抱く女

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104667048

感想・レビュー・書評

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  • 「死は最強」
    でも、学生運動ではなくセクシャリティに主眼を置いて読んだ。主人公の直子には生理的な嫌悪感を覚える。グロテスクの和恵には嫌悪と同時に深いシンパシーを感じたのだけれど、こちらは純度100%の嫌悪感。タイトルに反して『本人は「抱く女」のつもりだったけれど周囲からは「抱かれる女」だと認知されていた』直子が、自ら「抱かれる女」である自分、あるいは自らに課せられたジェンダーを肯定するまでの物語であるように感じた。恋愛とは今までの自分を培ってきた家族や友人、そして大学生という身分を捨てるほど素晴らしいものか?そもそも、録に学校にも通わず目的意識も持たず、ただ毎日を消費するだけの、この物語に登場する学生たちにも同じく学生身分である者としては不快感しか感じない。これが「青春」小説?なにかの冗談でしょう?と。

    ただ、驚くべきことがあるとすれば、この作者は「そうではない」人たちの気持ちも理解した上でこの物語を書いるということだ。
    以前私はグロテスクの和恵を「容姿に、学歴に、自意識に、社会に、ジェンダーに敗れてしまった未来の私のifだ」と書いた。和恵と直子は絶対に相容れない対極の存在であると思う。けれど、本書の直子を「私自身だ」と言う作者は、絶対に作者とは違う人種であるはずの和恵や、それと似たような感情を抱く人々の気持ちを理解している。たとえば私には、和恵のことは理解できても、直子のことは絶対に一生理解できないというのに。
    作品としては全く好みではないし、もう二度と読みたくない(なぜか発売日にハードカバーで買ってしまった)けれど、作家というより人間としての桐野夏生すげえ、一体何者なんだ、と思ってしまう。
    ただやっぱり小説としては全く好みではないし到底納得のいくラストではなかったので☆2で。

  • あらすじと帯に書いてある『この主人公は、私自身だ──。』という文章が印象的な作品である。1970年代をテーマに繰り広げられるのだが、生まれる前の話のため、日本赤軍や浅間山荘事件などを詳しく知らないため、上手く話に入り込めないまま、読了をしてしまった。個人的に桐野夏生作品は当たり、ハズレが激しい気がする。今回の作品は好き嫌いがきっぱりと分かれるだろう。

  • 個人的にあまり好きじゃない。タイトル的には男に抱かれるのではなく自分が男を抱いてるって事でいいのかな?とにかく時代設定も古くて学生運動とかピンとこないし、好きな男とどうなるかもわからないのに大学辞めて家も出るとかあまり意味がわからない。

  • (2016.05.29読了)
    1972年9月〜12月、吉祥寺にあるS大学に通う女子大生のお話。実際、作者自身がこの時期成蹊大学の学生です。
    桐野夏生はけっこう好きでよく読みますが、これはいまひとつでしたね(-。-;
    学生運動、ジャズ喫茶、麻雀…、私とは世代が違うせいもありますが、それにしても主人公の考え方、生き方に共感できないというか、むしろ嫌いです。
    自分が歳をとったのでしょう「ちゃんとしろよ!」と説教したくなります(^_^;)

  • ウーマンリブ、学生運動の背景があるけど、この時代設定は必要なのかどうか。ハタチの直子はどんな時代に生きてもこんな感じで生きてる気がする。
    バカ女、イライラする、言い訳ばっかりだな…と何度思ったことか(笑)多分それを狙ってるのかな。

    もっと女の人が戦う話なのかと思ってたので期待はずれだった。

  • 読み終えてタイトルを見た時、抱くというのはただ男女のことでなく他のもの-家族とか自分なりの考えとかもさしてるのかな?とふと思いました。
    ただ、ストーリー自体はそういうのを感じさせる内容という訳でなく、ピンとこなかったというのが正直な感想。
    それは多分、この物語の舞台となった時代-1972年というのが私が青春を過ごした時代ではなく、学生運動というものもいくら考えてもピンとこない、どういう意味があったのか?何故あの時代に若者たちは過激な運動にはまっていたのか?さっぱり分からないからだと思う。

    この物語は内ゲバ、学生運動、60年安保なんていう言葉が日常で、身近に感じられた時代に青春を過ごした一人の女子大生の1972年の9月から12月までの物語。
    麻雀、ジャズ、タバコ、男、そして学生運動、そんなのが日常で身近で、そんな中で時に女性の権利を主張したりして生きる女性。
    ・・・と言っても彼女はそれほど強い意志があるという風でもなく、流されるように生きている。
    象徴的に身近な男と誰とでも寝てそれを特別な事とも思ってない。
    だけど、「公衆便所」などと影で言われていると知り、傷ついたりする。
    彼女は男に抱かれるのではない、自分が抱いているのだと思っている。
    そして、次兄が学生運動で命を落としそうな時も男の事を考えている。

    主人公が兄が死にそうな時もそれよりも男の事を優先で考えているのには嫌悪感を一瞬感じましたが、後でそんなもんかもしれないな・・・と思いました。
    それほど若いという事は時に残酷で、自分のほんの小さな周辺の事しか見えてなくてその世界が全てで、そして、そんな自分をまだ知らなかったりして・・・。
    だから自分は「抱く女」だと彼女は主張しているのだろうと思う。
    彼女の世界を彼女は抱いている。

    なんてことを考えたりするけど、時代も彼女の生き方、考え方もどうにも私にはピンとこず、全く面白いと思えない本でした。

  • 2016.1.26読了
    この時代のモノは苦手なのかもしれない。(図書館)

  • 1972年、二十歳の直子の生き方。
    世の中は学生運動真っ只中。

    抱かれる女ではなく抱く女になりたいと思いながら実際には大学も辞めてしまうただの流される小さな女の子。
    たぶんお話のその後も甘いままで何も選べない人生なんだと思った。でも、だいたいの人はそう。

  • 【「抱かれる女から抱く女へ」とスローガンが叫ばれ、連合赤軍事件が起き、不穏な風が吹き荒れる七〇年代。二十歳の女子大生・直子は、社会に傷つき反発しながらも、ウーマンリブや学生運動には違和感を覚えていた。必死に自分の居場所を求める彼女は、やがて初めての恋愛に狂おしくのめり込んでいくー。】

  • 時代背景云々が、はいりこめない問題ではない気がする(´・ω・`)

著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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