重力ピエロ

著者 :
  • 新潮社
3.82
  • (1699)
  • (1759)
  • (2223)
  • (203)
  • (39)
本棚登録 : 11857
レビュー : 1607
  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104596010

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 伊坂幸太郎が「家族愛」を描くとこうなる、という作品。
    誰1人作中人物は泣いたりしないし、自分を不幸と思っている人間もいない。
    相変わらず軽快なストーリー運びと機智にあふれる会話。
    なのに、どうしても泣ける箇所がいくつもあるのです。
    伊坂さんって、案外アツイ人なのかもしれませんね。
    タイトルの「重力ピエロ」は、空中ブランコを飛ぶピエロが一瞬だけ重力を忘れることが出来るように、どんな困難なことであっても必ず乗り越えられるという信念のようなものの例え。
    さて、主人公たちの「困難」とは何なのでしょう?
    どんな風に乗り越えたのでしょう?それが読ませどころです。
    話は「私」と言う一人称で語られます。

    「私」には「春」という名の弟がいる。
    春は、母親がレイプされた時に身ごもった子供。
    そして兄の私は遺伝子技術を扱う会社で働いている。
    ある日、その会社が何物かに放火され,春は町のあちこちに描かれた落書きと放火との関連性に気が付く。
    落書き消しの仕事をしながら、犯人を追う春と私。
    父親も参加する謎解きのなかで、関連性の秘密が明るみに出て来る。
    それは自分の出生の忌まわしさを否定しなければ生きていけない春の、危うい心の彷徨でもあった…

    この「春」というキャラクターの何と魅力的なこと。
    これまで読んだどの小説にも、こういうキャラは存在しませんでした。
    そして、兄「私」との仲には、読者でありながら嫉妬するほど。
    何よりも二人の父親の存在は、作品中の言葉を借りれば「賞賛に
    値します」。
    春を産むことを決定し、待ち望み、歓迎した父。
    自分を哀れむでもなく、ナルシストでもなく、穏やかに春を慈しんだ父。
    終盤、何もかも春の仕業と分かっていて、なお手を差し伸べ握りしめて言います。
    「お前は俺に似て嘘が下手だ」。
    「遺伝子なんか何だ、血の繋がりが何だ」と、歓喜の声をあげたくなる感動の場面です。
    春の取った行動には賛否両論あるでしょうが、あくまでも小説ですから、その結論を導くまでの過程を楽しめればいいかな。
    罪と罰を扱う重いテーマでありながら、一貫して明るく前向きな筆致
    は見事と言えます。

    作品中に膨大な量の知識が詰め込まれていますが、場面展開も早
    く、何より主役キャラの魅力で飽きずに読み進められます。
    例によって、他の伊坂作品とリンクします。今回は「オーデュポンの
    祈り」。順番に読んで来て良かった。

  • 「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」
    という台詞がでてくるが、伊坂さんの小説の書き方もこれに即していると思う。

    深刻なことがユーモアに包まれて文章にされる。わたしは伊坂さんの文章のそこがすきだなー。

  • 春が二階から落ちてきた。

    冒頭で心惹かれた人は多いのではないだろうか。初めて読んでから十年経つが、あの時の感動は未だ色あせず覚えている。今でこそエンターテイナーとして多くの人に読まれている伊坂幸太郎の代表作とも云える今作は、当時私は一番好きだった。読了した時に改めて、春が二階から落ちてきた、とそれを読むと鳥肌が立った。とりつかれたように伊坂さんが好きになったきっかけでもある。
    父と兄と、母がレイプされて生まれた弟の、ミステリを交えた家族の物語と聞くと重たいようなイメージを持つが、そこは伊坂幸太郎の筆で実に軽快にそれこそ春のように爽やかに描かれる。論じていることは重たい議題のはずが、兄の視線によって描かれるそこには何よりも信じられる家族の形がある。むしろこの家族を信じられるからこそ、ミステリとしての芯が薄くてもこの小説を味わえるのだと思う。
    今ではあれもこれも名作と読まれる伊坂さんだが、魔王が出る前の初期の中では一番の傑作と云える作品だと思う。

  • 「春が2階から落ちてきた」頭にこびりついて離れない一節。悔しいなあ。

  • 初伊坂幸太郎。面白いんだろうなーと読んでやっぱり面白かった。そういう意味では意外性に欠けていると言えなくもない。
    ミステリーとしては少し物足りなかったけど、キャラクターがとにかく魅力的で引き込まれる。
    黒澤が気になったので、次はラッシュライフだー

  • 伊坂は好んで読む。
    本作は、彼の作品の中で1、2位を争う出来だと思う。

    白黒つけるのが難しいテーマを扱うものは、どんなジャンルでもたいていおもしろい。

    が、伊坂は洒落たユーモアがあるので、暗くなりすぎない。
    彼の長所だ。

    弟の「春」という名前が、とても気に入った。

  • 好きな本です

    わたしが読んだはじめての伊坂さんの本です
    それ以来好きな小説家の一人です

  • 春も泉水も最強の兄弟で最強の家族だ。

    知的で小難しく遺伝子という専門的な内容も入り組んでくる内容なのだけど、読みやすく早く先を読みたい衝動にかられる。


    春が気になる...。春の苦悩が・・・。
    春、大丈夫か・・・って読みながら心配になる。

  • 初めて読んだ伊坂さんの本。

    重いテーマなのにすがすがしい。

    読後、いろいろ考えさせられる。

  • 春が二階から落ちてきた。

著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

重力ピエロのその他の作品

重力ピエロ (新潮文庫) 文庫 重力ピエロ (新潮文庫) 伊坂幸太郎
重力ピエロ (新潮文庫) Kindle版 重力ピエロ (新潮文庫) 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の作品

ツイートする