「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104738045

感想・レビュー・書評

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  • 開成高校といえば、毎年3ケタの東大合格者を出す超進学校。そこの野球部が今、熱いらしい。

    練習は週一回、守備は無理しない、相手より多い大量得点で勝つ、武器は下手くそなこと、といういわゆる高校野球とは到底結びつきそうもないセオリーで、この野球部で甲子園に!いや、もとい、打倒強豪校!そうすれば甲子園も夢じゃない、かも!と、日々練習に励む青木監督と生徒たちを取材したルポである。

    いや~、申し訳ないけど笑いました。
    生徒たちはみな、心底大真面目に野球に取り組み、自分に足りないものを考え、必死に努力しているのだけれど、頭脳明晰な生徒たちなだけに頭で考えることが先に走る。監督も、そんな彼らにわからせるために理詰め理詰めで指導するのだけれど、それがどうにもちぐはぐで、生徒たちが真面目なだけにどうしても可笑しくなってくる。
    筆者と生徒のやり取りも、野球の話のはずなのに禅問答のようになり、可笑しいやらもどかしいやら。
    ところが、夏の甲子園に向けての地区大会第一戦、対江戸川高校との試合では、ひたむきな彼らの姿に思わず涙…。

    正直なところ、後半は新鮮な驚きのようなものもやや薄れて、新しい展開がほしくなったりもしてしまったが、発想を切り替えるって大事なことかもな、何事も「こうでなければいけない」なんてないんだなと、しみじみ。

    いつか甲子園の大舞台で開成高校球児たちの試合を見てみたい。
    その時も、試合前の守備練習でノックをチップしちゃうんだろうか。



    …あれ?甲子園は試合前の守備練習あったっけ…??
    とんと高校野球も見なくなったので忘れてしまったけど、まあいいか。

    • koshoujiさん
      こんにちは。
      この本、面白そうですね。
      読んでみようと思います。
      こんにちは。
      この本、面白そうですね。
      読んでみようと思います。
      2013/04/05
    • bokemaruさん
      koshoujiさん、花丸とコメントありがとうございます!
      この本を知ったのはテレビ番組の取材でした。
      テレビでは青木監督の取材が主だったの...
      koshoujiさん、花丸とコメントありがとうございます!
      この本を知ったのはテレビ番組の取材でした。
      テレビでは青木監督の取材が主だったのですが、その指導理論に圧倒され、さっそく読んでみることに。
      青木監督の、柔軟な発想とゆるがない指導、生徒たちをまっすぐ受け止める度量の大きさに、この監督の指導を受けられる生徒たちは幸せだと思いました。

      koshoujiさんが楽しんでくださるとうれしいです。
      2013/04/06
  •  ひぐちアサさんの『おおきく振りかぶって』、田中モトユキさんの『最強!都立あおい坂高校野球部』、コージィ城倉さんの『おれはキャプテン』、さらに言えば岩崎夏海さんの『もしドラ』など、「甲子園など程遠い高校野球部が予想外な戦略を立てて甲子園出場を目指す」というのは野球ストーリーにおいて、一種のお約束となっている。とはいえ、それらはみなフィクション。現実には起こり得ない……と思ってみたら、現実にもそんな野球ストーリーを実現しようとする高校野球部があった。それがタイトルにもある「開成高校野球部」だ。

     そうは言っても、開成高校野球部はまだ甲子園に出場していない。冒頭で高橋さんが述べているとおり、本書は「途中経過」である。いつか噴火するだろう活火山の動向を見守るように、開成高校野球部の動向を見守っているわけである。これで本当に開成高校が甲子園に出場する日が来るとしたら、間違いなくそのストーリーは語り継がれるものとなるだろう。その日が来るのが楽しみだ。

     さて、本書はそのような期待を煽るという意味で、非常にワクワク感のある一冊ではあるのだが、開成高校の生徒への偏見を持たせるように作られてしまった感も否めない。いわゆるステレオタイプ的に生徒の受け答えが紹介されているのである。すなわち、開成の生徒は理屈っぽく、あまり流暢なコミュニケーションを得意としていない。それが、本書にある開成高校生の様子である。
     本書は開成高校の生徒は「ガリ勉くん」だ、という偏見――もしかしたら、現実にそうなのかもしれないが――をより強固にする本でもあるのだ。その点は非常に残念であった。


    【目次】
    1回 エラーの伝統
    2回 理屈で守る
    3回 みんな何かを待っている
    4回 結果としての甲子園
    5回 仮説の検証のフィードバック
    6回 必要十分なプライド
    7回 ドサクサコミュニケーション
    8回 「は」ではなく「が」の勝負
    9回 ややもすると甲子園
    謝辞

  • 高橋秀実さんの本は、何冊も読んでいるが、いつもどうにも居心地が悪い。おもしろいのかと問われれば、まあおもしろいのだけど。この本が話題になるのは何故なのか考えてみたがよくわからない。

  • 話題の本だったので借りましたが予想以上に面白かった。みんな頭がよくて素直・・・。いえ、きっと日本を支えてゆく人になってゆかれる方々なんでしょうが・・・微笑ましかったです。下手と言い切ってしまうあたりがすがすがしい。その中での勝ち方を考えている監督も素晴らしいですね。
    なんでも理屈で考えてしまうがゆえに一歩遅い感じ、なかなか意志や感情の表現にたどり着かず回り道のインタビュー・・・野球はよくわからなくても下手な部分も臨場感があり、想像できて楽しく読めました。
    開成は1度運動会に行ったことがあって、余計に親近感もあり楽しく読めました。ちなみに私の印象では棒倒しに燃える男子高校生たちは決してもやしっ子ではなかったです。
    挫折感とか考えて努力することは絶対にこの先に生きてくると思うので、今後もがばってほしいものです。いつか開成が甲子園初出場!というニュースを見たい。

  • 小説ではなくノンフィクション。
    ドラマでは福士蒼汰さん演じる赤岩くんが言った「苦手と下手は違う」は今でも私の心のバイブルだ。

  • ニノ主演ドラマの原作、ということで早速図書館で借りてみた。

    「超進学校・開成高校野球部がひょっとしたら甲子園に出場できたかも」と聞いた著者が、この野球部を取材したノンフィクション。
    クスクス笑える箇所がたくさんあって、面白かった。ドラマはどんな仕上がりになるのか今から楽しみ。

  • これは、ノンフィクションですよね?
    小説?と思うほど、ばかばかしくて…笑えます!

    超ドヘタな、開成高校野球部…
    週に1度しか練習しない。守備はめちゃくちゃ…
    でも、バッティングだけは、強い!
    5番打者くらいまでが、打席が良いのはわかりますが…
    7番8番9番も、強打者のため…
    「こんなチームの打順したのバッターに打たれる?」
    と、相手チームのピッチャーを凹ませ…快打線に持ち込む作戦…
    なので、勝つ時もコールド、負ける時もコールド。

    ふざけているのかな?
    これ本当に話???

    だんだん読んでいくうちに、イライラしてきますが…
    笑いながら、読みおわりました。

  • 面白い面白いと聞いていたが、読んだらやっぱり面白かった。
    特に前半は、唖然とするような、でもなるほどと納得できる理論がたくさん登場して、なんか蒙を開かれた感じ。

    かなり「子供っぽさ」のない部員たちに著者はそれなりの違和感を抱いていたみたいだけど、僕は逆に、「おお、こんな子たちが将来の日本を背負うのか。いいじゃないか」と感心することしきりだった。

  • 一見すると常識はずれのように見える超攻撃型の開成高校硬式野球部。しかしそこには、合理的な理由と確固たる意思を感じる。彼らの取り組み、そして残してきた結果を見ると、高校野球の面白さ、奥深さを改めて感じた。部員一人一人にもスポットが当たっており、彼らの言葉には示唆に富むものが多かった。

  • 平成19年から今まで、開成高校野球部を取材した記録をまとめたもの。

    本書は、野球部の練習内容や試合のレポートというより、監督や選手達の野球に対する考え方などを丁寧に紡ぎ出しているところに特徴がある。
    そして、その発言の数々が、なかなか面白い。

    まず、監督だが、これはタイトルにもあるとおり、主に「弱者の兵法」
    を説いているのだが、その表現が面白い。

    例えば、開成には、相手の攻撃を抑えられる守備力がないから、10点取られる前提で一気に15点取る打順を考えなくてはいけない、そして、その打順とは、1、2番に最も打てる強打者をおき、3~6番まではそこそこ打てる選手、8、9番は、長打力のある1,2番の前にチャンスを作る出塁率の高い選手を充てるという具合。

    通常、点を取られない守備力を鍛えようというところからはじめそうなものだが、開成の場合は、10失点は仕方ないと割り切ることで、多少のエラーでは動揺しないという逆説的な効果が生じたりする。いや、これは、監督は意図的にやっているのかもしれない。

    また、選手達はといえば、いかにも開成高校生という感じで、かなり理屈っぽい。スポーツの場合、頭より身体が先に動くということがありそうだが、彼等にはそのような雰囲気は微塵も感じない。
    また、監督のアドバイスや指示をどれだけ理解しているかについても、かなり心許ない。

    しかし、開成は、平成19年に東東京大会でベスト16に入るなどなかなかの強豪である。本書を読んだだけではその躍進の理由がイマイチよくわからなかったが、間もなく始まる夏の甲子園の予選での開成の活躍が楽しみである。

  • 週1回の練習で予選ベスト16とか32に入れるってすごいね。
    理屈の理解と反復が大事ということみたいです。

  • 博打的高校野球?

    甲子園常連校の高校野球は普通ではないのは確か。練習量にしても異常。そうなると、普通の高校生のチームが勝つためには一般的なセオリーでは通用しない。裏に10点取られる前提で一気に15点取るようなハイリスク・ハイリターンの打順を考える。守備ではあまり差はつかない。ダブルプレーなどはあえて目指さない。練習時間は最低限に留める。週1回で必要十分。これで平成17年度の東東京予選でベスト16!目から鱗が落ちた。。。

  • あの開成高校の野球部。少ない練習量でも、勝つ方法とは...。頑張ってほしいなと思う。
    実際の部員はこの本を読んで、どう感じたのだろう?

  • ここに出てくる生徒さん達の、著者からの質問への答え方がどうにも変。理屈っぽいわけではないのだけれど、 何かがズレているのか欠けているのか?
    比喩ではなく現実に歩いている時に目の前しか見ていなくて本当に視野が狭いらしく、危ないよ〜と心配になる。
    もっと広い意味でも視野の広い大人に成長してねと願う。
    しかし嫌な感じがしないのは、たぶん素直な子達なんだろうということがうかがい知れるから。

    牽制球でアウトになる様や、ランナーコーチがランナーにうまく指示を出せない様のくだりを読むと、失礼ながら「バカなの?この子達は頭がいいのだからもうちょっと何とかなんないかね?」と思ってしまうのだが、そこはしっかり監督が「これをバカと言わずして何と言う、バカ」「バカ集団」と連呼してくれているので読んでいて安心する。
    監督の言葉や指導の仕方が的確で、この子達の良さを引き出しているので、とにかくこの監督の監督っぷりが面白い。

  • 勉強会の課題図書。

    進学校として有名な開成高校野球部の話。
    野球のやの字も出てきなそうなのに、大勝したりするという。

    週に一回しかグラウンドでの練習ができない開成高校。
    練習の量がどうしたって足りない中でいかにして質を上げるか、何に注力して練習するか。どうやったら勝てるか。

    守備は捨てる、攻撃に特化して大量得点をつけて勝つ。接戦での勝利なんていらない。
    監督が先導しながら、生徒一人一人が考えて、試行錯誤しながら(本文の言葉を借りるなら実験と検証を重ねながら)野球に取り組んでいく。


    こういう「一人一人が考えて行動する」「強豪校と同じ舞台で勝負しない」「いわゆる常識をもう一度見つめ直す」なんてことは、仕事だったり、日常でも活きてくる考え方だなと思った。

  • もしかしたら勝つのではないか期待させてコールド負け、、考えすぎて一周余分にまわったような話だった。嫌いじゃない。

  • 上司が読んでおり、貸していただいた本。

    野球をしてきた私にとって、野球に対する持論はあるが、この本の言う内容に驚きつつ理解できた。

    練習が少ないからこそ、効率のよい練習をするのは当たり前。守り勝つ野球ではなく超攻撃型。エラーは当たり前。マナーを守ればOK。と信じられないことを言うが、それも理にかなっており、強さの秘訣なのだろう。

    野球に対する視野が拡がり、取り組み方を再考させられる著書であった。

  • 面白いです。野球も仮説と検証か。弱者の戦略とか人間心理とか考えさせられる。

  • 進学校である開成高校の弱小野球部が、なぜ強豪校相手に勝利をしたり、15-2の様な大量得点コールドゲームで勝利したりできるのか。
    著者が、実際に生徒に取材し、練習風景を見、そこで感じたことを率直に書いた内容になっています。

    生徒や監督の、自分自身やチームへ対する考察を読んでいると、「なんだか流石、頭のいい人たちは考えることが論理的だ…」と感じるのですが、
    読み進めていくうちに、そこまで理詰めで考えなくてもいいだろうに…とも思えてきて、その論理的な部分に納得しつつも、くすっと笑ってしまうようになりました。
    スポーツや部活動には、一般的に”熱意”や”根性”等といった、内面からあふれ出る気合的なものがイメージとして付きまとっているためか、
    彼らの、冷静で他人事のような物言いに、「おいおいそれでいいのか」と突っ込まずには居られないのだと思います。
    著者の語り口も軽妙で、そこがまた笑いを誘う。

    しかし、開成高校野球部への著者のまなざしは真摯であり、
    心から彼らを応援していることが伝わってきます。
    読み切る頃には、開成高校野球部のファンになってしまい、
    著者と一緒に、「がんばれ!」と彼らを応援してしまうようになるかもしれません。

  • とてもあたたかく柔らかな気持ちになった。

著者プロフィール

医師、医学博士、日本医科大学名誉教授。内科学、特に免疫学を専門とし、東西両医学に精通する。元京都大学ウイルス研究所客員教授(感染制御領域)。文部科学省、厚生労働省などのエイズ研究班、癌治療研究班などのメンバーを歴任。

「2022年 『どっちが強い!? からだレスキュー(3) バチバチ五感&神経編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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