そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104717019

感想・レビュー・書評

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  • 最初の一本だけでなら★5つ。モーリッツの銅版画。ラストの老婆の台詞で物凄い衝撃を受けました。これは傑作だと思う。「あなたのお好きなモーリッツの世界ね。わたしはあれがそろそろ現実になりはじめているような気がする」これはエッセイだと聞いたけれど、他の作品に比べてリアリティが段違い。モーリッツの画を見ていたらもっと楽しめたでしょう。他によかったのはプールサイドで、ゆうすず。逢瀬、もわりかし面白いと思います。他は正直あまり好みではないというか、変に間延びしているような印象をうけました。読み終わるのに凄く時間がかかってしまい、三章、四章は特に辛かったです。後で読んだからかもしれないけれど。とくに最後、タイトルになっている「そこでゆっくりと死んでいきたい気持ちをそそる場所」は詩自体が良いと思えず作品全体が霞んでしまった気がしました。詩がなかったら成り立たない話なのですが、主人公が態々出掛けていくほどの引力がそこにあるとは思えなかったのです。登場人物に感情移入できないとやはり私には辛いかな。

  • 得難い短編集だ。シカケは一流である。含まれる詩がセンチメンタル過ぎない野趣があり、いい。松浦に限らず文学はいいなと思える。『モーリッツの銅版画』『逢引』『そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所』が特に良かった。『半島』といい、装丁がまた気に入った。黒で染められている。

  • 幻想的で官能的で、そうして不穏な短編集。装丁が綺麗。黒を基調としていて版画のような、葬列みたいな雰囲気。
    プールサイドにてが一番好きだった。終わりかけの夏の気だるい死の感じ。

  • まず装丁がとても素敵。1話目のタイトルにもなっているフィリップ・モーリッツの銅版画(作者所蔵)が使われているのだけれど、とにかく細部までじっくり眺めたくなる。小口も黒でオシャレ。ただ、うっかり読んでいるうちに手が汗ばんだりすると指先がうっすら黒くなり、さらにその手で無意識にページを押さえたりしようものなら自分の指紋がくっきり本の余白に(苦笑)これはちょっと困った。

    さて中身は短編集。とくに連作として書かれたものではなく掲載誌も掲載時期もバラバラ、それを系統の似通ったものごとに3編ずつ4章に分けて合計12編。まるで最初から計算されて書かれたかのようにきれいに収まっている。

    エッセイ(ノンフィクション)とフィクションの境界が曖昧なような作風のものが多く、私小説のようでいてやっぱりフィクション。とくに非現実的なことが起こるわけではないのに、どこまでも記憶の底に沈んでいくようなふわふわした感じが常にあって、とても心地よかった。

    ※収録
    Ⅰ 黄昏の疲れた光の中では凶事が起こる(モーリッツの銅版画/ゆうすず/プールサイドで)
    Ⅱ 冷たい深夜の孤独は茴香の馥りがする(虻/桃/まず小さい丸いものが)
    Ⅲ 猿と記号の間に過剰な言葉が繁茂する(あやとり/名前/singes/signes)
    Ⅳ 詩は意味と無意味の境界で揺らめいて(同居/逢引/そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所)

  • 死がまとわりつくような短編集。独り身の男にまつわる物語が殆どになっている。小口は真っ黒で極めて禍々しい装丁の本だが、過去、薄暗さ、性、母、といった繰り返しでてくるテーマは、大抵過去を彷徨っている独身男性の精神的要素をよくあらわしていて、意外に読みやすい。ただ、ホモけ多すぎ。著者が年なためだろう、独り身の男を中心にしながら、恋人経験のない主人公を登場させない所が、時代の違いを感じる。作中の詩の凄みに呆然。

  • 「不可能」ほどではないけれど、いくつか、¨そこそこ¨という程でもない程度にまあまあ入り込めるものがあった。松浦寿輝さんの作品はとにかく全部読んでみたい。そしてその中で、僕にとって気に入ったものがあれば、それをまたゆっくり再読してみたい。

  • 難解っ!!(笑)

  • いい雰囲気を醸し出していた

  • やっと読めた。あー、長かった。

    確か、桜庭一樹さんの読書日記を読んで、手にとったものじゃなかったかしら。

    全体的に昏い。
    暗い、ではなく、昏い。
    死とか虚無感とかが色濃く匂い立つ、短編集。

    この人の詩集や長編小説も読んでみたいな。

  • 読了できず。
    短篇集。「虻」まで読んであきらめた。

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著者プロフィール

1954年生れ。詩人、作家、評論家。
1988年に詩集『冬の本』で高見順賞、95年に評論『エッフェル塔試論』で吉田秀和賞、2000年に小説『花腐し』で芥川賞、05年に小説『半島』で読売文学賞を受賞するなど、縦横の活躍を続けている。
2012年3月まで、東京大学大学院総合文化研究科教授を務めた。

「2013年 『波打ち際に生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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