さよなら渓谷

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1327
レビュー : 291
  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104628049

感想・レビュー・書評

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  • 「さよなら渓谷」
    香川照之が、真木よう子に橋の上で迫る、的な記憶の残像はどうやら違う作品の映画だったようだ。


    一般的には、普通では、俄かに信じ難いストーリーであった。愛とは簡単じゃないけど、これは複雑だろうよと。


    息子が失踪したシングルマザー。事故か事件か。ミステリーの本ボシはこちらかと思いきや、隣に住む夫婦だった。それも、失踪事件とのダブルストーリーになるのでもなく、ミステリーでもなく、愛とは一体何なのか?であった。


    愛とは何なのか?となると、例えば、純愛とか片想いとかそういった類ではなく、そこには決して消せない罪があり、持って当たり前の復讐心がある。復讐したい、許さないという気持ちに加え、いつかばれてしまうかもしれない、誰も許してくれない、と言う恐怖が、次第に愛に繋がっていったと言うのか。この恐怖が、加害者はまだしも被害者にあると言うのが、愛を複雑にしていると思う。


    客観的な立場からすれば、尾崎に対しては許す気は起きない。何を今更となる。当時のかなこにしても、何でついて行くんだ、高校生なのに、となる。どちらにも同情し難く、しかしながら、尾崎が圧倒的に悪い。警官が尾崎に呟くのも、小林が激怒するのも当たり前だ。しかし、この客観的な視点だけでは、理解できない複雑さが二人の間にあったと言う訳だ。


    こんな複雑な愛(のようなもの)をすぐ理解するのは無理だろう。でも、無理は無理なんだが、だけども、最後のかなこの去り際だけは、理解できるのだ。

  • 自分の人生を誰かの手によってめちゃくちゃにされて、どこへ行っても誰といてもその呪縛から解放されることはなくて、辛くて、死にたくて…苦しみばかりの道から解放される方法が、人生をめちゃくちゃにしたその相手と一緒にいることだけだとしたら?
    物語を読むと、自分だったらどうだろう?っていう想像をしてみるけれど、さすがにこのお話は想像が追い付かなかった。
    でも人間の心理がどんな風に動くかって、周りからすると理解できない方向に向かうこともあるとは思う。

    終始薄曇のはっきりしない空、みたいな雰囲気が漂っていて、主要な登場人物がみんな鬱屈したものを抱えていて、重苦しい。
    どこへ向かっても、どこにも逃げられない。
    罪を犯した側でも、善良な部分がわずかでも残っていれば、自分が犯した罪にいつまでも追いかけられながら生きなければならないということ。

    系統としてはミステリだけど、すっきりと事件が解決して終わるような物語ではない。
    吉田修一さんのミステリって謎解きとは違う部分が主体になってておもしろい。パレード然り。

  • 図書館にて借りました。

    多分、実際の事件を元にしているであろうと云われてる作品と聞きました。
    実の息子を殺したと容疑をかけられている女性の隣に住むカップルは実はレイプ事件の犯人と被害者だった。

    もし自分がレイプされたら許せるのか?
    絶対許さない、許せない。もしかしたら、友達や家族がそんなふうに被害にあった方が殺しても殺したりないと思う。

    興味深かったのが、「男同士は許してしまう」と云う言葉。
    確かに女同士でも、そういった事はあると思う。
    そして一番許して貰いたい人には、絶対に許して貰えないなんてことも。

    最後にひとつ、選択を迫られる。
    こんな話なのにとても切ない。

  • 不快感の描写を書かせたら右に出るものはいないんじゃないかと
    思ってしまうほど、吉田さんの本は読んでて臨場感がある。
    でもそこが好きなんだなぁ。細かくて。
    夏美と尾崎の関係って実際あるんだろうか
    そういうことが。
    分かるような、うーん、分からん。

  • 映画化されたというので読んでみた。
    1日で読了。
    こんな話とは予想していなかった。

    なんというか、思ってもみない、考えてもみないお話だった。
    よくこんな題材を思いつくなぁ、と感心した。

    「かなこ」が唯一自然でいられる相手が尾崎だ、というリクツは理解できる。が、しかし、二人が心の奥底で愛し合っているかのような雰囲気はどうなんだろう。私の感覚では有り得ない。
    愛し合っているようで愛じゃない。
    赦しているようで赦していない。
    傷だらけの状態が常態化してしまって、もう、よくわからない。
    主人公の二人はそういうところなんだろうか。

    私が「かなこ」だったらどうするだろう。
    どんなその後の人生を歩むだろう。
    女だというだけで、誰の身にも起こらないとはいえないことだ。
    おおいに不公平だけど(怒)。よぉく考えないと。

    だけど、どうしてこんなお話、思いついたんだろう~??

  • 切ない。でも、本当に男って馬鹿。この本に出てくる男の人、馬鹿ばっかり。何で、レイプしてしまったのか分からないって、実際もそんなもんなのかな。

    映画化で、かなこを真木よう子が演じるけれど、はまり役だよなー。観たいです。

    • vilureefさん
      こんにちは!

      大好きな本です。
      映画化されるのですか!?
      しかも真木ようこ。
      あ〜、みたい。
      こんにちは!

      大好きな本です。
      映画化されるのですか!?
      しかも真木ようこ。
      あ〜、みたい。
      2013/06/04
  • 3時間程度で一気に読了。
    出だしの幼児殺人事件や途中で暴かれる事件が、実際の事件を彷彿とさせる。

    幼児の事件が話の中心かと思ったらそうではなくて、その隣家の夫婦の話。
    やるせない。
    女性が性被害に遭うことの理不尽さを強く感じさせられた。
    なかなか面白かったが、意外に短くて、もっと深く心情など濃密に描き込んであったほうがよかったかなあ。結末もうまく逃げちゃっていて、ちょっと物足りない感じ。
    本当は☆も3.5くらい。

  • 起こってしまった(起こしてしまった)ことに対して、もがいてもがいて奇妙でも救われる形になったけど、はじめから起こらないのがそりゃあいいよと思う。
    やっぱり一生償って不幸になって!と思うけど、だからこそ苦しいのかぁ。

  • 途中一瞬ミステリーかと思ったけど、愛の物語だった

    レイプ事件の元加害者と被害者が、自分の過去から逃げられず、忘れることもできずに一緒にいることを決断して、
    でも、2人で幸せになりそうになっしまったから、
    最後には離れ離れになってしまう

    「わたしがあなたから離れれば、あなたを許したことになってしまう」

    でも、実際には、被害者のかなこは多分加害者の俊介のことを憎みきれず、2人の間にあったのは愛だったんだろうなあ
    最後の最後で、切なさに胸がぎゅーーーっとなった

  •  被害者と加害者。事件によって傷を負った2人が、一緒に暮らすことで苦しめ合い、不幸の底に堕ちてゆく。
    ー姿を消せば、許したことになる。一緒にいれば、幸せになってしまう。ー
     なんて切ない関係なんだろう…。

     男性が若い頃に起こした強姦罪はなんとなく許されて、被害に遭った女性は「あなたにも非があったんじゃないか」と責められる。納得できるわけない、それが世間なの? ひどい。

著者プロフィール

吉田 修一(よしだ しゅういち)
1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業後、スイミングスクールのインストラクターのアルバイトなどを経験。1997年「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞しデビュー。同作は第117回芥川龍之介賞候補にもなった。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞を同年「パーク・ライフ」で第127回芥川龍之介賞、2007年『悪人』で第61回毎日出版文化賞及び第34回大佛次郎賞、2010年『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞、2019年『国宝』で第14回中央公論文芸賞をそれぞれ受賞。2016年には芥川龍之介賞選考委員に就任している。その他の代表作に、2014年刊行、本屋大賞ノミネート作の『怒り』。2016年に映画化され、数々の映画賞を受賞。

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