残夢の骸 満州国演義9 (満州国演義 9)

著者 :
  • 新潮社
4.22
  • (13)
  • (13)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 81
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104623105

作品紹介・あらすじ

満州帝国が消えて70年――日本人が描いた“理想の国家”がよみがえる! 今こそ必読の満州全史。権力、金銭、そして理想。かつて満州には、男たちの欲望のすべてがあった――。事変の夜から十四年が経ち、ついに大日本帝国はポツダム宣言を受諾する。己の無力さに打ちのめされながらも、それぞれの道を貫こうとあがく敷島兄弟の行く末は……敗戦後の満州を描くシリーズ最終巻。中毒読者続出の人気大河ロマン、堂々完結。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 満州国演義シリーズ第9作。太平洋戦争もいよいよ日本軍に不利な戦局になって来る。サイパン島陥落、マリアナ沖海戦での敗北、インパール作戦の失敗、硫黄島陥落、本土爆撃の開始。東条内閣は総辞職し、小磯内閣が誕生。南方ではフィリピンに米軍上陸。マニラでの敗北。そして戦艦大和は撃沈される。ヒトラー、ムッソリーニは死亡し、三国同盟で残っているのは日本だけとなる。沖縄戦によって多数の死傷者がでても日本は戦いをやめない。そこでトルーマン大統領は2発の原爆を投下することを決意。御前会議によってポツダム宣言を受諾、玉音放送で敗戦となる。そのような時代背景の中、敷島兄弟はそれぞれの運命をたどる。詳細→
    http://takeshi3017.chu.jp/file9/naiyou10147.html

  • 長い長い話を読み終えた。途中何度か読むのを中断したが読み終えて本当にホッとしている。初めて手に取った作家さんで他の作品も読もうと思う。4人兄弟の人生に触れる事が出来てよかった。大変な苦労があったんだろうなと痛感する。

  • 船戸与一さんの遺作9巻目で完結。本当は10巻まで続くはずだったそうですが、ご本人の病状のため9巻になりました。
    戦争終結からソ連侵攻、シベリア抑留と、ほとほと不条理な時の流れを四兄弟の生死を絡めて書ききっていました。
    惜しい人をなくしたと思います。
    読者歴28年。
    本当にお世話になりました。

  • 船戸与一絶筆。満州はソ連の侵攻により崩壊。関東軍の卑劣、シベリア抑留、国共内戦の序章、八路軍への協力と反抗、など満州の断末魔を背景に敷島四兄弟と血族の最後が彩られる。

  • 終わった。長かった満州国演義が終わった。非常に読みにくい作品だったが膨大な資料調査の上に書かれていることは強く感じられた。船戸与一の作品は日本を舞台にしたものより南米や中東を舞台にしたものが好きだが、亡くなってしまい、もう新しい作品が読めないのは悲しい。

  • 2015/09/06完讀

    最後一卷必須收尾,但作者還是寫得相當有耐心,相當冷靜地安排故事的進行。

    1944年夏天,戰局走下坡的態勢已相當明顯,稍令人振奮的台灣沖航空戰也只是誤傳,雷伊泰之戰是讓特攻變成潮流的契機。軍部的指揮系統已經瀕臨崩潰,東條下台之後換成小磯政權依然沒有好轉,關東軍不斷被派往他處,留下來只剩下來屯墾的男性被迫組成的外行軍隊。日本政府不斷試探和平停戰的牽線人,完全無視雅爾達密約情報(據說瀬島龍三把情報壓下?)和蘇聯在歐戰結束之後大量移動軍隊東進的情報。廣島長崎的悲劇之後,蘇聯軍果然對日宣戰,軍隊開進滿州,也造成許多悲劇。

    太郎鎮日無所事事守在新京(長春),終究是被蘇聯帶往西伯利亞,在洗腦和告發的誘惑中最後終於自殺身亡。德藏曾告訴太郎兩人其實是同一祖父的從兄弟,這個神秘的特務一開始似是找敷島家麻煩,後來反而對敷島家產生情份。德藏也在同一勞改營中但卻相當有氣骨拒絕一起歌頌史達林,最後還在太郎為了紅茶和燒菓子出賣營友時庇護他,最後豪氣干雲地走出勞改營被掃射而死。一開始我對他有陰溼、令人不寒而慄的印象,反而他的最期是最令人敬佩的,其實最有骨氣的人反而是這個特務。太郎和德藏在勞改營這個段落是我覺得本卷寫得最鬼氣逼人的部分。至於三郎,戰後決定要尋找自己的死所,決定加入通化的日本人及國民革命軍連攜的蜂起,雖然被諏訪牧彦勸阻(本來覺得是個小角色,其實這個人才是最威的,講的話都很有道理),告訴他計畫已經被八路軍查知,活下去才是真正負責任,但是還是執意參加,也在任務一開始馬上就被伏兵掃射身亡。這卷裡面有許多將軍自決,但或許活下來更需要勇氣!至於四郎身為關東軍軍屬,上司將他解職讓他逃離蘇軍的逮捕,最後在卷末帶著三郎救出的小孩回到廣島爺爺家,隻身再離開。四兄弟裡最充滿迷惘的他反而是最後活得最堅韌的。

    作者提到,日本的民族主義在幕末吉田松陰等人思想的土壤及明治維新開始發芽,在明治期開始飛翔,但在一次大戰後國內外的亂氣流中開始失去方向而迷走,最後則在太平洋戰爭失墜;這一切都圍繞著滿州諸問題開展,昭和前期的歷史是無比地濃密,凝縮了一切,也是他之所以想要立基於滿州國,以四個兄弟的角度來寫這段敘事詩的原因。不過他也提到一點,隨著時間的進行,故事的牧歌性也漸漸消滅,因為戰爭型態不斷地在改變,點到線到面的對抗,最終演變到近無差別爆擊,近代戰的宿命就是已經沒有浪漫主義的空間了。這點我相當同意,作者這麼誠實地指摘,這也是我在作品裡面強烈感受到的。五族共和的理想,青龍攬把的馳騁,漸漸變成人們在時代的巨輪裡無所事事、無能為力,到最後被大規模地屠殺。前一天還在讀平家物語,那個浪漫地會互報名號、在箭上刻自己的名字、尊敬並哀憐敵人的物のあわれ的心,跟這個時代的戰爭相較,雖然同樣是殘酷的,但還是帶著牧歌性,然而現代戰爭則是蕩然無存,只剩下無差別的為屠殺而屠殺的宗旨,所有人陷入無能為力的困局,只剩下互相欺瞞和自保的能力。結局安排確實如本卷卷題,是一場殘夢之骸,主角們也僅餘遺骸,主角們的妻女是否平安?沒有人知道,一切都過去了,留下來的人不管怎麼孤獨都要活下去,在這個敘事詩的最後,作者很冷靜地將人拉回到現實。

    轉眼間也追這套書追了八年,好長的一段路。闔起末卷,心中有許多想法翻騰。相較於之前大量閱讀的英美二戰書籍那種正義必勝的高揚感,戰爭結束七十年,我卻不斷想起,台灣人被剝奪、被迫遺忘的歷史記憶,那場大東亞戰爭身為戰敗國民的記憶。書中所有上演的荒唐事,所有的政治角力與風雲,身不由己地被捲在浪潮中的小島。那些記憶正在永遠地失去,可能父祖們就在這本書裡的高砂義勇隊,南洋等地登場,在虛擬的敘事詩裡面留下了一點真實的足跡吧。

  • 2012年1月より3年8ヶ月にて遂にシリーズ完読。
    理想の国満州国をメイン舞台に昭和の20年とその間の戦争に突き進んでいった日本国家の愚かさ。日本はこの歴史を正視し二度とこの悲劇を繰り返さないよう後世に伝えなければならない。それが船戸与一の思いでもある。

    今年亡くなった巨星船戸与一。この最終章でも船戸ワールドは炸裂。青春時代から還暦になるまで楽しませてくれた。ありがとうございました。合掌。

  •  船戸与一の遺作である。病躯で書いたためか、それともストーリーの必然か、しだいに諦念に覆われてこの物語は終わっていて、今までの乾いた風の吹きすさぶ感じのする船戸与一作品とは一線を画している。
     主人公も時代の大波に流されるままで、主人公ならではの特別なエピソードは創造されていない。本当の主人公は時代そのものであり、その流れを敷島4兄弟で表したと考えれば、それも正しい描き方なのだ。
     小説は歴史の奴隷ではないが、歴史もまた小説の玩具ではない、という筆者の想いは、この作品で見事に達成できていると思う。

  • 船戸与一氏の 満州国演義9 残夢の骸 を読み終わった。

    長い長い満州国の物語、三四年かかったろうか?

    敷島家四人の兄弟を通して満州国を描く壮大な物語、

    作者の逝去を聞き、作家の生き様に想いを馳せるのみだ。

    巻末の参考文献に圧倒される。これだけの文献を読み込んで物語は書き継がれるのか!

    ナポレオンの箴言

    歴史とは暗黙の諒解の上にできあがった嘘の集積である。

  • ついに完結を迎えるシリーズ9冊目。例によって歴史的事実は登場人物の会話として語られ、創作部分は三人称で記述されという具合に書き分けられている。そのあたりの背景については作者のあとがきで触れられている。山のような資料と格闘して書くのは苦痛だった。歴史的な事実といわれていることのどこまでが真実なのかよくわからくなったという記述が印象に残る。圧倒的な劣勢状態から敗戦にいたる日本の大混乱が痛々しい。体調の不調を伝え聞き、あきらめかけていた完結編を命がけで書き上げて、他界した作者に感謝と黙祷を捧げたい。

  • 船戸さんの大作『満州国演義』完結。父方の祖父母は満洲へ渡って引き上げを経験しているので、興味深く読ませていただきました。1巻から図書館利用だけど文庫化されたら買うぞ!
    しかし、『不毛地帯』の主人公のモデルの一人とされる瀬島参謀の書かれ方は少し驚いた。

  • 満州国演義の最終巻。

    本巻の中盤で終戦になり、満州国は消滅するのですが、その後の満州国に残された日本人たち、中国の迷走まで、がっつり描ききられたと思います。
    2007年の第一巻から8年目にして完結し、作者はもちろん自分にもお疲れ様といいたいです。
    途中連載から描き下ろしになったり、1年以上の出版の空白があったりと、やきもきしながら読み続けて良かったです。
    ただ、途中から、国際情勢や戦況や国内情報が同じ解釈で、各兄弟の章に出てくるのはマイナス点でした。
    同じ事実をさまざまな角度でとらえてこそ、当時の情報の曖昧さが浮き彫りに出るのではないかと思い、残念でした。
    それにしても、満州国の歴史は悲惨なので、通史的に読めて、大変勉強になりました。
    後半は物語性がちょっと弱くなってきてましたが、最終章はすごく盛り上がって、感動しました。

  • 柳条湖事件によって始まったアジアの徒花、満州国の歴史がポツダム宣言受諾により消え去るまでを描いた「満州国演義」の最終巻。巻半ばにしてポツダム宣言は受諾され、後半は国民党軍と八路軍、そしてソビエト軍による三つ巴の内戦が描かれる。
    狂気に包まれていたのは軍人だけではない。官僚も民衆も皆が狂気に陥っていた時代。
    敷島4兄弟の数奇な運命を描くことによって、あの戦争に係った人々翻弄された運命を描いた巨編ここに完結。

  •  船戸与一自らの手による「あとがき」の付いた作品なんてまるで記憶にない。しかし、この10年に渡って書き続けられてきた船戸一世一代の大作『満州国演義』の完結編なのだ。日本冒険小説界の誇る巨匠のライフワークの最後に、膨大な量の文献と、長大な作品に対してあまりに謙虚な2頁の「あとがき」が加えられるのは妥当と言えばあまりに妥当のように思える。

     世界中の国の基盤に潜む暗渠のような秘密を探り当てては、大衆読物としての小説という形で常に語り部たる立場を取ってきたこの作家にとっては、もちろん日本とは最も書かれるべき問題に満ちた祖国であるに相違ない。早稲田大学の探検部OBとして、船戸はヨーロッパ経由で国後島のチャチャヌプリに登っている。かつての国境地帯であり現在ロシアの領土内の山、知床岬より70kmほどの距離にありながら、北海道から直接渡るわけにはゆかない島に学術隊という名目で入国したというニュースを聴いたのは、未だソ連邦崩壊崩壊前夜のことである。

     船戸のペンの先は、本書においては、終戦に至る時代・終戦の真実・終戦後の知られざる歴史に向かっている。またそれらの時代の各国の思惑と駆け引きと、日本国が払った代償についても描写は手を緩めることなく貫かれている。近くて遠い北方領土のことをこの書で書いているわけではないが、留萌・釧路を結ぶ線でそれより北は東日本人民社会主義共和国を樹立しようとしていたソ連の思惑については抑留者たちの強制労働や思想教育の日々の中で示している。

     船戸という作家が身をもって踏んだ領土の土と、シベリア抑留の過去を持つ我が父の個人史が小説の中で繋がってゆくのを感じざるを得ないということで、ぼくにとっては苦しくも自分の中に流れる血の温度を感じ取らざるを得ない重要な読書体験といつか知らずなっていた。

     父は函館商業高校を出た後上京し電気通信の専門学校に通っていたことから終戦近くになって通信兵として徴兵され満州に行ったらしい。父から戦争経験の話を聴いたことは一切なく、生前はすべて私の母、父の死後は再婚した義母からしか、父の戦争経験のことは知らされていない。ぼくが生まれた時から父の左手の親指は半分しかなかったのだが、強制労働中の事故でこれがあったから3年後に復員できたのだという。怪我がなければ命まで失っていただろう、と。

     母は東京大空襲を何度も生き延びている。復員した父と生き延びた母は焼け跡の東京で出逢い、ぼくは戦後10年にしてこの日本に生まれた。おそらくぼくと同世代かそれ以上の年齢の日本人の多くが、日本が起こして滅びそうになった戦争の記憶に関しては共有しているばかりではなく、個別の家族史を持っていることだろう。その意味で、この時代のことがこうして親しく読んできた冒険小説作家の手によって記述され、それを改めて生きた空気や風、温度や心の震えなどを伴った小説という最も抒情的でありながら、最も震撼に値するリアリズムを含んだ形で提供された意義は巨きい。

     思えば、亡き父のことがあるからか、どこかでこの戦争に関してはぼくは労を惜しまず読もうとしてきた方だと思う。五味川純平の大作『戦争と人間』、阿川弘之『暗い波濤』『雲の墓標』、早乙女勝元『東京大空襲』、加賀乙彦『帰らざる夏』『錨のない船』、大岡昇平『野火』『レイテ戦記』等々。いずれも忘れ難い作品だが、そこに最も新しく船戸の世界が加わった。いつになろうと、戦争がどれだけ時間の向こうに遠ざかろうと、作品は、呼吸をするものとして、熱い血の流れるものとして、慟哭する涙の溢れるものとしての、傷ついた人間と失われたすべてのものたちのために書き継がれねばならない。

     『満州国演義』は船戸の書いた作品であるから、基本的には娯楽作品である。満州の四季の美しさや大きな大陸的舞台のなかで、勇猛な男たちや、たくましい女たちの生きざまがドラマティックに展開する冒険小説である。その舞台は歴史という素材であるが、歴史とは吐かれた嘘の集積で成り立っており、そのなかに詩と真実を求めることこそがおそらく船戸の宿命であると作者は感じていると思う。できるだけ多くの人に読まれるかたちとしての小説。その見本のような作品として、我々日本人に最も近しい共通のテーマ、満州事変から太平洋戦争までを背景として供されたのが本書である。

     戦争が滅びに近づくにつれ、初期にはまだ見られていた牧歌的なものがなくなってゆくという印象を船戸は「あとがき」で書いている。小説自体からもその牧歌性が消えていかざるを得ない真実の重みこそが、船戸を心底、歯痒くさせ、また語るべきという自らの宿命を強めた要素に他なるまい。父や母が提供してくれた血の記憶に重ねるべき大作として、ぼくは本書の最終行を眼にも心にも焼きつけようと思う。

  • 張作霖爆殺事件で幕を開けたシリーズが、10年の歳月を経て完結した。1巻、2巻の発売を記念して著者が『週刊ブックレビュー』に出演したのを覚えている。最後というより最期は予想に違わずあまりに著者らしく、複雑な読了感が募る。この巻では抒情的な描写が薄れ、史実に沿った歴史小説風となった。『不毛地帯』で壱岐正のモデルになった瀬島龍三がきわどい立場で紹介される。瀬島とともに抑留された志位正二が登場するが、彼を是非小説にしてもらいたい。志位和夫共産党委員長の伯父にあたるんだ。富永恭次も実在したようだが、あまりにひどい。

全15件中 1 - 15件を表示

船戸与一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×