裁判官が日本を滅ぼす

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104605019

感想・レビュー・書評

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  •  論理展開が強引です。結論先にありきで書いています。<br>
     個々の事象・判決についての考察はなかなか鋭いところがありますし、一部裁判官の態度などを取り上げて問題提起するところは良いのですが、作者はそうした一部の異常を必要以上に拡大して、全ての裁判官がおかしいというような結論に持っていくのです。<br>
     「これこれこういう裁判官がいる。こんな裁判官ばかりになってしまっては日本はおしまいだ。だから裁判官教育はしっかりされなければならない、国民の不断の監視が必要だ」という流れなら、作者の取り上げた判決などから導くことはできると思うんですよ。<br>
     ところが作者の論理展開は違います。<br>
     「これこれこういう裁判官がいる。全ての裁判官がこうした裁判官と同じだ。判断者としての理性にかける裁判官がいる。だから全ての裁判官が、判断者としての理性に欠けている。このままではやがて彼らは日本を(具体的には表現の自由を殺すことによって)滅ぼす」という論理構成をとっているのです。つまり、何故、一部の裁判官の行為・判断・能力が全ての裁判官に当てはまるのか、そこについては全く触れておらず、当然ように、一部の裁判官の例を全ての裁判官にあてはめているのです。<br>
     そのくせ、ある判決を批判するのに、上級審の判決などを引き合いに出しているのだからむずがゆさを感じます。例えば「Aという判決はおかしい。Bという上級審判決はその結論をひっくり返した」ときて、作者自身はB判決と同じ考え方をしていると述べているのに、結論部分で「全ての裁判官が真実を見極めることなどできなくなっている」というように持ってくるのです。B判決を出したのも裁判官でしょ、ってつっこみたくなります。この論理の流れからくる結論としては「A判決のような真実を見極めることができない裁判官がいる」ということになるはずです。そこから展開して、こうした裁判官を糾弾する、こうした裁判官が出ないようにこうすべきだ、と言う風に話を持っていくのなら納得できるのですけどね。<br>
     はっきりいってこれでは論評としての意味がありません。<br>
     他にも、裁判官が悪い、と断じているところが、実は法制度の問題から生じているところがあるのに、その点に言及していないなど、切り込み方に首をかしげたくなるところが多々あります。<br>
     『裁判官が日本を滅ぼす』という扇情的なタイトルにしたいが為に、強引な論理展開をしているようにしか思えてなりません。<br>
     批判するにしろ、問題提起するにしろ論理的であるべきだと思います。<br>
     この本が以前話題になったと聞きますが、批評家とかちゃんと読んだのでしょうか。確かに取り上げている事案などは一見の価値があるのですけど、この論理展開ではね・・・。<br>
     それから『無罪病』といって裁判官の判断に疑問を呈している点ですが、有罪率が99%の日本でそれを言うのか?という気がします。<br>

著者プロフィール

作家、ジャーナリスト。1958年、高知県生まれ。中央大学法学部卒業後、新潮社入社。『週刊新潮』編集部記者、デスク、次長、副部長を経て2008年独立。『この命、義に捧ぐ─台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、後に角川文庫)で第19回山本七平賞受賞。主な著書に『死の淵を見た男─吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫)、『日本、遥かなり─エルトゥールルの「奇跡」と邦人救出の「迷走」』(PHP研究所)、『なぜ君は絶望と闘えたのか─本村洋の3300日』(新潮文庫)、『甲子園への遺言』(講談社文庫)、『汝、ふたつの故国に殉ず』(KADOKAWA)、『疫病2020』『新聞という病』(ともに産経新聞出版)、『新・階級闘争論』(ワック)など。

「2022年 『“安倍後”を襲う日本という病 マスコミと警察の劣化、極まれり!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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