汚名

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 51
感想 : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104576012

作品紹介・あらすじ

藍子叔母は、いつも物憂げで無関心で孤独だった。まるで、心の内部に暗くて深い裂け目が横たわっているかのように。ふとしたきっかけで叔母の謎多き過去を調べるようになった私は、叔母の旧友という老婦人から、古ぼけた八ミリフィルムを見せられた。そして、その中に写し撮られていたのは、初々しく、朗らかで、健康的な美しさを持つ、女学生時代の叔母の姿だった。いったい何が叔母を変えたのか。香気あふれる文芸ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 世間からも人からも距離を置き、パートで働き一人暮らしする叔母。
    主人公の男性はそんな叔母のもとに学生の頃、ドイツ語を習いに定期的に訪れていたが、その間、叔母が心を開く事はなかった。
    そして、叔母は通り魔に殺されて亡くなった。
    それから何十年も経ち、50代になった男性はある事がきっかけで叔母の事について調べ始める。

    最初は何故、叔母がそんなに頑なな態度をとるのか、彼女の過去に何があったのか、本当に彼女を殺したのは通り魔だったのか、という興味から引き込まれて読んでいましたが、途中、何となくその理由が見えてきたあたりから興味を失いました。
    そこにあったのは満州事件があった時代の社会主義だとか、スパイだとか、特高だとか、そんな話。
    そういうのには全く興味がないので、その事を何だかんだと書かれた男性の手記のあたりで退屈になってほぼ流し読み。

    その事を書きたかったんだな、というのは分かりましたが、それと叔母の人生とがうまくリンクしてないような気がしました。
    まるで独立した二つのストーリーのような感じで、感情移入できない。
    もし、一人の孤独な女性の人生とそういった出来事とがうまく合わさっていたら事柄には興味なくても引き込まれて読んでいたと思います。

  • ある人間の過去を探るという、「火車」とも似てるかな。ラストのひねりは物足りないし、作者特有の舞台設定の妙もなかった。

  • 多島氏三作目。ここまで読んできたものには、事件の発端が戦時中の出来事、回想録を使う、もしくは回想で語られる、まさかの人物に役割がある、何気なく書かれているような小物に意味がある、の共通点がある。多島氏の作品が必ずしもこの枠にはまるものばかりだではなく偶然だろうが。意外な小物の意味、意外な人物の意外な役割は面白かった。『黒百合』に通じるものを感じる。表紙と中表紙の写真も、タイトルとも内容とも何の関係もなさそうだと思ったのに途中で意味がわかり驚いた。全体に歯切れよく進んでいるが。戦時中の回想部分は他の章に比べ冗長な印象。旧かなも使用しており、別人が書いたことを印象付けたかったのかもしれないが。本作は『症例A』より後に書かれたが、『症例A』の方が文章もこなれていて作品としても完成度が高いと思う。
    タイトルは映画に引っ掛けたんだろうか。内容は似ているようで異なるが。
    2つほど疑問。
    その1、今回は「ゾルゲ事件」がキーとなり実在の人物の名前も出てくる。チュンさんこと中原滋は伊藤律の当時の活動に似たものがあり彼を中心に事件にかかわった多くの人物の特徴を混ぜ合わせたような造形にしたのではと思う。しかしこの事件の発端については、伊藤律は無関係だったと1990年代には既に広く認識されており、2003年に書かれたこの小説で伊藤律の証言が事件の発端とする一文を入れていることに疑問を感じる。
    その2、逮捕日の10月17日を「新嘗祭」としているが(p.130、p.224)、「神嘗祭」ではないだろうか。
    校正に定評のある新潮社だから、以上2点は私の誤解、あるいは作者が意図的にそうしたのかもしれないが。

  • 回顧録系なので、現代と過去が交錯して、伏線を少しずつ回収してゆく感じが気持ち良い。

  • 2013/01

  •  叔母の旧友に見せられた叔母の学生時代のフィルムをきっかけに叔母の過去を探る主人公。母が預かっていた叔母の遺品の中にあった手紙。その差出人の手記。たどっていくうちに知る真実。ゾルゲ事件について。

  • しっくりこなかった。
    登場人物たちの人間性が、薄っぺらく思えてしまったから。

    うーむ

  • 1月17日読了。「このミステリがすごい!」2003年度の20位の作品。先日行方不明報道がされたミステリ作家、多島斗志之の作品。数十年前に、ドイツ語を教わっていた偏屈な叔母の記憶。ふとしたきっかけで叔母の過去を調べだした作家の主人公がたどり着いた真実とは・・・。昭和な筆致の長い手記、登場人物の聞き書きと形式を変えて語られる過去の話は端正な筆致で実にすらすら頭に入ってくる。読み終わったときに登場人物たちの「想い」がじわりじわりとしみて来る・・・。淡々としたトーンで記述されているだけに再読すると感慨が深そうな作品だ。作者の消息・次作の発表が望まれる。

  • 071107貸出。
    死んだ叔母さんのことを調べていたら・・・。深い。「症例A」も面白かったし。

  • なんともよく出来た構成で、真ん中過ぎてもどこまで何が判るのか判らないままにたらい回しされていく。しかも世界を揺るがす何かが判る訳ではなく、歴史的な事件と自分との関わりが見えてくるというところだ。
    ゾルゲ事件をベースに特高など、今に生きる人にはほとんど訳の判らない組織の姿とその時代がうっすらと見えてくる。
    途中までは本当のルポルタージュではないか、と疑っていたほどだ。(フィクションだとか、ノンフィクションだとかはどこにも書かれていない。帯の文面もノンフィクションのように読める。)
    そんな風に思ってしまったのはちょっと前に読んだ「美麗島まで」というこちらはノンフィクションのルーツ探しの物語を読んだことが多分影響している。
    なんやかんや第二次世界大戦に関わる話は読んでしまうなあ、とふと思う。

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著者プロフィール

1948年生まれ。広告ディレクターを経て、1985年『〈移情閣〉ゲーム』でデビュー。おもな著書に『症例A』『離愁』など。丹念な取材と計算しつくした文章で、一作ごとにまったく異なる世界を緻密に描きだし、本読みを中心に高い支持を得る

「2016年 『感傷コンパス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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