サンカーラ: この世の断片をたぐり寄せて

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104622023

作品紹介・あらすじ

地震で揺れ続けるこの日本に生きているということ、原発のある国に暮らしているということ…ブッダの大きなこころを仰ぎ見つつ、無常の世をさまよいながら紡ぐ、日常のものがたり。

感想・レビュー・書評

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  • 年末から年をまたいで読み終わりました。

    震災、原発、水俣病、兄の自殺、生きること、死ぬこと。
    小説と思ったら、著者のノンフィクションのエッセイでした。

    デビュー作「コンセント」を読んだ時と同じ強いインパクトを受けました。

    悩んで考えて、さらに考えて。ランディさんは思考のスペシャリストだ。僕なら途中で訳がわからなくなってあきらめてしまう思考も、とことんまで考え抜く。
    正しいことについて考えると、どんどん訳がわからなくなってしまうものなのに。
    だから、不意に聞かれた質問に対してもとってつけたような返しはしない。ずっとそのことについて考えてきたんだなと思わせるハッとさせる言葉がでる。

    もっと、考えて、勉強しよう。
    自分にとって大切なものは、今自分が一番大事だと思っていることの真逆のことかもしれない。

  • う~ん、自分の周りに当たり前のように存在している日常について、今一度立ち止まってじっくり考えさせられる一冊でした。
    最近読んだ『空気と世間』とリンクして、日本という国にいると、
    人生というものは演劇という感が強いのかな~と感じたりしています。そう、広く深くとても長い演劇なのだ。みんな舞台で踊ったり歌ったり笑ったり泣いたり。
    そんな中であることを認識した上で、それでも自分はどう生きたいのだろう。どうしたいのだろう。そういうことをちょっとずつ考えてみることが大事なのかな~と思う今日この頃です。

  • 読了後、ぐったりとした疲労感があった。決して、重苦しいとか落ち込むとか、そういった疲労感ではない。ただ、いまここにいる自分に留め置かれる重さがあった。言い過ぎず、言い足りず、できるかぎり自らが語れる範疇で語ろうとするランディさんの姿勢がそう感じさせたのだと思う。

    沈黙を守ることについて、ひとりで考えることについて、何ともいえないけれど、たゆたうように、ぼんやりと考えています。

  • まず知るべきだということ、表面だけでなく。そして考える。自分の脳で考えること。世の中にはニュースが溢れていて、わたしはそれ等を取捨選択しかしていないのだと、改めて思い知らされた。
    共感を求めて書かれてはいないのだろう。むしろ「これはわたしにしかわからないことだけれど」と立入禁止の札を貼られているような。けれどそれは拒絶ではなく、それ程に、個人としての内奥を描かれていると感じる。

  • 田口ランディの「思うところ」が生のまま書かれている。その中で、
    『あなたが考え感じたことは、あなたの肉体が消えた後も残るからだ。
    人間の微細な感情は肉体が消えたあとも残響のように残り、すべての人間のなかに染み込んでいく。』というところが良かった。

  • 良かった。すごく良い本です。
    私も、母が急に逝ってしまって3ヶ月…
    この年末年始に、この本にじっくり向き合うことで
    本当に深い時間を過ごせました。

    ランディさんの本は、読むと必ず

    「この、自分と同じ時代に、
     こういう思いで生き、
     こんな言葉を語っている人がいるんだ。

     知れてよかった。
     このことを知らずに終わらなくて
     本当に良かった…」

    と思うことが書いてあります。

    知らないことには、何もできない。

    ランディさん、ありがとう。
    これからもランディさんの本を
    読み続けながら、
    自分自身も心の対話、大事にしていきたい。


    ※以上のこと、ブログでもう少し深めて書いてみました。
    http://sakura-miyuki.jugem.jp/?day=20130107

  • 時間をおいて何度も読み返したいほど心に響く言葉がたくさんあってハッとした。地震があってから感じていたけど誰にも言葉に出していない、言い表せなかった感情を代弁してくれているような気がしている。
    「4 沈黙」で私たちが失ったもののは二度と取り戻せないのだと改めて思い涙が出た。
    「6 魚の泪」の最後で「人の意見を言うのはたやすい。だがそんなものこそ、意味がない。」という文に深く深く反省した。手に入れた情報を自分の意見にしてしまっているなあと。

  • 誰かすごい人が現れて私を見出してくれないかしら。成功者が私を見つけて、私を同じ場所まで引き上げてくれないかしら。そういう人が現れたら、私はきっとすごい実力を出せると思うのだけれど、あんな高いところまで一人で昇って行くのはちょっと無理だわ、
    自分の内側を見ることを知らなかった。だから、自分なは何の問題もなく、問題があるのは外側の世界だと思い込んでいた。

  • 田口さんの言葉が深く胸をえぐる。
    きれいごとではすまされない(すまさない)人間の本質と自分のエゴをここまで書き切ることができるのは、本当に驚嘆する。スピリチュアルな部分も無理なく、すとんと腑に落ちて、田口さんの本を読んで以来、抵抗がなくなった。自分の先を少し変えてくれたような、そんな本。(レビューを書くのが遅くなり、内容はしっかり思い出せず。おりに触れて読み返したい)

    以下心に留った箇所
    -----------------------------------------------
    102
    内向的な人と一緒にいるとき、私はより外向的になってしまうのかもしれない。

    113
    社交というのは、いかに無意味な内容を楽しくしゃべることができるか、ということなのだ。そして、社交ができない人は、無目的なくだらない会話ができない人は、常にひとりぼっちで輪に入ることもなく、自分が誰かわからない混乱の中で常に暗い顔をしているのだ。

    ---------------------------------------------

  • ただの小説だと思って読んでいたら、エッセイっぽい話でした。
    冒頭で震災の話になったので、あぁ、この類か。嫌だな。と思ったんですが、少数派の意見で書かれていたので完読しました。

    震災があってから世間が震災震災、復興復興と言うのに飽き飽きしてました。

    私が震災、戦争の話が嫌いなのは、この著者と同じような意見です。

    戦争で放射能を恐れながら原発頼って生きてきたのに、いざ身の危険を感じると反対運動をする。
    その世の中に震災当時からイライラしていたので、とても共感する部分が多かったです。

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著者プロフィール

作家。

「2015年 『講座スピリチュアル学 第4巻 スピリチュアリティと環境』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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