さよなら渓谷

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104628049

感想・レビュー・書評

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  • 最近比較的古い本ばかり読んでいたので、現代ものの読みやすさにびっくり。
    大変不謹慎で、フィクションだから言えるが、こういう話にはつい惹かれてしまう。

    息子が加害者になったら
    娘が被害者になったら
    この答えにはハッとさせられたな

  • 20131118

  • 図書館にて借りました。

    多分、実際の事件を元にしているであろうと云われてる作品と聞きました。
    実の息子を殺したと容疑をかけられている女性の隣に住むカップルは実はレイプ事件の犯人と被害者だった。

    もし自分がレイプされたら許せるのか?
    絶対許さない、許せない。もしかしたら、友達や家族がそんなふうに被害にあった方が殺しても殺したりないと思う。

    興味深かったのが、「男同士は許してしまう」と云う言葉。
    確かに女同士でも、そういった事はあると思う。
    そして一番許して貰いたい人には、絶対に許して貰えないなんてことも。

    最後にひとつ、選択を迫られる。
    こんな話なのにとても切ない。

  • べったりとはりついたミソジニー。
    その事件に関して、また彼女に関わる男たちへの憎しみは感じるが、それはおいておいて。
    歪んではいるし幸せではないのかもしれないが、確実な愛情がそこにはあったのだと思う。明るく未来のあるものではない、過去の忘れられない汚らしい恐怖に満ちた事件の共有、それを共有してくれる誰かに愛情を持つということはあるのではないか、そんなふうに感じる。良い小説だと感じたけれど、映像では見る気がしない。小説だから、ファンタジーと感じられるのだから。

  • 恋愛は他人にはわかりません

  • 決して消えることのない罪の意識と、逃れられない大きな傷を負った二人。幸せになどなってはいけない男の中に芽生える幸せへの葛藤が切ない。
    モヤモヤとして決して晴れない心理状態を、暑い夏の季節で描く描写がうまい。肌をつたう汗とその臭い、そしてまとわりつく衣服が、拭っても拭い切れない不快感をいつまでも感じさせる。
    この二人の心理が理解できる日がはたして自分にも来るのだろうか。

  • だいぶ前に読んでいたけど、忘れてしまったので再読。

    前に読んだ時に秋田の事件の直後だったのかな。

    現実的な感想は尾崎もかよこ(夏美)もバカだったとしかいいようがない。
    後悔しても過去の行いは取り消せない。
    最後に渡辺がした質問。
    そりゃ普通に考えれば事件を起こさなかった人生の方だよ。

  • 悪人を思い出しながら読んだ

    罪を背負いながら生きるもの
    平凡な人生を望みながら、人を愛して
    もがきながら生きている

    最後に、男と女の愛みたいなものを深く感じた

  • 現実に起きている事件と、その周囲でもう一つの過去の事件が描かれる。2つの事件は結びつかないが、いつの間にか主役が入れ替わっていることに気づかされる。
    だんだんと真相が見えてくるので、ある意味ものがたりとしては分かりやすい。しかし、事件の当事者同士の心情を理解することはなかなか難しい。確かに、事件によって行き場のない両者が社会からはじかれ続け、生きていくに難しい状況になると、それが引き合わされることもあるかもしれない。作中では俊介が全てを捨てて夏美に着いていくが、夏美は一緒にいる時点で許していたのではないかと感じた。むしろ愛していたかもしれない。そして許してしまう自分を許せなくて出て行く。
    悲しいし切ないしスッキリしない最後ではあるが、このあとに幸せがあるといいな、と思う。

  • 過去の忌まわしい記憶と、どこまでも付き纏う、歪んだ情念。本作の舞台である夏の季節がもたらす、皮膚にへばりついて剥がれない腐臭のように立ち昇る怨恨の帳。鬼畜の所業によって奈落へと突き落とされる者と、その業に囚われる者。許される事の無い罪が執り成す異常と言える愛の形。理解するには、余りにも常軌を逸している。しかし、その愛は紛いものであるのだろうが、罪の鋼殻を突き抜けた先にある、お互いの魂が求め合った本物の愛なのだと思いたい

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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