重力ピエロ

著者 :
  • 新潮社
3.82
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本棚登録 : 11869
レビュー : 1607
  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104596010

感想・レビュー・書評

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  • 伊坂作品の中で1番好きです、今のところ。春がどうしようもなく好きで、泉水がどうしようもなく好きです。
    家族ってステキだなって

  • 私の中での伊坂作品最高傑作である。

    前半ではミステリーの要素を端々に散りばめながら、主人公である泉、春、父、母の家族の絆の深さを回想ストーリーを踏まえて鮮やかに伝えている。

    父のこんな台詞がある。
    「春は俺の子だよ。俺の次男で、おまえの弟だ。俺たちは最強の家族だ」

    ありきたりな言葉だけれど、全ての事実を受け入れ、真正面から目を逸らさずにこの台詞を言い放つことは、私たちが考えている以上に厳しく、辛いはずだ。
    父は物凄く大きな心を持っている。強い人間だ。
    彼を支えていたのは、一家の主としての責任であり、倫理、常識に逆らった自分の判断を支持するためのもがきだったのかもしれない。
    いずれにせよ、彼の強さから出た台詞だ。そして、物語を根底から支えているのが、この台詞である。

    父は家族の苦しみを一人で背負って立つつもりだったんだろう。
    現に泉と春には母が負った傷について考えさせたくはなかった。
    だからこそ、常に強い父であり続けた。
    春のやっていること、やろうとしていることに気付いた時に、泉に電話をかけて言う。

    「優秀な探偵の連絡先を教えてくれ」
    「これは俺の問題だから」

    泉はこの時「なぜ?」とも「何のために?」とも聞けなかった。
    それは、記述されている通り、「質問や疑問には一切答えるつもりがなく、自分の要望だけを押し通す。そういう力強さがあった」からである。
    癌に苛まれながらも、家族は自分が守るという強い意志が感じられる。泉はそれには逆らえなかったのだ。

    この小説を支えているのは、上記で述べた家族愛と台詞の奥深さ。
    そして、何と言っても春の存在だろう。

    春はガンジーと徳川綱吉を尊敬し、「非暴力主義」「生類憐みの令」の精神を深く心に刻んでいる。
    端整な顔立ちに卓越した芸術の才を持つ。自らの出生の事実を知ることなく人生を送ることが出来たら素晴らしい功績を残していてもおかしくはないだろう。
    ただ、彼は知ってしまった。
    そして、苦しむ。一人きりで答えのない迷路に迷いこんだかの如く彷徨う。
    深夜にごみ袋を蹴っていた場面。
    彼が何とかして自分の中の悪魔を鎮めようとしているのが伝わる。
    ここでのごみ袋の蹴り方の描写は、春の心境を凄く的確に表している。

    彼はこうも言っている。
    「達観したふりでもしていないとやっていけない」
    その通りだろう。
    フィクションであるこの作品で、最もリアリティを感じた台詞である。
    このリアリティこそ、他の伊坂作品とは異なる魅力をこの小説に与えていると言える。
    不思議なキャラクター、奇想天外なストーリー、機知に富んだユーモア。伊坂作品を支えるこれらの要素にプラスして人間の奥深さを描いたことで、「重力ピエロ」は一段階上の小説になった。

    勿論いつもながらの伊坂ワールドも存分に愉しめる。
    遺伝子記号、ホモサピエンス・クロマニョン人、ガンジー、バタイユなどのマニアックな情報をスタイリッシュに小説に組み込んでくる。
    ただ、「どうだ、俺は物知りだろ」と言うような強引さを感じさせない。むしろ心地よささえ感じる。

    小説を美しく彩る全ての要素が組み込まれているのが、「重力ピエロ」である。
    続きが気になるストーリー展開、惹きつけるキャラクター、絶妙な台詞のつながり。
    全てを兼ね備えた上で読者はストーリーに入り込んで行く。自分の人生観に問いかけながら。

    春は遺伝子に逆らうことで、泉の弟であること、父の息子であることを認めさせようとした。
    「遺伝子なんてクソくらえ」と叫ぶことで、家族の一員としての自己を確立させたかったのだろう。
    最後の最後で、春はガンジーの「非暴力主義」に反した行動をとる。性善説を信じることで、「非暴力主義」を訴え、世界を変えようとしたガンジーにもはや頼ることは出来なかった。自分でケジメをつけるしかなかった。

    内容云々に関しては、肯定も否定もしない。これは小説の中で起きたことであって、事実ではないから。
    小説とは、単に物事の「良し」「悪し」を確認し合うツールではないはず。

    言えることは、この小説が素晴らしいということ。その一点に限る。
    冒頭の、「春が二階から落ちてきた」から始まり、最後の一行、「春が二階から落ちてきた」まで。
    リズムを乱さず、焦らず、じっくりと読者を巻き混んでいく。

    約7年前にこの小説と出会ってから、伊坂幸太郎を知り、ひたすら彼の本を読み、他の作家との出会いにも繋がっていった。
    その意味で、この小説に感謝したいし、伊坂幸太郎にも感謝したい。

    私の中で最も影響を受けた小説「重力ピエロ」
    心から推薦します。

  • 再読。
    初読がかなり前なので、
    最後まで全然内容を思い出せませんでした。

    で、読み終わって思ったことは、
    やっぱり伊坂作品は面白いなぁってことです。
    中には正直よく分からん話もあるのですが、
    それを上回る魅力があるからどうしても読んでしまう。
    今回も出だしとラストのはまり具合が本当にすごい。
    ぴたっというか、かちっというか、絶妙なはまり具合なわけです。
    そして、キャラもいい。
    必要以上に熱かったり、優秀だったりしない。
    でも、じわりと染み込む温かさがある。
    この話の「父」しかり、「兄」しかり。

    新作もいいけど、再読もいいなぁ。

  • 多分初めて読んだ伊坂幸太郎。我ながら良い出会い方をしたと思う。

    どこでも言われてる事だけど、コレが一番好きです。伊坂幸太郎。
    はらはらして、胸がきゅっとなって、はっとする瞬間もあって、登場人物のことをすごく応援したくなります。好きになります。

    まず導入が恐ろしいくらいに美しい。導入を読んだ瞬間に、一瞬で恋に落ちました。

  • 兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは―。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。

    (感想)私にとっての伊坂さんデビューの本でした。最後の結末を読んでから、「ああ、そうだったのか」と納得してから、もう一度読むと、また新たな視点からの読書になり、二度楽しめました。
    ぜひ、読んでほしいという一冊です。

  • 「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」という言葉が印象的。
    遺伝子の話も面白い。

  • 兄・泉水と弟・春。スプリングつながりの兄弟は、実は片方だけ血がつながっていない・・・。
    兄弟がそれぞれ魅力的で、それを上回るほど両親も魅力的。ミステリー、というくくりになるのだけれど、なぞ解きはおまけでしかない気がする。

  • 26/11/29

  • 読み終えてから、いつもより少し重い重力を感じた。
    翌朝起きるとき、正直身体が重かった。
    普段忘れて生きていることがいっぱいあるなーと思った。でも全部はっきり覚え続けていたら、人は大半が不安定な日常を送ることになるんかな。
    忘れたり思い出したり。そこら辺のバランスをとるのもなんか難しいな。

  • *

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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