さよなら渓谷

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 291
  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104628049

作品紹介・あらすじ

緑豊かな桂川渓谷で起こった、幼児殺害事件。実母の立花里美が容疑者に浮かぶや、全国の好奇の視線が、人気ない市営住宅に注がれた。そんな中、現場取材を続ける週刊誌記者の渡辺は、里美の隣家に妻とふたりで暮らす尾崎俊介が、ある重大事件に関与した事実をつかむ。そして、悲劇は新たな闇へと開かれた。呪わしい過去が結んだ男女の罪と償いを通して、極限の愛を問う渾身の長編。

感想・レビュー・書評

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  • 集団強姦の加害者と被害者のその後を描く。
    全体的にみると、こんな甘いもんじゃないはずだし、切ない恋愛ものとしかとられないかもしれない可能性もあると思った。
    ただ、作品の端々に、男視線でレイプというものをみるとこうみえるのだな、と分かるし、それをまた作者が客観的に捉えて描いていると感じる部分があって、男女の意識差を炙り出そうとした作品と捉えることもできた。
    最も要らなかったのは作品の最後の記者の質問。
    あれのせいで、苦しく切ない恋愛作品みたいになってしまっている。

  • 「さよなら渓谷」
    香川照之が、真木よう子に橋の上で迫る、的な記憶の残像はどうやら違う作品の映画だったようだ。


    一般的には、普通では、俄かに信じ難いストーリーであった。愛とは簡単じゃないけど、これは複雑だろうよと。


    息子が失踪したシングルマザー。事故か事件か。ミステリーの本ボシはこちらかと思いきや、隣に住む夫婦だった。それも、失踪事件とのダブルストーリーになるのでもなく、ミステリーでもなく、愛とは一体何なのか?であった。


    愛とは何なのか?となると、例えば、純愛とか片想いとかそういった類ではなく、そこには決して消せない罪があり、持って当たり前の復讐心がある。復讐したい、許さないという気持ちに加え、いつかばれてしまうかもしれない、誰も許してくれない、と言う恐怖が、次第に愛に繋がっていったと言うのか。この恐怖が、加害者はまだしも被害者にあると言うのが、愛を複雑にしていると思う。


    客観的な立場からすれば、尾崎に対しては許す気は起きない。何を今更となる。当時のかなこにしても、何でついて行くんだ、高校生なのに、となる。どちらにも同情し難く、しかしながら、尾崎が圧倒的に悪い。警官が尾崎に呟くのも、小林が激怒するのも当たり前だ。しかし、この客観的な視点だけでは、理解できない複雑さが二人の間にあったと言う訳だ。


    こんな複雑な愛(のようなもの)をすぐ理解するのは無理だろう。でも、無理は無理なんだが、だけども、最後のかなこの去り際だけは、理解できるのだ。

  • 起こってしまった(起こしてしまった)ことに対して、もがいてもがいて奇妙でも救われる形になったけど、はじめから起こらないのがそりゃあいいよと思う。
    やっぱり一生償って不幸になって!と思うけど、だからこそ苦しいのかぁ。

  • 9784104628049

  • 途中一瞬ミステリーかと思ったけど、愛の物語だった

    レイプ事件の元加害者と被害者が、自分の過去から逃げられず、忘れることもできずに一緒にいることを決断して、
    でも、2人で幸せになりそうになっしまったから、
    最後には離れ離れになってしまう

    「わたしがあなたから離れれば、あなたを許したことになってしまう」

    でも、実際には、被害者のかなこは多分加害者の俊介のことを憎みきれず、2人の間にあったのは愛だったんだろうなあ
    最後の最後で、切なさに胸がぎゅーーーっとなった

  •  被害者と加害者。事件によって傷を負った2人が、一緒に暮らすことで苦しめ合い、不幸の底に堕ちてゆく。
    ー姿を消せば、許したことになる。一緒にいれば、幸せになってしまう。ー
     なんて切ない関係なんだろう…。

     男性が若い頃に起こした強姦罪はなんとなく許されて、被害に遭った女性は「あなたにも非があったんじゃないか」と責められる。納得できるわけない、それが世間なの? ひどい。

  • なんとなくポップなタイトルかと思っていたけど人間のわがままさとかその代償の大きさが描かれてる。きっかけは団地で起きた4歳児の殺害事件だけど話の主題はレイプ被害者の消えない心の傷と、負わせてしまった加害者の方が被害者より幸せに暮らすことへの良心の呵責って人生を左右するほどの重い足かせになるんだという事。むしろそうあってほしいと思った渡辺という記者に共感してた。

  • 集団レイプ被害者と加害者と。
    重い話だし共感もしにくいから、不快感を持ちながら読み終えたけど、あとからじわじわと効いてきた。
    理不尽な不幸と不運とはいえ自分の甘さにも悔いもあって、生き地獄になってしまうんだろうな。
    「死ねないのよ…」という場面は夢にもでてきそう。苦しさがあとから染み込んできた。他人の詮索はどこへいっても付きまとう。
    なにがしか禍や不運を抱えて、死んでしまいたいと何度か思ったことがあるようなひとほど、このストーリーのやるせなさに取り込まれるとおもう。映画化されたようだけど、映像ではそんなに見たくないかな、、、、

  • 犯罪者と被害者が暮らしているだけではドラマにならない。遭遇した事件、掘り下げる記者など周囲を整えて展開させる。一気に読むのが勿体無いけど読んでしまった。

  • 想像よりもハラハラする要素が少なく、なんとなく話の行く先が見えてしまった。
    被害者の復讐の心理がよくわからなかった。

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著者プロフィール

吉田 修一(よしだ しゅういち)
1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業後、スイミングスクールのインストラクターのアルバイトなどを経験。1997年「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞しデビュー。同作は第117回芥川龍之介賞候補にもなった。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞を同年「パーク・ライフ」で第127回芥川龍之介賞、2007年『悪人』で第61回毎日出版文化賞及び第34回大佛次郎賞、2010年『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞、2019年『国宝』で第14回中央公論文芸賞をそれぞれ受賞。2016年には芥川龍之介賞選考委員に就任している。その他の代表作に、2014年刊行、本屋大賞ノミネート作の『怒り』。2016年に映画化され、数々の映画賞を受賞。

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