東京島

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1939
レビュー : 430
  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104667024

作品紹介・あらすじ

32人が流れ着いた太平洋の涯の島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても、助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か、楽園か?いつか脱出できるのか-。食欲と性欲と感情を剥き出しに、生にすがりつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、読者の手を止めさせない傑作長篇誕生。

感想・レビュー・書評

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  • 現代版アナタハンの女王+α     

    極限状態の人間心理を中心に描く作品。現実世界ではアナタハンという関西弁で考えると少しおかしみのある名称の無人島の中で、日本人のみ男女比32:1、この作品では外国人も含み35:1で取り残される話。現実の事件は7年間(1945 - 1951)続き、その間に死因不明も含め男性が12人死んでおり、事件として本や映画になっている。

    時を現代、主人公を中年女性とし、外国人を混ぜたところなどには、当然、作者の意図がある。男性の弱体化が印象深い。主人公はたった一人の女性ということで当然性愛の対象になるのだが、早々に半数以上から相手にされなくなる。彼女の魅力の問題だけではなく、生存競争にすら斜に構える男性陣が描かれる。最低限、生きていくことができれば、趣味に走ったりする。しかし、一方的に男性を貶めているわけではなく、史実と違い、全ての権威がこの女性に集まっているところから物語は始まり、分権と集権が繰り返されるが、たった一人の女性はその時々の思いつきによる適当な行動から凋落していく。その様は、自業自得として描かれており、意識と多少の能力があっても、自立もしなければ、責任も取らない現代女性の批判のように見える。多分、主人公に好意は持つ人は少なさと反比例して、こういう人っているだろうという共感は多いのでないか。史実には薄い外国人の存在と対比して考えると、日本人総体のひ弱さの批判は一つのテーマだと思われる。

    作品の中での、生きる縁(よすが)は、信仰、狂気、仮想敵の設定による内部統制が印象的だが、同性愛も含め恋愛と国際交流があり、結果としての出産、そして子孫の存在が示されて物語が終焉していることも興味深い。日本には移民政策と出産率の向上が必須ということを示しているのか。物語の後半に残るべくして残っているものを振り返ると、音楽、踊り、信仰、家庭、歴史、教育、宗教と政治の緊張関係による統治、もしかしたら鎖国政策や適度な排外主義が必要ということなのだろうか。是非はともかく日本にとって必要なもの良いものを意図的に残したなら、なかなか興味深い。現実の事件は、後に女優として映画に起用される魅力を有する20代の女性だったが、この作品が40代のほどほどの魅力の女性だったことが、読者の興味を過度に性愛的な部分に留めず、暗喩に気付かせるためだったとすれば、作者は大変上手くそれに成功している

    気持ちの良い話ではないので読み返さないが、ファンタジーめいた結末に微妙な救いがあることは佳かった。映画では男女比が22:1になってしまうのだが、そうすると主人公の惨めさが減じるなぁ、と映画化の情報を見て思った。主人公が木村多江(痩せてるじゃんビミョーだけど)、鶴見慎吾(途中で死ぬ役)、窪塚洋介(とにかく際に居続ける役)が出演するようだ。

    +αを意識して読むのが面白いと思う。

    2010/06/21、読了。文京図書館から借用。

  • 東京島ってなんか臭そうな島だったな、って読み終わって思った。
    体液の臭いと、果物の腐臭がしそう。

  • Wed, 11 Aug 2010

    久しぶりに小説を買ってきた.
    帯のエロさに惹かれた・・・・.イヤほんと.

    孤島に30人ほどの男と,主人公の女が生きていく話.
    ただし女は40半ば.
    たった一人の女と言うことで
    特別な地位にあるが,年齢とともに徐々にその立場も危うくなり,権力維持にもがく.

    人間のいろんな面がみえつつ,文化の相対性や,役割分化のダイナミズムがうまく描かれていて,興味深い.

    正直,そんなにエロい話はないのですが,
    人間の「生(ナマ)」感があっていいですね.

    自分の価値を形成している文化的背景がなくなったら
    自分もどんなキャラになるのだろうか?と考えると,現実のもろさにクラっとくる.

    そんなあたりが,面白い一冊です.

  •  これはまた・・・えぐい。ぐろい。こわい。
     無人島に漂着した31人の男と1人の女。食欲と性欲と感情むき出しの6年間。怖いよう・・・食べ物はネズミとかヘビとかイモリとかだし、蚊やダニや湿気にやられまくりだし、服もボロボロ、髪も髭も伸び放題の生活。怖いよう・・・
     その中でのトウキョウこと日本人と、ホンコンこと中国人の確執、女である清子をめぐる争い、とにかくどれもこれも、ぐろかった。
     
     ただ、続きが気になったのも事実。これ、どうなるのーどうなるのーっ、て久しぶりに夜更かしして、がーっと読んでしまった。勇気出して、最後まで読めてよかった。

  • オチ辺りがなんか一度じゃ理解し切れなかったけど、展開が読めなくて面白かった。人間むき出しな感じがイイ。

  • 以前、直木賞を受賞した『柔らかな頰』を読んだが、あまり好い出来の小説と思えなかったので以後読む気が起こらなかった。たまたま本作を読んだが、あまり納得できない。よく言えば不思議な小説だが。この作者は小説は所詮嘘話と思っているのではないか?

  • 映画が公開されるということで、気になって読んでみた。桐野夏生の作品を読むのは、『I'm sorry,mama.』、新聞に連載されてた『優しいおとな』に続いて、三作目。後味が悪い作品はあまり好きでない。

  • 無人島に漂流した32人。
    31人の男性の中に、女性は1人だけ。

    そんな閉鎖的な環境では生きていく人達は人間の善意などより、
    表面上はある程度の人間関係を保ちながらも
    自分の性欲や欲望、利権を第一に生きていく。
    そういう人間の黒い部分を書いたら、
    やっぱり、うまいな~と思った。

    今回は桐野さんにしては文量が少ない気がした。
    本は分厚くなっても、もっと衝撃を受けるような悪意等を描いて 、いい意味で嫌な気分でもうちょっと読みたかった。

  • いわゆる漂流、無人島ものじゃなくて
    人間の集団生活とか、ネーミングの力とかに
    主題があった気がして、そんな実験を
    端から見ている気もして、
    なんとなく冷ややかにオモシロかった。

    イジワルの応酬ってカンジ。
    生きるってカンジ。
    わかったフリを止むなくしてるカンジ。
    仕方なく集団ってカンジ。

    集団よりも独りでいれるなら
    その方が強いかもね、
    当然のようだけど、読んでさらにそう思える。

  • OUTを書いた作者とは思えない駄作。内容は面白そうだったが、当て外れ。桐野夏生は当たり外れがあるから怖い。

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