ナンバーワン・コンストラクション

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104695034

作品紹介・あらすじ

建築史家の若手教授、彼に弟子入りする小説家志望の青年、教授が片思いの愛を捧げる少女、少女を残酷に支配する婚約者の美青年。現代の都市の話題の建築を舞台に、交わされる、永遠、生と死、愛、芸術を巡る会話。男と女、男と男、意表をつく展開を遂げる恋愛関係。人間が生きるための空間、建築、その新たな可能性を探し、現代の絶望に立ち向かう、若き新鋭の画期的長編。

感想・レビュー・書評

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  • 支配する/支配されるの関係は、
    自己卑下、自己嫌悪、自己蔑視と傲慢さを両立させる。
    その両方をもった状態では他の人から人気があったとしても、認めて欲しい相手は唯一無二の相手だけ。
    だけどそれさえも無意識で、自分のことも相手のことも信じることはできない。
    支配する/支配されるの関係から永遠に罰を延期されるという赦しを贈与されたN講師は、今までずっと鉄棒の前にいた頃から変わらないと思っていた少女であり女神が、聖女か娼婦、もしくは赦しを与えてくれる母に変化したように感じる。
    死へと確実に向かう中で、それに飲みこまれず、魅了されず、厭世的にならないためには、互いに分節と更新を繰り返す必要がある。
    どういう関係でもお互いに影響され合って生きている。
    絶対に救えないと思える絶望も一度崩してナンバーワンコンストラクションとして作り替えられたことで、大きな肯定や生の希望を見出すことができる。
    N講師が好きだった。

  • アイロニカルな死生観を持つ者どうし不思議な同族意識を感じている教授と講師。建築分野への熱烈な興味がないことを正直に白状したうえで教授に師事する素直な青年。倒錯した関係で講師と深く結びつく少女。変転する4人の複雑なパワーバランス。
    年月が経てば古い屋敷が蔦に飲まれるように死と同化していく講師、そんな虚無的な思想の彼が愚かで純粋な青年に無意味さを教えるため引き合いに出す建築がディズニーランドというのははっとするほど綺麗。ありふれたカフェやいつもの手作りシチュー、料理がちっともおいしそうに見えないのも印象的。
    建築世界に自分にはとうてい信じられない永遠を見出し、それを語る教授。あらゆる部分で構造と世界と人間心理を結びつけて独特な雰囲気で書かれた小説なのだけれど、どうして終盤で主題の一部を説明っぽく語らせているんだろう。唐突に一部分の答えだけを開示された意図がわからず驚いてしまった。
    こんなに食べ物や食事をどうでもよさげに描きながら物語がカフェでの教授の一目惚れ(異様な量のマヨネーズやはちみつを入れてしまうウェイトレスが気になったから)に始まり同じく彼の恋で終わるのもうつくしい。一見荒唐無稽なのに、いつしか登場人物たちの理屈に丸め込まれていくのが楽しい小説。

  • 読みやすいのが唯一の誉めどころ。
    もー何が面白いのかサッパリわからない。

  • 教授、小説家志望の院生、教授が片想いする少女、暴力的な少女の婚約者を通じて、愛とは、生とはを描いた物語。

    自らの思想への陶酔、暴力的な愛情表現を扱うのはこの作者の十八番なのかなと。
    登場人物をアルファベット、あるいは「女」などの抽象表現だけで表現するところは特徴的。

  • MとSって実は狙ってるのかな・・・。

    永遠の愛、不老不死。人は永続するものに憧れる。だが永遠とは円環であり繰返しを意味する。それならば永遠の中では大切なことも重要でなくなり私たちは繰り返しの永遠の中で生きていかなければならない。その矛盾した憧憬から脱却するために私たちはどう生きるべきなのか考えさせられた。

  • 人と人との「永遠の愛」と「赦し」について、宗教染みた内容を建築に喩えて描いているのは斬新だし新鮮。そして、最後に辿り着くのはとてもシンプルな理論。だけれど、最後までイマイチ入り込めなかった。

  • 「レギオンの花嫁」より読みやすかった。
    みなさんのレビューにも書いてありますが、愛の形と赦しについての話です。
    決められた「愛」の形が「幸福」なのか、解らない。
    これもレビューで触れられていたことですが「ピカルディーの三度」とは、クラシック音楽用語で短調の曲が、最後の音でいきなり長調になって終わる、というものです。宗教音楽とか、バロック・古典派に多いかな。
    このピカルディーの三度は一種の赦し(神の目線から、なのかもしれませんが)に思えて、割と好きです。余談ですが。
    「ピカルディーの三度」読んでみたいと思います。

  • なんとなく「ピカルディーの三度」みたいなドロドロ同性愛ものだと思っていたら、全然そんなこと無かった。
    今回は「赦し」が大きなテーマとなっている。
    最後にどかんとテーマを説明していて、観念的な作品だけれど割とわかりやすい。
    傲慢に見える講師が実は自己卑下だったり、暴力を甘んじて受け入れることが聖なる行為になるなど、くるりと物事を裏返すのは『ゼロの王国』に通じるかな。

  • 外国文学や翻訳のようなもって回った言い回しが独特。

  • 昔読んで、2回目。

    やっぱりよく分からない(´-ω-`)
    自分の捉え方とは違う世界観。

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著者プロフィール

1976年生まれ。1999年、「二匹」で第35回文藝賞を受賞しデビュー。2004年、『白バラ四姉妹殺人事件』で第17回三島由紀夫賞候補、2005年『六〇〇〇度の愛』で三島由紀夫賞受賞。2006年「ナンバーワン・コンストラクション」で第135回芥川賞候補。2007年『ピカルディーの三度』で野間文芸新人賞受賞。2009年「女の庭」で第140回芥川賞候補、『ゼロの王国』で第5回絲山賞を受賞。2010年『その暁のぬるさ』で第143回芥川賞候補。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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