敵影

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 64
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104629039

作品紹介・あらすじ

昭和二十年八月十四日、敗戦の噂がまことしやかに流れる沖縄の捕虜収容所で、血眼になって二人の人間を捜す男の姿があった。一人は自らの命の恩人・ミヨ、もう一人はその恩人を死に追いやった男・阿賀野。執念の調査は、やがてミヨのおぼろげな消息と、阿賀野の意外な正体を明らかにしていく-。

感想・レビュー・書評

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  • 戦争は決してエンタテインメントではない!… 戦後ちょうど70年、似非の零戦映画に感動しただの涙しただの言っている日本人にこの本格の戦争文学は果たしてどこまで理解され通用するのだろうか。
    既に時遅しかもしれない、しかしあの不条理な出来事に命を投げ打った全ての人々の心情を敢えてこの時代に描くことを使命とした古処さんには心から敬意を表したい。
    「戦時に於いては生きる事も死ぬ事も己の意志ではなくそれは命令によるものである」…人が人でなくなる異常な世界を作り上げるのもまた人、同じ過ちを二度と繰り返すことなきよう祈るのみ

  • 戦争を体験していない年代の作家による戦争小説だが、かなりリアルな作品。読んでいて胸が引き裂かれそうな気がした。

  • もう少し、もう少し書き込みがある方が好きだなぁと。これは個人的な好みの問題。

    吉村昭、遠藤周作、梅崎春生、島尾敏雄・・・彼らの作品は臓腑をえぐるように迫ってくるんだけれども。私の読解力が足らないのだろう。

    汚いこと、理不尽、不条理、知っているから、あえて見せられても。
    もっと怖いことはあって、それを見なければ、また繰り返す、そう思っている。

  • 捕虜収容所を舞台に、日本兵の挫折と矜持を描いた秀作。
    あいかわらず古処作品の言葉はひとつひとつが重く、襟を正さずに読むことができない。柔道とボクシングとの対比に沖縄での戦況、ひいては日本とアメリカの構図をみてとるのは少し唐突な印象もあったが、クールな印象の羽島が損得勘定抜きで声を荒げて応援に興じるシーンは感動的ですらあった。物語として特別に起伏があるわけでもなく、感情表現もひどく抑えられた筆致は、おそらくこの先も一般受けするものではないのだろうが、エンターテイメント要素の少ない、リアル感のある戦争文学を求める者の支持は決してなくならないであろう。
    ラストにカタルシスがあるこの感じは、印象としては「七月七日」とダブるものが多かった。
    僕たちは古処さんをもっと読まなければいけない。

  •  沖縄戦の物語である。『接近』で桜の花咲く頃の沖縄戦を、『遮断』で梅雨のさ中の沖縄戦を描いた古処誠二氏。本作では8月15日前後の沖縄を描いている。

     日本軍の兵士だった近藤義宗は、沖縄での組織的戦闘が終わり、捕虜として米軍の捕虜収容所に収容されていた。捕虜収容所には毎日の使役はあるものの、食事も与えられ、ある種の倦怠感が漂う日々。そんな中、収容所内で義宗は二人の人物を捜していた。一人は病院壕で懸命に義宗を看護してくれた女学生・高江洲ミヨ、もう一人は阿賀野という軍曹。
     なぜ義宗はこの二人の人物を懸命に捜しているのか?その謎が冒頭に提示されるが、答えは物語の中盤で明らかになる。それは意外な真相である。
     この謎で全編を引っ張ることなく、ミステリ的な展開に落ち着かなかったのは、それ以外に描きたい事が多すぎたためか。
     捕虜になってしまえば軍での上下の関係もなく、私怨を晴らす為に闇討ちに興じる捕虜たち。身分が明らかになるのを恐れて偽名を名乗る者たち。玉音放送後に捕虜としてやって来た者と、それ以前から捕らえられている者たちの確執―。
     これまで沖縄戦を描いた小説ではあまり描写される事のなかった情景が緊迫の筆致で描き出されていく。

     毎回、様々な視点から沖縄戦を描いてきた古処誠二氏。今回は捕虜、そして現地人ではない兵の視点で、しかも玉音放送後の沖縄を描くというのが面白い。
     ただし、前2作では行間に沖縄の土着性というか地元の濃密な空気というか、そういうものが充満していたのに比べ、今作ではそんな空気が減少しているようにも感じた。登場人物の多くが沖縄人ではない人たちだからか。
     終盤行われる、ある《闘い》のシーンは息を呑む緊張感。もちろんこの《闘い》のシーンが沖縄戦そのものを比喩していることは登場人物の口を借りて語られる。

     前2作のタイトル『接近』『遮断』は、抽象的に作品内容を表現していたが、今作は直接的に作品のテーマを表現している。強大な敵の前に敗れた人々は、新たな《敵》を捜し始める。その事に意味があるかどうかは関係ない。本当は敵などどこにもいないのに、それでも存在しない《敵》の影を追い続ける。「憤怒が敵影を求める」(p43,p69)と本文でも触れられている。終盤の《闘い》のシーンは、《敵》を追い続ける意味その答えでもあるのだ。
     「仇はカタキとも読み、カタキは敵とも書く」(p148)
     …なぜ人は敵を追い求めるのだろうか。

     終戦後を舞台にする事で、沖縄戦の凄惨を逆に明確にするという手法に驚いた。義宗らの達観したような語り口は、終戦直後の捕虜たちの心情を痛いほど表現している。
     義宗をはじめいろいろなキャラが登場するが、中でも日系二世で米軍にいる男は印象的なキャラだ。彼がラストで示す希望とも絶望とも取れるある光景が戦争の残酷さを浮き彫りにする。

     前2作から同じ事を考えている。新たな感性で沖縄戦を描く世代が出現してきたのだなと。沖縄の若手作家ではこういう小説は書けなかったのかも知れない。

     『接近』では白一色、『遮断』では黒一色に染められた単行本のデザインだが、今回は赤一色。律儀にそれぞれスピン(しおり用についているひも)の色も白・黒・赤である。
     不穏な色、赤。それは戦死した兵士たちの血の色か、巻き添えをくらった住民たちの血の色か、それとも私憤で報復をうけた捕虜たちの血の色なのか。
     もしかしたら我を失って《敵》を捜す者たちの血の気の色なのかも知れない。

  • 赤の本棚をつくったので
    表紙が赤かったzzz…

  •  読了。

  • 昭和二十年八月十四日、敗戦の噂がまことしやかに流れる沖縄の捕虜収容所
    で、血眼になって二人の人間を捜す男の姿があった。一人は自らの命の恩人、
    女学生の高江洲ミヨ。もう一人はミヨを死に追いやったと思われる阿賀野という
    男。男の執念の調査は、やがてミヨのおぼろげな消息と、阿賀野の意外な正体
    を明らかにしていく。

  • 0412098691

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