- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104560035
作品紹介・あらすじ
「会っている数日のあいだ、わたしたちはセックスしかしない。おぼえたての高校生のままみたいに」十七歳のわたしたちが互いに向けたのは、ただ、欲望だった。それから八年。上京した彼は年に一度だけ故郷に帰ってくる…。上京、就職、結婚と、人生で最初の岐路に立つ主人公が振り返る、忘れられないセックスの記憶。少女から女へ、少年から男へ。心と身体の移ろいを瑞々しく描きだす全七篇。
感想・レビュー・書評
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「エロ」な豊島さんを読みたくて手に取った。官能的だけど、どこか冷めていたり青臭かったりな登場人物らのおかげで、重苦しくなりすぎず読めた。
でも、個人的に心を動かされたのは、全編を通して舞台に描かれている「田舎」だ。これが裏テーマだろうか…舞台はおそらく東北だろう。県は違えど、豊島さん同様に北東北の片田舎に生まれ育った私には、描かれる田舎の閉塞感が手に取るように分かった。そこで暮らすことの息苦しさを振り切るように都会へ出る。嫌悪感を感じつつも、全てが嫌かといえばそうも言い切れない。それはまんま、私自身もそうだったから。田舎を捨て、東京でライトノベル作家として成功した照が、イラストレーターの彼女に郷里のテレビ番組を見せて言われた言葉。「っつーか、よくこういうとこ住んでいられたよね」「あたし無理。こういう文化レベルの低いとこ。」そのセリフには同意しつつも、なんだかうまく説明できない苛立ちを感じたのだった。照が言うところの、「わかっているけど、飲み込めないものがあった」。他の作品の登場人物も、皆どこかで自分を持て余している…田舎に留まるものも、出て行ったものも、出戻ってきたものも。余計なお世話だけど、豊島さん自身、書きながら揺れていたんだろうかと感じてしまう。
それが如実に現れている最終話の「結晶」は、読んでいて胸が痛かった。読みながら、愛読していた豊島さんの連載エッセイで、東京から秋田に帰ると突然発表したときのことを思い出さずにはいられなかった。休筆宣言はその後だったろうか。
「どっか届きたかった気がするのに、今じゃもうわかんない。あのまんまがよかった気がしてきたんだ。なんか。」
「結晶」のこのセリフが、妙に心に残った。地方出身者だからこそわかってしまうコンプレックス…そんなものを勝手に感じ取り、「結晶」で、東京で再会した同郷の人間との方言での会話のような感覚で、私は豊島さんの小説に強烈なシンパシイを感じていた。できることならまた会いたい。彼女の小説に。 -
少女から女へ、少年から男へ。
若者だからこそ岐路はたくさんある。若くきらきら輝いて何をしても楽しくて
有り余るエネルギーをぶつけ合い、飽きもせず求めあった、あの頃。
少しの淫靡さをまとった短編集です。胸がキリキリと切なくなる話が多かった。
精神的にもだいぶ大人になったつもりでいたけど、しっとりした大人の恋より
まだまだ“こっち側”に共感してしまうと気付かされました。 -
40代のおやじにとってこの小説はすっごく懐かしさの感じる短編集でした。
すごく綺麗で胸がぎゅーっと締め付けられるような苦しみと切なさにたまらなくなってしまう。
「あなたを沈める海」と「避行」、男と女、違った視線から語られれば風景も違って見える。書き下ろしの「結晶」もよかった。 -
2009.06.11. 女の子たちの、なかみは、空っぽなんだ。それが海のようであり、砂漠のようであり。
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ジュース1本でセックスさせてくれる女子高生がいる? と女房に聞くと何を馬鹿なことをいってるの。 と怒られてしまった。
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「春と光と君に届く」がとても好きでした。大好きな人を毎日大切にしようと思いました。
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思春期独特の感情が詰まっている。
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短編集。冒頭二作のみ読了。設定が好みじゃなかったので断念したが、文章はとても綺麗で読みやすい。この直後に村上春樹を読んだら、案の定胃のあたりが気持ち悪くなってきた。気持ち悪いのに読みたいと思う本と、気持ちよく読めそうなのに読むのを止めてしまう本の違いはなんだろう。装丁と挿絵の好みって、その作品を好きになれるかどうかの基準としてめちゃくちゃ大きいですよね。