セックスボランティア

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104690015

作品紹介・あらすじ

障害者だってやっぱり、恋愛したい。性欲もある。その思いを満たすための「性の介助」の現実とは?彼らの愛と性に迫るノンフィクションの意欲作。

感想・レビュー・書評

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  • 残念ながら日本ではまだまだ障害者に対する認識や共存に対して知識や社会環境は遅れているのだろう。

    そんな中で多くの日本人が表立って語る事のないテーマの一つが「性」。

    健常者は当たり前に恋をし、セックスもし、結婚もし、子供ももうける。

    同じ人なのに、じゃあ障害者は?

    確かにそうだ。

    恥ずかしながら自分自身が現在五体満足に生活をしている中で、向き合ってこなかったテーマ。

    しかし、考えればすぐにわかる。

    人として、障害者にも健常者と同じ欲はある。

    どうすれば解決するのか?

    私には答えられないが、健常者であるが故に目を背けてはいけない問題なのだと思う。

    全ての人にとって平等に人として生きる為の権利をいかにして確立していくか。

    非常に大きなテーマであるが、著者と同じ年に生まれた一人として、同い年の女性がこのテーマに真正面から対峙した事に尊敬の念と拍手を贈りたい。

    説明
    内容紹介
    障害者だってやっぱり、恋愛したい。性欲もある。
    ──その思いを満たすための「性の介助」の現実とは?
    彼らの愛と性に迫るノンフィクションの意欲作。
    内容(「BOOK」データベースより)
    障害者だってやっぱり、恋愛したい。性欲もある。その思いを満たすための「性の介助」の現実とは?彼らの愛と性に迫るノンフィクションの意欲作。
    内容(「MARC」データベースより)
    障害者だってやっぱり、恋愛したい。性欲もある。その思いを満たすための「性の介助」の現実とは? 彼らの愛と性に迫るノンフィクションの意欲作。『週刊朝日』連載「週刊ノンフィクション劇場」をベースに追加取材、加筆。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    河合/香織
    1974年岐阜県生まれ。フリーランスのライター。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒業。セクシュアリティや児童問題などのノンフィクションを執筆。『セックスボランティア』がはじめての単行本(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  •  障害者の性について取材したルポルタージュ。かなり衝撃的な題材と言える。が、正直なところ、著者の力量が題材に比して不足してたと感じた。

     著者の力不足を感じた一番の理由は、著者の性(特に男性の性や性欲)に対する理解が表層的だということにある。どうも著者は、性についてはお互いの愛情に基づくセックスという唯一の正解があり、他は全て擬似・代替行為と考えているようなのだ。が、男性にとっての自慰行為は、単なるセックスの代替行為ではない。自慰行為そのものを究極まで突き詰めたものの一つにTENGAがあると言えるが(『TENGA論』http://booklog.jp/users/tomiyadaisuke/archives/1/4812439051参照)、そういう同じ食べ物でもラーメンと寿司くらい違うオナニーとセックスを、「性行為」というカテゴリで均一化してしまっているため、インタビューを重ねても著者の考察が積み重なっていかず、結局何が言いたいのかよくわからないまま終わっている。

     書き手の力量には問題があるが、インタビュー内容については色々考えさせられることがあって面白かった。
     著者は「障害者と性」という問題枠組みで取材を重ねているが、そこで立ち現れる問題は、障害者・健常者に関係なく存在する一般的な性の問題だったりする。
     例えば、第3章では、障害者専門のデリヘル嬢をする聴覚障害を持った女子大生が取材対象である。が、彼女は彼氏に内緒でデリヘル嬢をやっており、そのことについて彼氏に対してあまり後ろめたさを感じていないようなのである。著者はその感覚に戸惑っているようだが、こういう戸惑いを覚える話は、援助交際をしている女子校生たちのインタビューなんかでよく遭遇するものである。
     また、性欲があるからといって、じゃあ性的サービスを…という訳にはいかない。性的サービスを受ける障害者だって人間なんだから、こと性のことにおいて誰でも良いなんてことはない。ある組織に登録されているセックスボランティアは40代から60代なので利用していない、というのは、熟女好きでない限り、まぁわかる話である。更に、障害者同士のカップルは性行為をするに際して介助が必要なケースもあるが、介助してくれる人が男性だと「妻の裸を見られたくない」と夫が思ったり、女性でも妻が嫌がったりすることがあるが、これも理解に苦しむ話ではない。裸や性行為前後の姿を見られたくないのは、障害の有無には関係ない。
     あと、性的サービスをしている内に、性的サービスをする側・される側に感情的な問題が発生することもあるという。これも当たり前と言えば当たり前の話で、セックスから始まる恋愛もあるように、セフレに情が移るみたいなことだって、考えれば十分にあり得ることである(むしろお金で割り切った方が心理的に後腐れが無いという場合もあるだろう)。

     障害者の性事情を読み進めていると、どんどん人間の尊厳の本質に迫っていくようなことを考えさせられていた自分に気がついた。性欲の処理だけを考えるやり方は、そのサービスを受ける障害者の人格や尊厳のことをちゃんと考えてる? と思う一方で、尊厳を重視する余りに障害者の性欲を軽視ないし無視するようなのも違うし…おそらく、もっと選択肢を増やす中で答えが見えてくるのだと思うところである。

     著者は、障害者の既婚率が思っている以上に高いことや、性風俗に関する一般的知識など、もう少し基礎知識を押さえた上で取材に当たるべきだったと思うが、扱ったテーマとインタビューについては色々考えさせられるものが多かった。ちょっと内容的にはハードだが、少しでもこの問題に興味があれば一読を勧める。

  • これだけの内容が書けるのは、著者の人柄とコミュニケーション力の高さだと思う。

  • 高校3年生の時に読みました。当時としては男女の関係に5体満足の状況に置ける情報しかなかったのでかなり戸惑った記憶があります。「健常者」とされる僕らから見たら「そうでない」人に対する性的支援の機関(というのか?)の存在があるということが一番の驚きで(それもおかしな話ですが)した。

  • 性とは、本来大変個人的な体験であり、自分が生まれてきた意味を確認する作業である。

  • 気になっていた本だったので借りてみた。
    こういうことがあるなんて考えたこともなかったし、想像したことさえなかった。無知な自分が恥ずかしい。

    第八章の205ページ。
    「障害者について、世間全般がもっと自分のこととして切実に感じてくれないと変わるのは難しいでしょう。障害者に自分はならないだろうってそう思っている限り、障害者が抱えている問題は自身のこととしては感じられない。せめて想像はして欲しいのです。」

    ここがすごかった。
    震えた。
    この一文に尽きる。
    今まで考えたことさえなかった…。

    想像できないし両者ともに隔てられている、壁がある。触れてはいけないと思っていたし、日常では見ることのない見えない部分。

    普通校、特別支援校とかに分けないで一緒に助け合いながら教室で過ごす…っていうのが、いちばん大事なんじゃないかな…と思った。性教育も後進国だし障害者に対する偏見だって未だ根強く残っている。(それでも最近NHKで番組がチラホラとあって、光が当たり始めてきているけど…。まだまだ足りない。)
    障害者と性という二つが置かれているこの場所がいちばん誰にも知られていない部分なんじゃないか。

    あと198ページの「両親の不仲のしわ寄せが子どもにいかないようにしよう、と結婚する際に、心に誓いました」ってところも衝撃的だった。

    弱者にしわ寄せがいかないようにすれば少しは生きやすくなるのかもしれない。とても考えさせられたし、知らないことが多く書かれていて忘れられない内容だった。

    ☆「怒ったほうが負け」という言葉に心を打たれた。212ページ(本当に強い人だと思った)

  • 衝撃的な題材だったので読んでみた。(大学の図書館)

    障碍者の性についての話。誰にだって性欲はある。しかし、障害を持っているとなかなかその発散がしにくい。そのたまに今は障碍者専用のデリヘルやソープが存在するらしい。

    私も先日、出会い系に登録してたら障碍者の方からメールが来た。「挿入はなしでいいから、触らせてください。私は車いす生活です。」という感じのメールだった。少しびっくりした。結局、家から遠いところの人だったからメールは無視してしまった。この本を読んでいたら自分の行動も少し違っていたかもしれない。。。まあ、売春はいけないことだけどね。

    性欲って誰にでもあるし、だれかと肌と肌を重ねたいというのは、ご飯を食べたり息するのと同じ生理現象だと思う。だから私は援助交際自体を悪だとは思わない。彼氏が風俗言っても嫉妬はしないだろうな。(援助交際はやっぱりいやだけどwww)

    障碍者専用のデリヘルも、障碍者を食い物にしているという批判はあるけれども、必要としている人がいるならは必要悪なのではないか。お金を払い満足しているならそれでいいと思う。また、無償で行為を行う団体もあるそうだがそれはちょっと違うんじゃないか。そこは健常者と同じ対応で良くないか?

    うーん。考えがまとまらない。もっと考えてみよう。

  • 障害者相手であれば性的サービスを提供することは誉められるべき行為?ボランティアならよいのか?思うように性交渉できない障害者のためのセックスボランティアが賞賛されるべきなら、色んな事情で性交渉の相手を求めている健常者に性的サービスを提供する一般的な性風俗も、どう違うのか。そもそも性交渉が「ボランティア」って?性欲の解消のためだけの商業的売春、社会性が加わった社会的売春、代理恋人療法だなんて区分けはホントに可能なのか…。
    オランダでは、障害者に性交渉のための助成金を出す役所がいくつかあるらしい。

  • これまで読んで来た本のなかで、なかなか忘れられない本。
    これからも忘れたくないので、登録しました。

  •  障害者の恋愛観、セックス観に迫るノンフィクション。
     ハズレ知らずの多彩なインタビューが本書の見どころ。命がけでソープランドに通う高齢者や、出張ホストを利用する女性障害者、障害者の性処理を手伝う健常者の女性、障害者専門の風俗店の経営者に、自身も障害を持つデリヘル嬢など、関連プレイヤーの取材は多岐にわたる。
     全体的に重苦しい空気が漂う中、障害者夫婦の語る結婚生活がいい感じに抜けていて、アンバランスでおもしろい。
     しかし、どのような事例紹介よりも、冒頭に男性の社会福祉士が、手足が不自由な男性障害者のマスターベーションの介助をすることを、「おおっぴらに語られていないだけ(中略)別に珍しいことではありません」と語るのがいちばん印象に残った。
     タブー視されてきたテーマに向き合った本書の吸引力は凄まじい。時間が経つのを忘れて読みふけってしまった。絶対的な解は読後も得られない。深く考え込んでしまうことうけあい。

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著者プロフィール

河合 香織(かわい・かおり):1974年生まれ。ノンフィクション作家。2004年、障害者の性と愛の問題を取り上げた『セックスボランティア』が話題を呼ぶ。09年、『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』で小学館ノンフィクション大賞、19年に『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』で大宅壮一賞および新潮ドキュメント賞をW受賞。ほか著書に『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』『帰りたくない 少女沖縄連れ去り事件』(『誘拐逃避行――少女沖縄「連れ去り」事件』改題)、『絶望に効くブックカフェ』がある。

「2023年 『母は死ねない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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