害強盗事件が発生し、それらの家に出入りしていた家事ヘルパー女性が容疑者として浮上する。
    一貫して否認しており、埼玉県警は処分保留で釈放するが、警視庁は状況証拠のみで逮捕・起訴する。
    前半は事件の発生から捜査。後半は法定での検察と弁護士の争いが書かれている。
    佐々木氏らしい詳細な記述で話が進むので、自らが体験しているかのように読め、なかなか面白い。
    しかし捜査というものは幹部達が考えたストーリーを証明するために行われ、筋が違うものは除外されていくのが怖い。このように冤罪は作られていくのだなぁと改めて認識した。
    判決後僅か5時間での急展開は、あっけないものであるが、所轄の考えなど、捜査一課には全く省みられないのであった。
    否認・黙秘・サインしない・・・これが重要。

  • ハウスキーパーの周りで起きた、男性の不審死。
    前半が警察小説、後半が法廷もの、という構成で、ボリュームがある。
    勇み足に見える警察と、何かを隠している女性。
    描写は丁寧だけれど、誰かに入りこむ感じではなく、最後まで淡々と進む。
    それなりに楽しめたけれど、やや冗長な印象。

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著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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