ノースライト

著者 :
  • 新潮社
3.87
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本棚登録 : 1210
レビュー : 124
  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104654024

作品紹介・あらすじ

横山ミステリー史上、最も美しい謎。熱く心揺さぶる結末。『64』から六年。平成最後を飾る長編、遂に登場。一級建築士の青瀬は、信濃追分に向かっていた。たっての希望で設計した新築の家。しかし、越してきたはずの家族の姿はなく、ただ一脚の古い椅子だけが浅間山を望むように残されていた。一家はどこへ消えたのか? 伝説の建築家タウトと椅子の関係は? 事務所の命運を懸けたコンペの成り行きは? 待望の新作長編ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 一級建築士の青瀬。ある施主より「住みたい家を建てて下さい」との要望があり、家を建てる。北向きにこだわり評判を得るほどのものであった。しかし、訪ねてみると、誰も住んではおらず、タウトの椅子だけが置かれていただけであった。
    青瀬がタウト疲れとか言っていたけれど、青瀬とともにタウトを追って読んだ私も多少なりともそう感じた。しかし、青瀬の過去よりのお話や、タウトのお話、離婚した家族のお話などうまくミックスされ引き込まれ最後まで読み上げました。建築家として生きていきた青瀬の再生の物語、読ませました。北の光を随所に感じさせ、横山さんの力を感じた、派手なものはないが、力作。


  • 後半、ぐいぐい読ませる一冊。

    警察ものでない横山作品、しっとりとしたオトナのミステリ。自分にとってはものすごく読みやすかった。

    警察ものは人物多さが苦手。でもこちらはシンプル、登場人物が混乱しないのもポイント。

    主人公は一級建築士の青瀬。クライアントに望まれ設計した新築の家。なのにクライアント一家は失踪していた。ただ一脚の椅子だけ残して…。

    失踪の謎をさぐる青瀬。タウトの椅子、それだけがクライアント吉野との接点。

    人物描写、丁寧な心情描写はやっぱり横山作品らしく惹きつけられ、建築という未知の世界にもかかわらずどのシーンもその世界にぐっと入り込める感覚。

    後半は特にぐいぐい読ませ、親子、家族、伝えるべき想いと遺す想い、それらがじんわり心に染み渡り二度読みしたほど。


    ノースライトのタイトルが秀逸。たしかに主張し過ぎることのない、でもしっかりと包み込むような北の柔らかな光こそこの読後感に相応しい。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      警察物は人が多いし、無駄ないがみ合いが多いよね(^_^;) そこが苦手。
      警察物でない横山さん、読み応え...
      こんばんは(^-^)/

      警察物は人が多いし、無駄ないがみ合いが多いよね(^_^;) そこが苦手。
      警察物でない横山さん、読み応えありそう!
      うちにも横山作品眠っているわ(笑)
      2019/03/04
    • くるたんさん
      けいたん♪

      おはよう(⁎˃ᴗ˂⁎)

      そうなのよー!警察モノは警察の所属とか対立とか立場とか微妙な関係とかややこしくて…
      特に64はそこが...
      けいたん♪

      おはよう(⁎˃ᴗ˂⁎)

      そうなのよー!警察モノは警察の所属とか対立とか立場とか微妙な関係とかややこしくて…
      特に64はそこが苦労した思い出が(*vωv) 

      こちらはシンプルで良かった作品(*^^*)♪

      横山作品、「出口のない海」はもう読んでる⁇

      評判良いみたいだけど、私、未だ読めてないんだ〜〜( ˃ ˂ഃ )
      2019/03/05
  • 一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。
    望まれて設計した新築の家。
    施主の一家も、新しい自宅を前に、あんなに喜んでいたのに……。
    Y邸は無人だった。そこに越してきたはずの家族の姿はなく、
    電話機以外に家具もない。
    ただ一つ、浅間山を望むように置かれた古ぼけた「タウトの椅子」を除けば……。
    このY邸でいったい何が起きたのか?

    一家はどこへ消えたのか?
    空虚な家になぜ一脚の椅子だけが残されていたのか?


    一級建築士の清瀬は、バブル崩壊により仕事のあぶれ、
    お酒に溺れ、妻と娘は家を出て行った。
    一度建築家として死んだようになっていた。
    意地とプライドや苦悩と嫉妬が交錯します。
    今の事務所に誘われ、施主に請われ「自分が住みたいと思う家を建てて欲しい」
    との依頼で、全力を傾け自分の全てを注ぎ込んで完成したY邸。
    建築雑誌にも取り上げられるほど高い評価を受けていた。
    青瀬の代表作と言っても過言ではない建物となった。
    ある人の誰も住んでいないみたい…という言葉が気になって行ってみると、
    電話機以外に家具もない。
    空っぽの家に古ぼけた「タウトの椅子」だけが残されていた。
    施主一家に一体何が起こったのか?
    置かれていた椅子は本物のタウトの椅子なのか?
    青瀬は謎を追う事にするーー。

    私は建築の事に全く知識がなく、日本に数年亡命していた
    高名な建築家ブルーノ・タウトの事も全く存じ上げなかった。
    中盤熱く深く長く語られるタウト。
    ちょっと長すぎるなぁって感じた。

    誘拐事件の捜査を巡る警察小説「64」は圧倒的な傑作だったと思っています。
    それから6年ぶりの新刊本。待っていました。
    動の「64」に比べると静の「ノースライト」と感じました。
    殺人事件も起こらないけれど、大きな謎があり
    人間描写が相変わらずとても緻密で、
    大きく激しい人間ドラマが描かれていた。
    青瀬の生い立ちや、成育環境、過去のお話。
    離婚した家族の話等引き込まれました。
    青瀬の再生物語でもありました。

    最後は怒涛の展開です。
    心がジワジワ温かくなり、
    目の奥もじんわりと熱くなりました。
    読後感のとっても良い本でした。
    横山さんらしくない、でもやはり横山さんらしさを感じる。
    力を感じる素晴らしい作品でした(*´ `*)

    巻末の参考文献の多さにとても驚かされました。
    それだけしっかりと深く調べて書かれているのですね。
    だからタウトのシーンとか長く感じてしまったのか…。

  •  今年のベスト1は、もうこれで決まりかな、と思われるほどの手ごたえのある力作である。

    『陰の季節』で松本清張賞を獲得しデビューした横山秀夫は、その後も手堅く印象深い短編小説を連ねてミステリ界を賑わせる。短編であれ、長編であれ、映像化される作品も多く、確実に彼の一時代を築け上げた感がある。単発短編から連作短編へ。さらに多作ではないにせよ印象的な長編作家への緩やかな脱皮をも遂げてきたがその後静かなブレイクを経て6年前に『64』ではダガー賞候補にまで名を連ねる快挙を遂げる。まさに国産ミステリ界の至宝と言っていい。

     そして忘れた頃になってこの新作。そしてまたも快挙の予感。歳を重ねるにつれ円熟味を増す文体、素材、深み、そして、美しさ。読み始めは、エンターテインメントというより何か懐かしい素敵な純文学を読んでいるかのようなノスタルジーが心に蘇る。一行一行の、否、一語一語の言葉の扱いの丁寧さ、行間への気配り。それ以前に積み重ねられてゆく言葉と世界への静謐なる導入部。これは横山長編の個性としか言いようがない何かであると思わせる期待。

     主人公は一級建築士。バブル後の離婚、孤独、失われた職への誇り。渡りの過去。ダム工事現場の職人であった父に従って全国を落ち着くことなく渡り歩き山間の飯場暮らしの中で育てられた過去。古い記憶。

     提示される謎は、消えた一家。

     発注者の望み通り全力を傾倒し仕上げ、しかも『平成すまい200選』に選ばれ世間にも高く評価された建築物である信濃追分の家には、誰も済まず、一脚の木の椅子だけが置かれていた。椅子からはドイツ亡命者であるブルーノ・タウトという建築士の姿が浮かび上がる。巻末資料として列挙されている関連書籍の量からして、著者の心が相当にタウトに集中したのは作中でも重心となって見られるほどである。日本の軍国化が進む頃、日本古来の文化の消滅に危機を唱え、少なからず救いの手を差し伸べようと指導を試みたこの異国人の姿は、本作の建築士の物語に、相当な厚みを加えているように思われる。

     さて様々な謎が深まる中、主人公の所属する建築事務所では、ある美術館のコンペティションという現在が熾火の如く発熱してゆく。パリで亡くなった地元女性美術家の記念館を市の予算で建立する企画に、競合各社、市議会内での争い、マスコミの取材合戦が絡んで炎は膨れ上がる。メインストーリーの静かな謎の上に、現在と過去とが重なり、多くの社会的・家族的・親子的・恋愛的葛藤がさらに積み上げられてゆく。重層構造。

     スタートとなった謎そのものは、本質に近づいたり遠のいたり。個性豊かな登場人物たちとの距離感も、時に熱く、時に素っ気なく、危うく、儚く、移ろいやすく。そうしたデリカシーと重厚さのすべてを捉えるべく、著者のペンの力は全巻を通して、凄まじく圧倒的、かつ美しい。

     良い小説とは起承転結が明確だ、と改めて思う。振り返ってみれば、書かれたものに無駄は一つもなかった。すべてがすべてに関連付けられるものであった。まいった。謎解きにではなく、人間たちの綾なす偶然。偶然が産み出す、罪と、贖いに。そして何よりも愛に。父、妻、子、そして友への。

     心を揺すられるミステリ。数年に一度の傑作である。

  • 待ちに待った「64」以来の横山先生の小説。今までとは少し違った系統かなと感じましたが、警察物ではなく横山先生の新たな世界を感じられた気がします。

    内容としては、建築関係の話が主であり今まで、そういった知識がなかったので新鮮に感じました。タウト作の作品をネットで調べながら読み進めていく事をお勧めします。

    「自分が住みたい家を建てて下さい」この言葉の意味、自身の生い立ち、家庭問題、建築士としての仕事、全てが絡み合って素晴らしいストーリーになっています。後半になるにつれて真相に迫っていく感じ、主人公の仕事への熱量は今までの作品と同じく一旦読み出すと止まらなくなってしまう怒涛の展開は秀逸です。

    また、「ノースライト」という題名がとても綺麗で好きになりました。

  • 久々の横山先生降臨で発売日当日に即買いしました。小説ではそんなことしたのグインサーガ以来数十年ぶりでした。大体本が分厚いとぐったりしますが、持った重さすら愛おしい。ほっぺすりすりするくらいテンションマックスになりました。

    全く予備知識無しで読んだので途中から刑事とか出てくるんではないかと思っていましたが、今回は伝統の刑事物から離れて、設計士業界を舞台に色々な人間関係が入り乱れておりますが、そこはさすが御大。軽薄になる事無く人間ドラマを積み重ねでいます。致し方無い事なのですが、重厚さと引き換えにリーダビリティーが落ちる事がありますが、昔から横山作品は重厚な上に手が止まらず読み続けられるのが不思議。本作もまた重厚さと読みやすさが共存しています。

    えー、苦言というほどではないのですが、前作64でも感じておりましたが、横山作品は下調べ、取材を相当して隙がないのですが、その取材を生かした部分が少々冗長に感じる部分がありました。結局人間を書くのが異常に上手い人なので、感情のまま書いても名作を書けるはずなので、出来ればもう少し早めの次回作を期待したいです。

  • 私にとって未知の分野である建築の世界に引き込まれました。Y邸をそしてそのノースライトを見てみたいと思いました。登場人物それぞれが、順風満帆な人生でなく(勿論そんな人はごく少数でしょうが)、それ故に他人には触れられたくない傷を持ち、悩み苦しみどこかでバランスを取っている登場人物たち。また建築界の巨匠タウトにも重要な役割を持たせ、ストーリーに時間的な拡がりを感じます。主人公が「自分が住みたい家」として設計し建てたY邸が、施主の吉野が理由を語った時の真実に心が動かさせました。

  • いや、もう面白いの面白くないのってめちゃくちゃ面白いですよ、さすがとしか言いようのない。
    完全なる正三角形(完全じゃない正三角形があるのかどうか知らないけど)のミステリ。
    謎解きも面白さも、ストーリーも、そして美しさも兼ね備えた最高の一冊。そう、美しいんだよね、美しいミステリ。
    そして建築に関して詳しくなっちゃうおまけつき。
    これはもう売れる気しかしない。

  • 「ノースライト」
    横山ミステリー史上、最も美しい謎。


    “「64」から六年。平成最後を飾る長編、遂に登場”という触れ込み。往々にして出版社が打つこの手の戦略は頭の片隅に置く程度が良い。が、今回はこの触れ込みは正しい。美しい謎も適切に思える。ミステリーではあるものの、愛する人に遺す想い、父や家族への想い、自らの生き様への想い等、遺す・宿す熱量を感じた。


    ミステリーの観点からすれば、何故Y邸から家族は消えたのか?何故タウトの椅子が置かれていたのか?が二大トピックである。この二つの特大な謎は、張られた伏線の回収と共に見事に解決される。また、青瀬が所属する岡嶋設計事務所が取ってきたコンペに絡む謎は、きな臭い雰囲気を出しながらも、青瀬の再生に大きな影響を与える。


    とは言え、やはり一番の推しは、前述の熱量だと思う。強い負荷をかけられた主人公の青瀬の葛藤が物語を牽引するが、その青瀬の対父、対岡嶋(社長)、対Y邸、対家族への想いの熱量が、更に物語を加速させている。読んでいて感情移入は必死のキャラクターである。


    また、青瀬とは犬猿の面もある岡嶋にも注目だ。コンペに絡む謎は、事務所を巻き込む大騒動になる。そんな中、岡嶋は抱えてきた葛藤にピリオドをつけ、メモワールのデッサンに全てを注ぎ込む。青瀬と並び、重要なキャラクターだ。


    溢れるばかりの熱量が湧き出るのは、メモワールのプレコンペに挑むところだろう。遺すだけでなく、想いを紡ぐ意思の下、青瀬を始めとする事務所のメンバーの頑張りには、拍手しかない。


    最後にタウトであるが、こんな風に関わってくるとは思ってなかった。めちゃくちゃ重要である。建築とは、ただの住む場所ではなく人生の様々な面を象徴とするものであり、同時にタウトの意思がしっかりと生きている。それが、ミステリーと青瀬達キャラクターに密接に絡んでいる。


    個人的には、2019年一番おすすめになると思う。

  • 一見何でもないような素材を扱っての小説でふーんって読んでいたけど、中盤からそれまでに散りばめたピースがどんどん集められはめ込まれ、一枚の「絵」を書き上げていく。そんな感じで読むほどに全景が完成されていく。謎が解き明かされたときにはゾッと気持ちのいい達成感で震えた。
    そうなんだよね、面白い小説ってのはただ、だらだら一本道を進むだけじゃだめなんだよね。読みやすい=面白いではなく、しかし、読み辛い=面白い訳でもない(ここ大事!)
    ピースを余すことなく、しかも細かいピースを最後まで大事に作り上げる作品、これが名作。面白かった。

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著者プロフィール

横山 秀夫(よこやま ひでお)
1957年東京都生まれ。国際商科大学(現・東京国際大学)卒業。1979年に上毛新聞に記者として勤務。『ルパンの消息』でサントリーミステリー大賞佳作を受賞したのをきっかけに退社。以後フリーランスライターとして活動。1998年「陰の季節」で第5回松本清張賞を受賞し小説家デビュー。2000年『動機』で第53回日本推理作家協会賞(短編部門)受賞。2002年『半落ち』が「このミステリーがすごい!」1位となり、第128回直木賞候補作となるが、そこで起きた様々な論議から、直木賞決別宣言を出すに至る。『半落ち』は2004年に映画化されて高い評価を得ている。その後、2004年『クライマーズ・ハイ』で第1回本屋大賞第2位、映画化されヒット。2013年刊行の『64(ロクヨン)』で第10回本屋大賞第2位、「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」各1位を勝ち取り、大ヒットとなった。

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