淵の王

著者 :
  • 新潮社
4.04
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本棚登録 : 346
レビュー : 53
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104580071

作品紹介・あらすじ

俺は君を食べるし、食べたし、今も食べてるよ――。魔に立ち向かい、往還する愛と祈り! 友達の部屋に現れた黒い影。屋根裏に広がる闇の穴。正体不明の真っ暗坊主。そして私は、存在しない存在。“魔” に立ち向かうあなたを、ずっと見つめていることしかできない。最愛の人がこんなに近くにいたことに気づいたのは、すべてが無くなるほんの一瞬前だった……。集大成にして新たな幕開けを告げる舞城史上最強長篇!

感想・レビュー・書評

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  •  毎度毎度、どう消化すべきか悩まされる舞城王太郎作品。舞城作品としては筋は追いやすい方だろう。それでもやっぱり、今回も悩まされた。とっくに読み終えて放置していたが、今頃駄文を書き連ねることにする。

     長編と称しているが、実質的には3人の男女が語り部を務める中編集である。3人それぞれが、それぞれに「闇」と対峙する…と言えばいいのだろうか。ホラーの要素もあるし、ミステリーの要素もある。文章だけならアクが強いこともなく、普通だが…舞城節には違いない。

     ダントツに怖いのは、最初の「中島さおり」の章だろう。途中はともかく、友人宅に駆け付けるラストシーンに戦慄する。だって、実際にありそうだろう、こういう事例…。「闇」とか何とかより、人間の方がよっぽど怖えぇぇぇ! この1編だけ膨らませたら、長編としての完成度が上がっただろう。しかし、そんな安直なことはしないのが舞城王太郎。

     続く「堀江果歩」の章。テニス少女が漫画家を志し、テニス漫画を描く。王道スポーツ漫画とは一線を画すどころではない彼女の作品は、大人気を獲得。しかし、原稿の中に、描いた覚えがない人物が…。並行してホラー漫画に取り組み、最終話で明かされる真相はっ! …うーむ、舞城さん、これ漫画として出してくれませんか。

     最後の「中村悟堂」の章。曰くつきの空家に敢えて住む悟堂。いやぁぁぁぁ何その猟奇的事件!!!!! どうしてその現場に住むんだ…。3編中では最もホラーっぽいが、最も筋がこんがらがった難物。悟堂が骨のある男なのはわかった…かな。

     最初の章の圧倒的リアリティが、その後の章のインパクトを弱めた感があるが、全体的には、日常に潜む落とし穴を描いたと言えなくもない。こういうずっしり重くなりそうなネタを、舞城さんが書くとなぜかカラッとしているのは不思議だ。

     などとわかった風なことを書いてみても、いつもしっくり来ないんだよなあ。わかったようでわかっていない迷える一読者を、舞城さんは鼻で笑うに違いない。

  • 語り語られる物語。薄ら怖さと優しさが共存した小説だった。
    今までのパズルじみたメタメタメタな構造(世界を何層にもわたって描くことでむしろ世界が閉じ、矮小化してしまう問題をはらんでいる。舞城は「娯楽産業」なんて言葉で語ったこともあった)からいったん離れ、新しい形式をとり、それが成功しているとも思う。
    ここでは詳しく書く気はないけど序盤から語りが奇妙で不可解で、読み進めていくうちに一人称がどうやら各章の主人公にぴったりつきまとっている守護霊とかそんな感じの存在であることがわかってくる。形としては、二人称小説っぽい。語り手が、語り手を知覚できない主人公に対して延々と語りかけるようにして描写されていく。でも、それだけじゃなくて……。という話。
    人称形態そのものを物語とじかに接続して書き上げた点では評価したいし実際かなり高度なことをやっていると思う。「主人公が語り手を知覚できない」点では3人称っぽくもあるし、これってすごく新しいことなんじゃないか?知らないけど少なくとも僕はほかにこんなの知らない。物語のエモーションとしても十分だった、特に2章のラストとか……けど。うーん。何だろう。僕は何か不満があるというよりはまだまだ期待してるのかもしれない。たぶん舞城がこの次に書く小説はきっとこれより面白くなってるような気もするし、楽しみにしてる。

  • 大変良かった。感想終わり。以下は駄文。

    3話とも出てくる語り手、は、「守護霊」とか解釈している人もいるけど、そんなんじゃないなあとは思う。語り手が誰、とか、あの穴は結局何なんだ、みたいなのは作者は特に答えを用意していていなくて、読み手が最後に考えて、もしくは感じ取ってくれ、そういう類のレイヤーの高い何かである、というのが一番すっきりとする考え方だと僕は思う。

    少し前の舞城はもっと純文学っぽい指向性があった(と身内よりの指摘)と思うし、それはそうだなとも思う(語り手誰だ問題みたいな一種の「投げっぱなし」はその名残か)が、今作は大分ポップに振れていて、こういう感じの方が読みやすい。

  • なんかわかんない。けど読んだ。えらい!

  • ギャー怖い怖いやめて怖い!!
    「ヒー‼:(´◦ω◦`):」ってなりながら読んでました。

    短いセンテンスで、素敵なこというのねー。
    印象的な台詞がちらほら。

    真っ暗闇は怖いけど、素敵な光もいっぱいで、初めての舞城王太郎作品がこれで良かった。

    LOVE&ピース&HAPPY!(&MORE…)

  • 噂の2人称で語られる舞城の新作。語ってるのは誰?って疑問が残ります。そもそも「淵の王」ってなんぞ?ってとこですが。話はホラー仕立てで特に最後の話は読んでて嫌な感じがしました。人生ってタイミングだけど、そん時気が付かないこともたくさんあるよなぁとふと思い出したのでした。
    で、誰が語ってるのこれ?

  • 実に気味が悪い小説だ。
    描かれている出来事や人物という直接的な不気味さは勿論のこと、それ以上に「得体の知れないもの」が蠢いている感がすごい。行間に、ページの隙間にその気配は漂い、漏れ出て、読み終えたときには肌が粟立つようだった。思わず辺りを見回して、壁を背に塞がなければ落ち着かなかった。

    私が最も不気味に感じたのは、正体の知れない「穴」や「裸の男」よりも、掴み所のない3人の「語り手」達の方だ。
    主人公たちには感覚されない世界で、主人公をずっと(物語の始まる以前から)見つめ続け、記録し続け、主人公と共に在るという「語り手」の存在。これがどうにも割り切れず、大きな引っ掛かりとして付きまとった。
    読後に辺りを見回してしまったのは、「穴」や「裸の男」が怖くなったからではない。
    それもあるけれど、それ以上に、この「語り手」達と同じように私のことを見つめて、私には聞こえない声で「あなた」、もしくは「君」、「あんた」と呼びかける誰かがいるような気がしてしまったからだ。得体の知れない何者かに見つめられているということ、これ以上に気味の悪いことはない。

    とは言え、この「語り手」の立ち位置によってこの小説が特徴づけられていることは言うまでもない。

    「私」と「あなた」だけで完結しない呼びかけ。
    誰かに聞かれ、読まれることを想定した呼びかけ。
    二人称小説で、こんなに広がりのある世界が作られるとは知らなかった。

    「語る者」と「語られる者」と「読む者」のこの三角関係は、もはや発明の域なのではないだろうか。

  • 中短編3編
    何だろう,これら3編に共通する主人公の背後霊のような語り手の得体の知れない優しさあるいは一方通行の愛,そしてそれぞれの主人公たちに纏わりつく不穏な穴.人間の悪意や呪いの怖さと超自然的な怖さとが磁力のように引き合って,独特の世界観を出していて,それに挑む主人公たちが生真面目な愛で屹立していて,とても美しかった.

  • とても怖がりです。でも怖い話が読みたくなります。怖いもの見たさです。
    この小説は、面白い!という評判だけ知っていました。なので怖い話が読みたくて読んだわけではないです。
    いくつか、怖いと言われる小説を読んで、あまり怖くないなという肩透かしばかりだった時に読むことになりました。
    部屋の隅や夜の道の暗闇、理不尽で脈絡のない不可解な言動、人の悪意、そういうものが怖い人にはとても怖いと思います。
    読んでいて動悸と鳥肌が止まりませんでした。
    今日は電気を消して眠れるか心配です。
    でも読み終わって感想を書いていると、もう一度読みたい気持ちになってきました。なんだか、このお話は、恐怖がテーマではなく、勇気や優しさがテーマな気がするので。
    文体も読みやすかったので、舞城王太郎の他作品も読みたいですが、またこんなに怖かったら心臓もたないなぁと少し躊躇います。
    けど多分読みます。

  • 初舞城王太郎氏!!と、何故に!!を2つ付けたのかというと、
    私のストライクゾーンにものすごい剛速球を投げ込まれた衝撃からの
    それを大ホームランにて打ち返すという、久々に出会った作家。
    こんなに心を揺さぶられて泣いてしまうホ
    ラー小説って今までに無かった!
    いや!これは純文学といっても良いと思う。いいのかな?(笑)
    人間の心の汚物に感応されるように現れる黒い塊。
    主人公の影のように寄り添い続ける不思議な存在。
    日常に潜む凶・狂と戦いつづける主人公たち。
    最初はこの独特な文体に少なからずも嫌悪を感じながら読み進め
    そして『ウサギちゃん大草原』最後はこの言葉に泣いてしまった。
    第1章、中島さおり。第2章、堀江果歩。第3章、中村悟堂。
    この3人に寄り添い続けたものこそが『淵の王』なのかしら?

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著者プロフィール

1973年、福井県生まれ。2001年『煙か土か食い物』で第19回メフィスト賞を受賞しデビュー。03年『阿修羅ガール』で第16回三島由紀夫賞を受賞。『熊の場所』『九十九十九』『好き好き大好き超愛してる。』『ディスコ探偵水曜日』『短篇五芒星』『キミトピア』『淵の王』『深夜百太郎』『私はあなたの瞳の林檎』など著書多数。12年には『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦著)の25周年に際して『JORGE JOESTAR』を刊行。近年は小説に留まらず、『バイオーグ・トリニティ』(漫画・大暮維人)の原作、『月夜のグルメ』(漫画・奥西チエ)の原案、トム・ジョーンズ『コールド・スナップ』の翻訳ほか、短編映画『BREAK』や長編アニメ『龍の歯医者』の脚本、短編アニメ『ハンマーヘッド』の原案、脚本、監督などをつとめている。

「2018年 『されど私の可愛い檸檬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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