室町無頼

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104750061

作品紹介・あらすじ

腐りきった世を変えてやる。前代未聞のたくらみを一本の六尺棒で。超絶クールな大傑作エンタテインメント。応仁の乱前夜、富める者の勝手し放題でかつてなく飢える者に溢れ返った京の都。ならず者の頭目ながら骨皮道賢は権力側に食い込んで市中警護役を任され、浮浪の徒・蓮田兵衛は、ひとり生き残った用心棒を兵法者に仕立てようとし、近江の古老に預けた。兵衛は飢民を糾合し、日本史に悪名を刻む企てを画策していた……。史実に基づく歴史巨篇。

感想・レビュー・書評

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  • ふやけ切る組織
    世の苦しみを知らず貪り食う幕府、宮内を転覆させようと二人の元武士が首魁となり掻き乱す一揆を起こす、一方はその阻止する軍団となる。先陣を司る無頼の人材を先見し、育て数万人の百姓らの不満と苦言を一揆にぶつけ戦う。結局、武力に勝る侍軍団には刃が立たないがその動機付けと行動には感服する。今の日本の国民には酷い税金を取り立て自分たちには裏金等を仕組み、金と権力を持つ腐った政治家を見るのは正に室町幕府末期の武士と宮中人に映るのは「いざという時に尻込みし、性根がふやけ切っている」に似ている。

  • 「われら無頼のありようが分かってたまるか」
    恥も外聞もない。無様でもよい。泥水を啜ってでも、這い蹲ってでも生きなければ。

    室町時代中期、幕府の体制は治安も経済も崩壊寸前。
    町には流民や飢民が溢れ返り、盗賊・人殺し等が多発する無政府状態。
    そんな理不尽な世の中をぶち壊すため、氏も素性も失くした男達が命を張って幕府に戦を挑む。
    時世に渇を入れ、己の信念の元、必死で生きる男達のなんとカッコよいことか。
    どこまでも強く、また愛嬌も持ち合わせた男達に魅せられた。
    「世の中には、銭で買えぬものもある」
    こんな青くさいセリフにも男気を感じた。
    戦国時代の到来を予感させる読み応えたっぷりの物語だった。

    ただ、2/3はとても面白く夢中になったけれど、ラストの物語の土壇場・土一揆シーンはちょっと失速した感じ。
    主役の才蔵が優等生すぎて、ちょっと違和感を感じる。
    才蔵がもっとヤンチャな青年だと更に面白くなるのに…惜しい。

  • 面白かった。
    これも冒頭の文章から、捕まった感が強かったんです。
    六尺棒で自分の居場所を作っていく、才蔵の物語。

    分厚い本に、何度かひるんだのですが…
    捕まってしまえば、映像をみるように
    ひゅんひゅん読んでしまいました。

    兵法者って、血も涙もない
    感情なく命の火を消す人、のイメージだったですが
    突き抜けたものを持っている人たちは
    このように瞬時に判断できるんですね、きっと。

    骨皮道賢も蓮田兵衛も
    芳王子も棒使いの師匠も、抜群に格好いい!
    明日の身もわからないところにずっと身を置くと
    こんな風になれるものなんでしょうか。

    室町時代の話ではありますし、
    バンバン人が亡くなっていきますが
    私は進路に悩んでいる人にオススメします。
    才蔵のように何かをつかめるといいなと思います。

    ちょうど才蔵の水車小屋の修行のくだりを
    読んでいるとき、雪のあまり降らない私の地域に
    大雪が降りました。
    通勤の時、小舟に立った才蔵のイメージで
    凍りついた道で力を抜いたらずるっと滑りました。
    本を読んでいると自分もその気になってしまうのが
    本当に困ります・・・。

  • とてもかっこよくおもしろかった。
    てっきり応仁の乱の話だと思っていたけど、前日譚的なものですね。
    飢饉や疫病で苦しむ農民や牢人たちが土一揆起こす話で、わーほんと題材が地味。
    それでも確かにその時代その場所で必死に生きて足掻いて何かを成そうとしてた人たちはいるわけで。
    この先行きの時代を考えると、ますます世は荒れて乱れて戦国時代に突入していくわけですが、なんか最後は新しい時代の始まりって清々しさがあって、それこそが彼らの生き様なんだなと思いました。

    才蔵くんが見出されて修行に明け暮れ成長していく様は、ヒーローマンガみたいでおもしろい。
    そうだな、やたらとかっこいい大人に囲まれて戦って少年が成長してく少年漫画の王道を行く話やん。
    男たちもかっこいいけど、紅一点芳王子ねえさんもかっこいいよね。

  • ならず者の頭目・骨皮道賢、浮浪の首魁・蓮田兵衛。応仁の乱前の腐りきった世の中を変えるために、命を張った男たちの物語。とにかく、道賢や兵衛はもちろん、兵法者へ成長を遂げていく才蔵やその男たちを暖かく、そして強く支える芳王子など、登場人物がとても魅力的。完全な作り話かと思えば、少ないながらも、歴史的資料は存在するということで、とても興味深い作品。垣根涼介と言えば、現代の作品のイメージが強かっただけに、意表を突いた面白さだった。

  • とても読みやすい文体で、
    あっという間に読み終えました。

    最初の人物説明が長いな~と思いましたが
    才蔵の修行のシーンは、中々に面白く
    師匠がスターウォーズのヨーダに思えてきました。

    戦いの場面は、読んでいてとても辛かった。

    何故、人は戦うのか殺し合うのか、何のために死ぬのか
    いつも、そんな疑問が沸き上がるのだけれど、
    その時代の人々が、命を燃やし尽くした生き方だった。
    そんなことが、ふと心に浮かびあがりました。

    師匠は、分からぬことは分からぬままで生きてゆくことだとありました。安易な答えに引きずられないように、考え続けていこうと思います。

  • おもしろかった!

    時代を変えるには、人と人を繋ぎ、最初の波をおこしていく、蓮田兵衛のような人物が必須なんだろうな。

    さて、今の世では?

  • これは面白いですよ。
    ダ・ヴィンチで紹介されていたので、ついうっかり読んでしまった。

    戦国時代の物は数多く書かれ、読んでもいますが室町時代ってなると数が少なく、「応仁の乱」の言葉は受験勉強で知っている程度。

     この「室町無頼」は当時の時代背景をしっかり描いています。なぜ「応仁の乱」が起こったのかも分かります。
     且つ、貧しく生まれた者が修行を経て強くなる、ヒーロー要素も入っている。
     そして予想外に、哲学的?道徳的?な部分が私にはビリビリ来た。生とは、死とは、宗教とは、妙にストンと納得できてしまった。
    垣根さんの著書も、もっと読んでみたいです。

  • 応仁の乱前夜という渋い時代が舞台。
    エンターテイメント性に溢れ、映像としても楽しめそうな作品。
    しかし、遊女と浪人の組み合わせは、ロマンがあるなぁ。

  • 本作含めて著者の歴史もの3冊は、どれも他の歴史小説にない魅力がある。特に本作は応仁の乱前の下剋上勃発初期という、あまり時代小説には登場しない舞台設定で他2作以上に縦横無尽に垣根流が溢れている。今後も垣根氏の時代もの楽しみにしています。

  • ハードボイルド時代小説という感じだろうか。
    光秀の定理と同じように史実に沿いつつ違う一面から描かれる人物像は実はカッコよかったりする、というのが本当かもというのも気持ちいいではないか。
    ワイルドソウルまた読みたくなった。

  • 室町時代を私はよく知らず、地味な印象の時代です。この物語も腐った幕府と堕ちた武士に憤る無頼と百姓たちの戦いの記録であり、地味なテーマです。それなのに無頼たちのなんと魅力的なことか。才蔵という少年の可愛らしさたるや。安穏な未来を望めない立場を生きる男たちの、一瞬の命の煌きを描いている、超エンタメ作品です。戦国時代の端初となった、史実と実在の人物の物語とのことですが、魅力的な登場人物たちの他の物語も読んでみたいものです。近江と京都というよく知る地が舞台であることも楽しめました。

  • 登場人物がちょくちょく、グッとくることを言う。それがなかなかいい。

  • ボリュームはあるが、面白くて一気読み。
    信念を持ち、ぶれることなく生き抜いていく姿が、痛快。剽軽な男や、敵ながら憎めない男など、快男児ばかりで、だれもが魅力的。世が乱れ、新しい勢力が台頭していく、時代の空気が生々しく感じられる。
    清々しいエンターテイメント作品。

  • 室町時代、応仁の乱以前というあまり取り上げられてこなかった時代の物語
    当時の武士は争乱に巻き込まれて簡単に牢人になる。牢人は士官を希望しても滅多に叶えられることはなく、底辺を生きるしかなかった。
    京都の町は餓死者で溢れ、一方で私腹を肥やす商人もいる。町の治安は最悪で農民は重い税に苦しんでいる。

    貧しい牢人の息子才蔵は餓死しそうだったが、鍛え抜かれた足腰と棒さばきを見込まれて、最初は用心棒に雇われ、次に道賢に拾われる。兵衛に預けられて棒術の達人の下、厳しい修行を受けさせられる。

    道賢の女だった遊女芳王子と兵衛の関係も、お互いの事を思い合う情が感じられる。

    才蔵、道賢、兵衛、芳王子、棒術を教えてくれた老人、才蔵が命を救った牢人たち、みんなあまりにストイックでかっこいい。

    映像が浮かんでくるようなワクワクする作品。
    才蔵のその後が気になった。

  •  歴史小説で最も必要とされるのは、豪放磊落、豪胆大胆なキャラクターだ。

     飢饉のたびに虫けらのように人が死んでいく世の中で、何ゆえこの時代に生きねばならぬと世を恨んだ少年がいた。
     かつて武士だった家は家督争いで落ちぶれ、食い扶持を求めて京に流れたものの、そこは同じ穴の狢の巣窟だった。

     一人身を立てるため、油売りの天秤棒で鍛錬し自己流の棒術を身に着けた才蔵は土蔵の用心棒に雇われたが、そこに窃盗集団が押し入り周りの仲間は皆殺しにされた。

     土蔵を襲撃した窃盗集団、実は京の警護に当たる骨皮組の仕業だった。
     警護職だけでは食っていけず、今回の土蔵襲撃を企てた。要するに、警察による押し込み強盗である。

     骨皮組の頭領、骨皮道賢は最後の一人になっても向かってくる才蔵に何かを見出し、半殺しにして本拠の伏見稲荷に連れ帰ったのだった。

     京の外れに流れ者が集まる家がある。家の主の蓮田兵衛に、道賢は才蔵を託す。
     そして、兵衛も才蔵に何かを感じ取り、棒術の師匠に才蔵を預け一人前の兵術者に育て上げる。

     
     この地獄のような世を生き抜くには、

     一人は力で、
     一人は頭で、
     一人は集団で、

     世は室町、地は京の都。
     山城土一揆の号砲が鳴る。


     垣根涼介は「光秀の定理」で面白さを感じた。歴史小説を銘打っているが、その実はモンティ・ホール問題を取り上げている。

     そして近作では山城土一揆というマイナーな歴史事件を題材にしているが、世の中をどうやって生き抜くかという自己啓発書に近い。

     「探すのではない。作っていくしかない。自分の棲む場所は、ということだ」
     「銭など、使わぬ限りはただの鉄じゃ。銭そのものは食えぬし、体が温まりもせぬ。代わりに食い物や住むところが回ってくれば、それでよい」
     という蓮田兵衛の言葉が特に印象に残った。

     経営者は三つのタイプに別れると思う。

     一つは自分の能力を極限にまで高める人、これは才蔵、
     一つは考えて考え抜き頭を使う人、これは骨皮道賢、
     一つは人と人とのネットワークを活用して大事を成す人、これは蓮田兵衛のこと。

     三人の、それぞれ違うタイプのキャラクターが生き生きとしている。

     そしてラスト、土一揆のクライマックス。今までの下積みがあってこそ盛り上がる。

     
     歴史小説が好きだ。メジャーな事件ではなく、マイナーな事件にも主役がいた。
     生き生きとしたキャラクターとともに、山城土一揆というマイナーな事件が頭に刻まれた。

  • 面白い時代劇、ただし江戸時代じゃなくて、室町時代っていうのが味噌。応仁の乱直前の京の混乱時代を舞台にしたもので、オリジナリティに富んでいる。

  • 室町時代を背景にした歴史小説を読んだのは初めてだと思う。足利幕府も最後の頃、農村では飢饉が続き、京都の街には飢えた流れ者や浪人があふれ荒廃していた時代。主人公は、流れ者として京都にやってきた少年。最初は棒手振りをしていたのが、気がつくと棒を武器として用心棒をしていたという少年。この少年の成長物語なのだが、魅力的な登場人物がたくさん登場する。荒っぽい戦いの場面が続くのだが、先が気になって、どんどん読み進めてしまう。面白かった。

  • 正直、歴史モノとして物足りないかなぁ。
    具体的には、歴史モノには作家の入れ込みが蘊蓄開陳という形でしばしば表出するものですが、この作品はそれが弱い。
    おそらくは史料の読み込みがまだまだ足りず、その結果、重厚さが不足している、物語が単層になったのだろうと推察します。
    当方如きが失礼な指摘ではございますが、歴史モノに期待するのって史実をベースにした上での作家の構想力ですし。

  • 時代ものって読みにくいー。という先入観を払拭してくれた一冊。

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著者プロフィール

1966年長崎県生まれ。筑波大学卒業。2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。04年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞の史上初となる3冠受賞。その後も05年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞、16年『室町無頼』で「本屋が選ぶ時代小説大賞」を受賞。その他の著書に『ヒート アイランド』『ギャングスター・レッスン』『サウダージ』『クレイジーヘヴン』『ゆりかごで眠れ』『真夏の島に咲く花は』『光秀の定理』などがある。

「2020年 『信長の原理 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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