ホワイトラビット

著者 :
  • 新潮社
3.73
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104596072

作品紹介・あらすじ

楽しさを追求したら、こういう小説になりました。最新書き下ろし長編は、予測不能の籠城ミステリーです! 仙台の住宅街で発生した人質立てこもり事件。SITが出動するも、逃亡不可能な状況下、予想外の要求が炸裂する。息子への、妻への、娘への、オリオン座への(?)愛が交錯し、事態は思わぬ方向に転がっていく――。「白兎事件」の全貌を知ることができるのはあなただけ! 伊坂作品初心者から上級者まで没頭度MAX! あの泥棒も登場します。

感想・レビュー・書評

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  • 因果応報。自業自得。自分が今まで行ってきたことが、自分にのしかかって、初めて今まで自分がしてきたことが酷いことであったと自覚することになる。と、いうのがこの物語の犯人・兎田孝則である。

    ずっと読んでみたいと思っていた作家の作品であったのだが、物語が時系列に進んでいかないため、解決への方向性を推測できず、言葉1つを読んで『もしかして、前やにおわすような描写があったのか?』と、思うことが多く、結果的に3回も読んでしまった。

    本作は、『白兎事件』の籠城事件の主犯・兎田孝則とその妻・綿子、空き巣で探偵の黒澤、黒澤の空き巣仲間の中村と今村、籠城された佐藤親子、コンサルタントの折尾豊(通称オリオオリオ)、誘拐ベンチャー企業の社長・稲葉そしてSITの夏之目がおさえておきたい登場人物である。

    また、本作では『レ・ミゼラブル』と『オリオン座』が物語構成のKeyとなっている。

    本文での空き巣・今村の言葉で『レ・ミゼラブル』を「あの小説って、ところどころ、変な感じなんですよね。急に作者が『これは作者の特権だから、ここで話を前に戻そう』とか、『ずっと後に出てくるはずな頁のために、ひとつ断っておかねばならない』とか、妙にしゃしゃり出てきて」とあり、この描写に吹き出してしまう。なぜかは、本作を読めば明らかであるが、本作ではいたる所で、作者の特権が伺えるのだ。ただ、これが本作の特徴であるのか、作者の特徴であるのかは、私がこの著者の作品を初めて読んだのでわからない。

    本作においては、この『レ・ミゼラブル』手法あるいは『作者の特権』手法は明らかに特徴の1つで、普通は読者が行間を読むところをあえて、作者あるいは作者の代わりの登場人物が自分の立場で行間を説明している。

    そして、もう1つの文章構成のKeyに『オリオン座』がある。オリオン座のベデルギウスと地球との距離は640光年である。もし、ベデルギウスが爆発すると太陽が2つあるような明るさになるそうだ。ただ、ベデルギウスがたとえ今日爆発しても、私はそれを知らずに死んでいく。なぜなら爆発から640年経たないと爆発したことが分からないからだ。
    これがまさしく本作の展開の手法で、「すでに起きてきる出来事も、時間がずれないと見えないわけだ」と、さりげなく手法の説明がされている。この『オリオン座』手法は時系列に物語が進んでいくのではなく、現在の描写後に現在に至った過程の説明が後追いで描写されている。

    この2つ『レ・ミゼラブル』手法と『オリオン座』手法が、本作の文章構成のKeyであり、私の場合は、この構成の理解のために3回も本作を読むことになった。ただ、これを知ることで、展開、結末を無理なく理解することができた。


    偶然ではあるが、今年の初めにテレビで、冬を代表するオリオン座の「ペテルギウス」が昨秋から急に明るさが3分の1になったと聞いた。ペテルギウスはもともと明るさが変わる変光星ではあるようだが、いつ超新星爆発が起きてもおかしくないようである。爆発の前兆かもしれないとのことだか、万一、私が生きている間に640年前の爆発が地球に届いたならば、その時、私は本作を必ず思い出しているだろう。

    『レ・ミゼラブル』、『オリオン座』の説明は、本作の手法のためだけの登場て話はなく、これらの意味するところが、名言として登場する。例えば、SITの夏之目の亡くなった娘・愛華が残した「海よりも壮大な光景がある。それは空だ。空よりも壮大な光景がある。それは、…」は、オリオン座、つまり宇宙に引っ掛けて出されているようで印象的であり、私には名言の一つとして記憶された。

    星座と言われても、夜空を見上げて分かるのは多分、「北斗七星」くらいで、今まで関心がなかった。そのため本作で「オリオン座」とそのギリシャ神話の『サソリが苦手なオリオン』や、最後でもチラっと、書かれている『月とオリオンの物語』にそそられ調べることで使うことがあるかはわからないが、知識が増えたので、読後の満足感はかなり高い。

  • 『仙台での人質立てこもり事件、誰も白兎事件とは呼ばないその事件』の一部始終とそのからくり、顛末を描いた作品。
    伊坂作品ではお馴染み、泥棒の黒澤が登場するのだが、もう予想以上の大活躍。

    ことの始まりは誘拐ビジネスグループの末端、誘拐担当の兎田がグループの資金を持ち逃げしたコンサルタント・折尾を見つけて連れてこいと、恋女房を誘拐したリーダーに命じられたこと。
    兎田としては折尾を見つけてリーダーのもとに連れていき、愛する妻と交換すれば無事任務完了…のはずが、何故か立てこもりをしてしまうことになる。

    伊坂さんの作品は一見本筋とは無関係に思える蘊蓄話や世間話、またはちょっとした失敗や脱線がきちんと後で繋がってくるから楽しいのだが、その分気を抜けない。
    例えば泥棒見習いといったところの今村が五年掛かって読んだという『レ・ミゼラブル』の作者が『妙にしゃしゃり出て』くる手法も本編に取り入れられるし、折尾が好きなオリオン座の蘊蓄も上手く利用される。

    何と言っても進退極まった兎田の窮地を救うのが立てこもられた側の被害者というのが楽しいし、そこは伊坂作品だけに立てこもられた被害者側も一筋縄ではいかない。

    そして立てこもり事件を解決する側の警察、事件のそもそもの原因である誘拐グループリーダーと拉致された兎田の妻、黒澤に何かと迷惑を掛けているのにそう感じない今村とその親分の中村というオトボケコンビ、視点は目まぐるしく変わってバタバタしているのに目が離せない。
    パズルのピースを嵌めていくというか、寄せ木細工の箱を開ける感じであっちを寄せて、こっちをずらしてって感じでやがて真実が見えてくる。
    この辺の巧妙さは伊坂さんの真骨頂。
    結局序盤から読み直したりして大変だけど、そうしたくなるのだから仕方ない。

    常に冷静な黒澤だが、小さなことでも疎かにしない故に巻き込まれたり、一見凪のように落ち着いて見えてその実後で振り返ればやっぱり慌ててたのだな、というところを見せるのは面白い。

  • 伊坂さんの籠城(w)エンタメ。

    仙台の住宅街で人質立てこもり事件が発生します。
    通報を受けて、宮城県警の特殊捜査班(SIT)が出動しますが、犯人の要求は“折尾”という男を捜し出して連れてこい、というもので・・・。

    とある籠城事件(誰も呼ばないけど“白兎事件”)を巡る顛末が軽快な語り口で綴られている本書。
    いうても“人質立てこもり事件”ですし、犯罪グループは関わっているし、SITの責任者はなかなかの闇を抱えているし・・と、何気に重い内容のはずなのに、終始人を食ったような展開で、言うたらコメディを見ているようなドタバタ感があって、結果楽しめちゃうのが不思議ですね。

    誘拐グループに属する兎田は、愛する妻・綿子ちゃんを人質に取られて、交換条件として件のグループの資金を持ち逃げした謎のコンサルタント・“オリオオリオ”こと“折尾”を探す羽目になったのですが、図らずも“籠城事件”に発展してしまい、さらにその“籠城”することになった家には、ある“後始末”の為に空き巣(ま、泥棒)の黒澤も居合わせていて・・と、ドンドコややこい方向に進んでいくのですが、中盤で「ん?ちょっと待て待て!」と、今までの流れを遮るような事が判明し、ここで、完全にミスリードされていたことに気づいて啞然としました。
    「ちょ・・どこから“騙されて”いたんよ!」と慌ててページを遡る私は、もう作者の思うツボってところでしょうね~。
    後半は、この“事件”が一体どんな状況だったのか?と、いうその背景が伏線回収のごとく、明かされていきますので、“確認”の為ページを行ったり来たりで大忙しでしたw。
    そんな訳で、綿子ちゃんに対する理不尽な暴力シーンはいただけませんでしたが、全体的に楽しく読ませて頂きました。

    で、伊坂さんといえば、様々な蘊蓄や、ニーチェだったりシェイクスピアのような名作からの引用を作品内に散りばめることでお馴染みなのですが、今回は“オリオン座”の蘊蓄と『レ・ミゼラブル』からの引用がテーマ的に多用されておりました。
    個人的には、“地球と640光年離れているオリオン座のペテルギウス(今見えているペテルギウスは640年前の光)が、爆発して消滅しても、それが地球で解るのは640年後(もしかしたら、今現在既に消滅しているかもしれない)”という蘊蓄が、スケールが大きくて好きでした。
    因みに『レ・ミゼラブル』については、中学生の頃、『ジャン・バルジャン物語』という、『レ・ミゼラブル』のティーンズ版みたいな内容の本を読んだのですが、それで読んだ気になっていたので、いつか腰を据えて、“ちゃんとした方”を読んでみようかな・・と思った次第です。

  • 人知れず起きた立てこもり事件を軽やかに面白おかしく。
    伊坂ワールド全開です。
    黒澤が出てくるのが嬉しいですね。

    誘拐をビジネスとして、無理がない程度に行っている犯罪組織のメンバー、兎田。
    若い起業家によるベンチャー企業のようなものだという。
    ところが、経理の折尾が資金を持ち逃げ、若い兎田は最愛の妻・綿子ちゃんを誘拐されてしまいます。
    めぐりめぐって不本意ながら、立てこもり事件に発展‥?
    たまたま空き巣に入った泥棒や、いろいろな人物が絡み、え~っと誰が誰なんだっけ‥
    一つ一つ、楽しみましょう。

    オリオン座について蘊蓄を傾けるのが大好きというモチーフや、「レ・ミゼラブル」の小説を読み切った人物がいて、作者が「レ・ミゼラブル」風に介入してきたりと、一癖あるスパイス付き。

    「レ・ミゼラブル」は19世紀の長い小説で、貧しさや制度の重圧などに苦しむ人々を描いた文豪ユーゴーの重厚な作品だけれど、娯楽の少なかった当時の人気連載でもあります。ミュージカルや映画になっているように、ドラマチックで面白いんですよ。
    私はたまたま岩波文庫全巻読みました! そういう人、どれぐらいいるんでしょうかね(笑)
    軽妙なこの作品とはある意味では正反対ですが、面白いという点では通じるものが?
    文化が爛熟した上での軽みとでもいいましょうか。時代は変わりましたね~☆

  • まさかの黒澤大活躍!
    ここも、ここも!?と思いつつも、もっかい振り返って読み直す気力がないので、名残惜しいですが次の作品に移ります(笑)

    黒澤だとわかった時、警察とやりとりしてるシーンは抱腹絶倒!どんなキャラなんだー!
    きっとみんな、レ・ミゼラブル読みたくなるんだろうな。これもまた、気力がないのでまた別の機会に…

    • 大野弘紀さん
      買いました。
      まだ読んでないです。
      黒澤に会いたいので、読むのが楽しみです。


      いくつものいいね、
      ありがとうございます。
      ...
      買いました。
      まだ読んでないです。
      黒澤に会いたいので、読むのが楽しみです。


      いくつものいいね、
      ありがとうございます。
      私のレビュー棚は、
      詩人が書いた本の感想、についての図書館のようになっているので、もしよかったら、お時間の許すときに、遊びに来ていただけると、嬉しいです。
      2020/06/27
    • naonaonao16gさん
      大野弘紀さん

      こんばんは。コメントありがとうございます!
      出版されてすぐ単行本で読んだのですが、最近文庫になったようですね。忘れかけ...
      大野弘紀さん

      こんばんは。コメントありがとうございます!
      出版されてすぐ単行本で読んだのですが、最近文庫になったようですね。忘れかけているので、再読しようか悩んでいるところです。

      本棚拝見させていただいております。
      わたしはBUMPが大好きなので、本棚に並んでいるアルバムを見てとても嬉しい気持ちになりました^^
      2020/06/27
  • 久しぶりの伊坂幸太郎さん。そして黒崎。

    ワチャワチャな感じなのに整然として〜さすが伊坂さんなストーリー。サラッと残酷な描写も…あぁ伊坂さん!
    終盤、ピースがパタパタ…とはまるように、それまでの各々の状況が一つに収まった。今村、中村はそこにいたのね。

  • おもしろかったです。
    黒沢は、他の作品にも出てくるようなので伊坂さんの作品をいろいろ読んでみたいと思いました。

  • はい、いつもの幸太郎劇場!面白く読ませていただきました。
    黒澤さん、夏之目課長、どんくさ中村・今村ペア、存在感ありました。

    ペテルギウス、リゲルを知ったから、早く冬になれ!オリオン座みたい!と思う。 
    そして、ペテルギウスってアスペルギルスに響きが似てるなとふと思う初夏です。

  • 誘拐組織の一員だった兎田だが、なんと妻が誘拐されてしまう。身代金ならぬ身代人は組織の資金を持ち出した男。兎田は男を探しているうちに、仙台で籠城事件を引き起こしてしまう。妻は取り返せるのか。。。
    時間軸や場面が変わるものの、視点を変えているのでテンポ良く読める。犯罪者ばかりの登場人物の掛け合いも良かった。いつもながら、胡散臭い人間がなんとなく正論を言っているような気にさせるのがうまい。

  • 伊坂幸太郎さん作品は映画化しやすいものが多いですが、この作品も映像化イメージできます。誰が黒沢役するんだろう。。竹野内豊さんがいいなあ。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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