そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 152
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104717019

感想・レビュー・書評

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  • 得難い短編集だ。シカケは一流である。含まれる詩がセンチメンタル過ぎない野趣があり、いい。松浦に限らず文学はいいなと思える。『モーリッツの銅版画』『逢引』『そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所』が特に良かった。『半島』といい、装丁がまた気に入った。黒で染められている。

  • まず装丁がとても素敵。1話目のタイトルにもなっているフィリップ・モーリッツの銅版画(作者所蔵)が使われているのだけれど、とにかく細部までじっくり眺めたくなる。小口も黒でオシャレ。ただ、うっかり読んでいるうちに手が汗ばんだりすると指先がうっすら黒くなり、さらにその手で無意識にページを押さえたりしようものなら自分の指紋がくっきり本の余白に(苦笑)これはちょっと困った。

    さて中身は短編集。とくに連作として書かれたものではなく掲載誌も掲載時期もバラバラ、それを系統の似通ったものごとに3編ずつ4章に分けて合計12編。まるで最初から計算されて書かれたかのようにきれいに収まっている。

    エッセイ(ノンフィクション)とフィクションの境界が曖昧なような作風のものが多く、私小説のようでいてやっぱりフィクション。とくに非現実的なことが起こるわけではないのに、どこまでも記憶の底に沈んでいくようなふわふわした感じが常にあって、とても心地よかった。

    ※収録
    Ⅰ 黄昏の疲れた光の中では凶事が起こる(モーリッツの銅版画/ゆうすず/プールサイドで)
    Ⅱ 冷たい深夜の孤独は茴香の馥りがする(虻/桃/まず小さい丸いものが)
    Ⅲ 猿と記号の間に過剰な言葉が繁茂する(あやとり/名前/singes/signes)
    Ⅳ 詩は意味と無意味の境界で揺らめいて(同居/逢引/そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所)

  • いい雰囲気を醸し出していた

  • 表紙タイトル惚れ。この方の長編も読んでみたい。短編集という形をとってますがどちらかというとエッセイ風?一番最後の表題作「そこでゆっくりと死んでいきたい気持をそそる場所」が一番好きです。死んだ叔父の詩と合わせて、その「ゆっくりと死んでいきたい気持をそそる」場所を描写していくのが凄くツボに入りました。うめぇ。本当に若い女の子の甘くて粘っこい匂いがしてきそうだった。「逢引」も面白かったな。

著者プロフィール

1954年生れ。詩人、作家、評論家。
1988年に詩集『冬の本』で高見順賞、95年に評論『エッフェル塔試論』で吉田秀和賞、2000年に小説『花腐し』で芥川賞、05年に小説『半島』で読売文学賞を受賞するなど、縦横の活躍を続けている。
2012年3月まで、東京大学大学院総合文化研究科教授を務めた。

「2013年 『波打ち際に生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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