さよなら渓谷

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104628049

感想・レビュー・書評

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  • ただの自分メモ

    映画は知っていたものの観そびれており、すっかり忘れていたが、図書館でふとこのタイトルの小説を見つけ、原作があったのかと何気なく手に取り、そして一気に読み終えた作品。
    こんなに重い内容の作品とは、露知らず。
    色んな思いで、感情がぐちゃぐちゃになった。
    歪な愛憎、という言葉が浮かんだけれど、それだと薄っぺらい。
    事件当時の尾崎は、元はそこら辺にいる健全な大学生だったように思う。(決して尾崎を擁護するわけでは無い)ただ、日常にある様々な事件は、このように計画性もなく、善良に無難に生きてきた人間にも牡丹の掛け違えのように、或いは絶妙なタイミングの重なりの上に突発的に起こり得るものなのかもしれないと思う。
    二人は歪なまま、世間から孤立した存在として、事件の加害者と被害者として、誰にも分からない「なにか」を共有してしまっている。果たしてこれは幸せなのだろうか?愛なのだろうか?
    ストックホルム症候群にも似ているが、単純にだからこれは愛では無いとは言い切れない。
    そもそも、愛とは対象物や人によって違う感情であると思う。その感情を表すのに的確な言葉がなく、一番近い言葉が「愛」なので人はその言葉を多用するのであって、そこにはキレイな感情だけで無く、憎しみや、同情や、哀しみや、苦しみなど無限の感情が混ざり合っているモノだとおもう。
    この小説では、そんなキレイではない愛のようなモノを垣間見たような気がする。
    また、再読したら見方が変わるような気がする小説の一つとなりそうだ。

  • 憎んで離れられず。許しを請うて離れず。
    それも愛なのですか?

  • 10年以上前に起こった大学野球部による女子高生レイプ事件。被害者も加害者も過去を抱えて生き続ける。贖罪と愛情。

    畠山鈴香の事件をモデルにした話かと思いや、ぜんぜん違った。その隣人の話だった。

    人間の繋がりは一筋縄ではいかない。色んな繋がり方がある。この話の繋がりは愛情だったのだろうか。最初は違ったということだろう。憎むべき男に復讐しようと警察に嘘を言ったが、もはや彼らは愛情で繋がり始めていた。
    うーん。すごい。壮大だ。

  • なんともいえない読後感でした。吉田修一さんの作品すごく好きです。惹きつけられる。まだ2冊しか読んでないのでいろいろ読んでみたい。映画化されているとのことでDVDも見てみたいと思いました。

  • 誰も幸せにならないけれど、
    幸せを求めなければいけない
    なんて決まっていない。

    加害者だから自ら
    不幸を選ぶのと、
    被害者なのに
    不幸になってしまうのでは
    どう違うんだろうか。

    不謹慎だが最終的に、
    かなこが羨ましくてならない。

  • 団地の住民が、自分の子どもを殺した容疑で逮捕されます。共犯者としてあがってきたのが、隣に住む俊介。俊介には、集団強かんで逮捕された過去がありました。そして俊介と同居するかなことの間には、重大な秘密が。性暴力が、その後の人生に長く深い影響を与えることがわかる著。「性暴力後の幸せな人生とは何か」を考えさせられます。

  • レイプ犯とその被害者との奇妙な同棲生活が、ある事件によってあからさまになっていく。『悪人』にも似た構造だが、どちらかというとこちらの方が好きだな。巧みなストーリーテイリングが素晴らしく、これまで読んだ吉田修一作品の中では、一番気に入っている。

  • 事件の罪を背負って生きている男と、事件の傷をずっと引きづり続けている女が、互いに不幸せになるために一緒に生活する――。

    とても暗いストーリーではあるけれど、あっさりと読むことができた。

    “さよなら”と書いたかなこの気持ちを想像すると、とても切ない。
    どうか、この2人に幸せが訪れますように。

  • 好きだ。

    暗くて、淡々としていて、なにか違和感ある感じで、話しが、静かに過ぎていく感じ。

    この暗さは、いい。



    最後あたり、橋の欄干によりかかって話しをしているかなのこの、柵から突き出た足先でゆれるピンク色のサンダル。
    そして、そのつま先で揺れていたサンダルが足から離れ、ずっと下の川の流れに呑まれるところ。
    ぐぐぐーんと惹かれる場面だった。

    暗い映画みたいな小説でした。

  • 好みだ

著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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