自壊する帝国

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104752027

作品紹介・あらすじ

ソ連邦末期、世界最大の版図を誇った巨大帝国は、空虚な迷宮と化していた。そして、ゴルバチョフの「改革」は急速に国家を「自壊」へと導いていったのだった-。ソ連邦の消滅という歴史の大きな渦に身を投じた若き外交官は、そこで何を目撃したのか。

感想・レビュー・書評

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  • 前著「国家の罠」が逮捕されて以降のことが中心であったが、この「自壊する帝国」は著者の外交官人生の原点とも言えるソ連駐在時代の事が主題になっている。佐藤優は逮捕されて有罪判決を受けてもさらに多くの人々を引きつけて止まない。それは佐藤さんの人となりに起因するところが大きいが、その人となりを構成しているものの大きな要素として「神学」があるのではなかろうか。それが「信仰」ではなく「神学」であるところが大きなミソである気がする。佐藤氏は人とのつながりや信頼関係の基本を原理原則を曲げないことに置いている。自分の掲げた原理原則は死んでも曲げない。そのことの価値の分かる人間であればたとえ立場や主義主張が違っていてもリスペクとしあい強固な信頼関係を築いていける。ただしその決してぶれない個人の原理原則がどこまで純化していくか、またそれを元にどのように周りと関わっていくのかということに「神学」という学問がかなりするどい武器になってくるのではないかと感じた。

  •  ソビエト連邦の崩壊に立ち会った著者の、いわゆるスパイものではない諜報活動の要諦がつぶさに分かる。
     インテリジェンスとは、こういうものなんだ。

  • 2017年1月2日読了

  • 佐藤さんが外交官になってモスクワにふにしてソ連が崩壊していく過程を書いてる。モスクワ大学の話とか、バルト三国の話とか、実際いた人だから知ってる面白い話が結構あった。

  • 「ソ連建国の父レーニンは、西側の外交官はすべてスパイであると考えていた。語学力が弱くてはスパイとしては使いものにならない。従って、”スパイの卵”である日本外務省の研修生が、できるだけロシア語が下手になるような特別コースがモスクワ大学には用意されていた。」p.42

  • 元駐ソ外務省専門職員佐藤優氏による、ソ連崩壊前とその後の実録。
    読んでいて映画のようでドキドキして、ページをめくる手が止まらなかった。
    モスクワ大学に入ってから彼の専攻である”神学”で徐々に人脈を広げていく様子がすごいなあと思った。留学に行ったときに改めて思ったけれど、”言語”(言語学ではない)は専攻するんじゃなくて他に経済や文学を専攻して、その上で言語を学んだほうが専攻話に花が咲くと思った。今回の佐藤氏も神学専攻だったことが彼の外交に大きく貢献していると思う。

    ・本の中のウォッカの飲み方(ロシア人はお酒を飲んだあとでも考えがブレない人を信用する)
    ・水着のポスターや手に入らないお酒での人脈作り
    ・定期的に相手と連絡を取り続ける
    ・外務省で信頼できる友人を数人作っておく
    ・直接自分に利がないと思っても、連絡は途絶えないようにする
    ・ソ連崩壊時にコインを買い占める

    など彼の行動には本当に感心した。外交官は皆彼くらいのことをやっているのかなあと思った。この本を読んで外交官ってかっこいいと思う一方、自分ならこんなことずっとできないから外交官は無理だなと思った・・・(笑)

  • 「ソ連は帝国だ。だから権力が均質ではないんだよ。モスクワに権力が集中しているということは、地方では権力がスカスカということだ。」

    あぁ、なるほどねぇ。

  • 元外交官佐藤優氏による、ソビエト連邦崩壊直前、直後の回想録。モスクワ大学を出発点に徐々に人脈を広げ、共産党中枢に食い込んでいく過程が丁寧に描かれている。
    また、崩壊寸前のソビエトの社会状況やそれに関わる反体制派の人々がどのように考え、活動を行なっていたのかを知る事が出来る。通常、この種の西側の本には事実関係は書かれても、ソビエト崩壊という事態を、反体制派や共産党要人がどの様に事態を受け止め、感じていたのかを書いた本はあまり無いように思う。佐藤優氏が外交官の職責を超え、これらの人々と人間として付き合った事がこの本の記述に深みを与えている。
    リトアニアの血の日曜日事件から始まる独立派、ソ連維持派の抗争。ソ連8月クーデターという極限状況での人間模様も、この本の見所だ。生死を賭けた極限状況で人がどう動くか、決定的な敗北に際して、人はどの様に振る舞うのか、その一端をこの本は教えてくれる。
    ロシアの現代史の記録というだけでなく、その中で描かれる極限状況で人間模様こそがこの本の魅力だと思う。
    ロシアの現代史に興味を持つ人々には、是非お勧めしたい一冊である。

  • 信念を持って、それを貫く。それがどういう結果になるかなんて、知ったことじゃないっていう野郎達の話。。。だったり、変わっていく野郎がいたりの話だったり。。。。外交官っていう枠を越えて、強い思いを持って立ち回る佐藤優って、どんな実像なんだろう。でも、本当にやりたいことではないって裁判後には言ったりするし。この人が政治家になったら凄いことになりそう。(ならないって言ってるけどね)
    耳慣れないロシア名と宗教の話がいっぱいで難しい部分もあったけど、とにかく面白かった。アントニオ猪木が酒を飲ませるところなんて、もう最高(^^)d

  • 前著「国家の罠」と合わせて読むと理解が進む。
    旧ソ連が崩壊に至る裏側を現地に深く入り込んだ外交官が記した、という一冊として色眼鏡なしで読むのが良い本でしょう。
    ここまで現場を駆けずり回っている外交官がどれだけいるのかはわかりませんが…
    ロシア人の生態があまりにも日本人と違いすぎるのが興味深いです。ここまで生活が違うと相容れない部分も多いんだろうなぁ。とか。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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