ノースライト

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 137
  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104654024

感想・レビュー・書評

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  • +++
    一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。望まれて設計した新築の家。施主の一家も、新しい自宅を前に、あんなに喜んでいたのに…。Y邸は無人だった。そこに越してきたはずの家族の姿はなく、電話機以外に家具もない。ただ一つ、浅間山を望むように置かれた「タウトの椅子」を除けば…。このY邸でいったい何が起きたのか?
    +++

    初めから終わりまで、みっしりと面白かった。装丁を見ただけで、そこはかとなく不安な気持ちにさせられ、読み始めてもその感はさらに強くなる。ブルーノ・タウトの椅子の出所を探るというのは、確かにひとつの要素ではあり、建築士としての青瀬の興味の在処でもあるのだろうが、つまるところ、そこにまつわるいくつかの家族の再生の物語なのではないかと思う。初めに抱いたそこはかとない不安は、次第に形を変え、一時は誰かの悪意を伴った不安に変わり、そして最後には、
    一抹の無念さとともに、ある種の安堵と希望の種となって、物語全体を包み込むのである。大団円に向かって畳みかけるように進んでいく物語が心地好い一冊だった

  • 久しぶりの新作だと前知識ナシに手にした。
    自分の中で警察小説だろうと勝手に思い込んでいたようで(笑)、正直なところ外された感があった。
    “人”を描く見事さは横山作品だなぁと思えど、建築家は芸術家で良いだろうけれど、建築士は職人なのではと本筋と別なのに、ずっと引っかかり続けてしまった。

  • 初めは推理小説かと思い勘違いして読んでいましたが、
    勘違いするほどそれだけサスペンス感のような
    ドキドキ感を味わいました。
    特に後半からはぐんぐんと真相に迫り、
    今まで冷静だった主人公がどんどんと熱量を上げていくのが
    ページを捲る手が止まりませんでした。

    今まで建築士を主軸にした作品を読んだことが無かったので、
    設計、建築などの仕事の一連が知れて面白かったです。
    またこの作品の鍵となる「タウトの椅子」の制作者でもある
    ブルーノータウトについての事が詳細に描かれているのでとても興味深く読めました。

    作品の舞台となった所が意外にも自身の身近な場所に
    あったりと作品の中に登場するものが、
    どこか身近なものに感じたので感情移入もしやすかったです。

    主人公の仕事に対する思い、そして家族や同僚、友達などと
    家を通して人生そのものを考えさせられるような
    テーマでもあり読んでいてとても納得するものばかりでした。
    そして家を建てるということはどんな人でも
    夢を見させてロマンを感じるものだと思いました。
    そんな建築士がとても魅力的だと思えてしまいました。

    「64」、「半落ち」、「クライマーズハイ」などの
    以前の作品を動とするならば、
    今回の作品は静寂感の静でその中に美しさのような
    佇まいを感じて今までの横山さんの作品とは違った
    作品の雰囲気でとても味わい深いものだと思い
    読了後は明るい未来も垣間見れて心が温まりました。

    この作品も映画やドラマなどの映像化として観てみたいです。

  • 大人のためのミステリ小説、ミステリーというより家族や人生、再生の物語でした。前半はタウトや建築の用語が多くあり、写真なしでは難しかったですが、後半は青瀬や岡嶋、他のキャラクターが皆動き始めて、今後に希望が持てる最後で、頑張ってほしいし頑張らなきゃと思わせてくれました。横山さんがすごく丁寧に作品を作ったのだろうと強く感じます(6年前の作品だとか)。

  • 【あれこれ想像を巡らす話ではなく、これは噛みしめる話なのだろう】(文中より引用)

    バブル崩壊後の苦しい時代をなんとか生き抜いてきた一級建築士の青瀬。彼はある夫妻から「あなたの住みたい家を建ててほしい」との依頼を受け、渾身の力作を築き上げることに成功する。しかし、入居したはずの夫妻からの連絡は途絶え、さらにその家には人が住みこんでいないのではないかという疑惑が持ち上がり......。著者は、ミステリーの名手として名高い横山秀夫。

    建築とミステリーという一風変わった組み合わせなのですが、それが見事にハマった超一級の作品。もはや心情ミステリーといっても良いと思うのですが、巧みな感情の描写一つひとつに唸らされること頻りでした。じんわりと心に染み入るラストも感涙ものです。

    横山氏の作品を一から読み直そうかな☆5つ

  • 建築家.自分の設計した家に引っ越したはずの一家が実は何処かに消えていた.ブルーノタウトまで絡んで3っつ位の話を一度に読んだよう.

  • 楽しみにしていた新作。建築家が主人公で意外でしたが、彼のルーツ、椅子、家、事務所、コンペ…色々な要素が絡み合って、謎解きもしっかりあり、人間がしっかりと描かれてボリュームはあったが面白く読めた。
    建築のことも知ることかできた。
    個人的には『64』の方が好きかな。

  • 素晴らしい!一気読みしました。伏線回収、読後の爽快感等すべてが素敵。タウトのことはあまりよく知らなかったが、この本を読んで興味がわきました。64などあらすじを知っていてもこれまで暗い雰囲気が苦手で、手が出なかった横山秀夫作品。書評欄での高評価につい読んでしまった。読んで良かった!書評書いた人ありがとう!読んでいていろいろな場面が頭の中に映像のように出てくるのは、作者の描写力がすごいということだと私は思う。Y邸でまっ暗闇の中電話を待つ青瀬の場面などは、私もそこにいるような感覚になった。映画かドラマ化されそう。私の読解力が無いからなのか、途中でマンションのエレベーターで出会った老婆の場面は何が言いたかったのかと思った。何かの伏線と思ったがあれきり出てこなかった。元妻の老後の姿と重ねたのか?謎である。

  • "64"以来の著者の長編小説ということで期待も高まり、イッキに読了。
    さすが読ませ力は健在。
    ノースライトとは北側から差し込む柔らかな光のこと。
    建築家の青瀬はある日、夫婦から”あなたの建てたい家を建ててください”と依頼に応え、快心の出来の新築した家を引き渡す。がその夫婦は突如姿を消し、その行方を追ううちに…というミステリー。
    その部屋に残されたブルーノ・タウト作そっくりの椅子が物語りの鍵を握るんだけど、読み終わって、うーん、さすがにそういう展開になるとは思ってなかったから意外だったけど、そもそも夫婦ではなかったしね。
    飯場暮らしの幼少期に遡っての謎解き。お父さんは逃げた九官鳥を追って崖から転落死したのではなかった。
    あきらかに殺意はないにしろ、吉野トウタの父親のせいで死んだ。それはもう遠い過去のこととして青瀬のようにふっきれるものなのか…。
    岡嶋は自殺だったのか、事故だったのかそれはあいまいなのはいいとして、仕事も岡嶋事務所をたたまずコンペにもいい感触で、(何かとライバルだった能瀬事務所からにはなったけど)青瀬稔は妻とよりを戻しそうな兆しで、ハッピーエンドぽいんだけど、父親の死にまつわる要がちょっと納得いかないなぁ。
    これ、絶対映像化するね。間違いない!

  • 横山節の真骨頂ともいえるサスペンスの崖、何かとんでもないことを見逃しているのではないか、というハラハラというより、同じトーンで進みつつも美しい物語になっている。
    横山さんの作品には珍しくタウトの椅子や洗心亭など固有名詞が多く出てくる。それがある意味ファンタジーとも言えなくない筋のなかで、主人公が迷う森の木立のようにすっくと立ち、ミステリー感を引き出している。

    人生の取り返しのつかない傷を見せまいと生きてきた建築家が、ただひとつ魂を込めて設計したと胸を張れる家とその施主に端を発する事件。

    横山さんの本はドーンと打ちのめされた感を求めて読むけれど、この本は美しい余韻を楽しむ話。愛するものと人生の中ではぐれても、それきりを会えなくなったとしても、人が思う限りその人はどこかで救われることができる。

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著者プロフィール

横山 秀夫(よこやま ひでお)
1957年東京都生まれ。国際商科大学(現・東京国際大学)卒業。1979年に上毛新聞に記者として勤務。『ルパンの消息』でサントリーミステリー大賞佳作を受賞したのをきっかけに退社。以後フリーランスライターとして活動。1998年「陰の季節」で第5回松本清張賞を受賞し小説家デビュー。2000年『動機』で第53回日本推理作家協会賞(短編部門)受賞。2002年『半落ち』が「このミステリーがすごい!」1位となり、第128回直木賞候補作となるが、そこで起きた様々な論議から、直木賞決別宣言を出すに至る。『半落ち』は2004年に映画化されて高い評価を得ている。その後、2004年『クライマーズ・ハイ』で第1回本屋大賞第2位、映画化されヒット。2013年刊行の『64(ロクヨン)』で第10回本屋大賞第2位、「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」各1位を勝ち取り、大ヒットとなった。

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