老朽マンションの奇跡

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104761036

作品紹介・あらすじ

「住みたい街No.1」吉祥寺で築35年のメゾネットを500万円で買って「ロンドンフラット」に再生!見棄てられたガラクタ物件をわずかな予算で理想の家に作り替え。不況の今だからこそ叶う住宅取得の裏ワザが炸裂する。あなたの住宅観を変える疾風怒涛のドキュメンタリー。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の住宅事情に一石を投じる問題の書。新築物件よりも中古物件を格安に自分に合ったリフォームで、という武勇伝が繰り広げられる。なによりも、その協力者(犠牲者?)の不動産会社営業、工務店社長の献身的な行動に感心。英国では100年以上住み続けられる家が日本では30年でお役御免という現状を嘆き、廃墟と化した公営住宅を国が補修して、もっと安く国民に開放した方が資源の無駄にならないという主張はもっとも。建設会社から多額の政治献金を受けている日本の政治家は、新築物件を販売する仕組みを死守しようと必死。リフォームで国民に安く住居を提供する、またリフォームに耐えられる物件を増やすための建築基準や税制の見直しなどやる気ゼロ。であれば、「安い理想の住まい」を見つけるには、著者のように諦めずチャレンジするしか方法は残されていないようです。

  •  著者は、「イギリスがどうしたこうした」という本をたくさん出している人。名前だけは知っていたが、著作を読むのは初めて。イギリスうんぬんの本にはまるで興味がないし。

     本書は、著者が吉祥寺の老朽マンションを格安で手に入れ、憧れの「ロンドンフラット」風にフルリフォームするまでの悪戦苦闘を綴ったノンフィクション。ただし、そのマンションは著者の自宅ではなく、自分が経営する出版社のスタジオ兼若手社員の住居にしたとか。

     築35年、45㎡のボロボロ・メゾネットが今風デザイナーズ・マンションに生まれ変わっていく過程がつぶさに描かれ、人気テレビ番組「大改造!! 劇的ビフォーアフター」の活字版という趣だ。

     だが、それだけに終わっていない。日本の住宅政策への批判と提言もちりばめられていて、社会派っぽい広がりもある本なのだ。

     それに、リフォーム終了までに次々と立ちはだかる壁やトラブルを乗り越えていく過程は、まるでドラマを観るよう。
     これから住宅を手に入れようとしている読者にとっては実用書だが、住宅に関心のある人なら読み物としても愉しめる本なのだ。

     私のところも中古マンションを買ってリフォームした口なので、身につまされる記述が随所にあった。
     ただ、我が家の場合、購入もリフォームも業者に全部おまかせしてしまったので、自分のこだわりをとことんつらぬく著者のパワーと粘りに終始圧倒されながら読んだ。
     「中古マンションを手に入れてリフォームしました」というだけの話が本一冊分の濃密な内容になったのも、どんな面でもけっして妥協せず、細部にまでこだわりぬく著者の姿勢があったればこそだ。私にはとてもここまでこだわれない。

     それにしても、老朽化していたとはいえ、「住みたい街ナンバーワン」の吉祥寺のマンションが500万円だったとはスゴイ。
     フルリフォーム費用も200万に値切り、計700万円で仕上がった「ロンドンフラット」風住居(カラーの口絵で詳細に紹介されている)は、完成直後に不動産屋から「これなら月額13万円ですぐに借り手がつく」とお墨付きをもらったとか。

     同じように「格安中古マンションを手に入れてリフォームを」と考えている人なら、一読の価値はある本。

  •  地元のことだから読んでおこうか、というくらいの興味で。知人から教えてもらって読んでみた。 ”奇跡”を起こすには、ここまでガメつくいかないとダメってことがよく分かる。自分には無理だなあ。

     老朽マンション。確かにワケあり物件ではあるが、1280万円を500万円に値切る!(驚) 馴染の仲介業者S氏の交渉術もあろうが、なんとなく納得できない(S氏がよく500万円までの値引きにつき合ってくれたものだ)。
     そのS氏の口利きで来たリフォーム業者には、見積り500万円を200万円に値切る!!(驚x2)。しかも、なにがあっても追加料金の発生なし。TV番組のビフォア・アフターを見ていて感じた「ありえない」感がつきまとう。TV番組は業者にすれば顔が売れるという宣伝効果もあり、あるいは施主からだけでなく番組からも出演料の名目でお金が出てるのでは?なんて勘ぐったりしていたが、出版会社を経営する著者のこと、本文中には出てこないが、業者にはリフォーム完成の暁には、本にして店名も出して宣伝しますから、くらいのことは言ったのではなかろうか。いや、むしろそれくらいのことを言っててほしいものだ。でなければ、この業者は単なる”いい人”だ。
    ※読後、情報を拾ったところ、初版本には業者名は明記されていたらしい(で、その業者、本書が出た頃には廃業していたという情報もあった。あらら…)。

     本書の主題、老朽マンションのリノベの間に差し挟まれる、同じく吉祥寺の新築マンションの買い叩きのエピソードも、なんだかなぁ。。。
     自分で買わないのに、知人2組を連れていき、同時に購入という条件で売れ残りの物件の大幅な値引きを要求。7000万円を3300万円と2900万円だったか(そもそも7000万円の値付けが高かったというのはあろうかとは思うが)。話をまとめて意気揚々の著者であるが、安いほうの購入者がローンの審査が通らなかったということで、結局は1組だけが購入。ローンの審査云々は、著者の責任ではないし、売る側の不動産屋の見立ても甘かったということではあるが、なんだかなあ。

     そもそも、こうした話を得々と書いている本書のトーンがなんだかなあ、なのであった。その物件も、Pxxxxxと冒頭の単語だけイニシャルにしてるけど、周辺の情景描写からどこのなんという物件かすぐに分かってしまう。住んでる人たちにも迷惑な話じゃないのか(でもないか、いつ誰がいくらで買って入居しようと関係ないっちゃぁ関係ない)。
     
     確かに、日本の住宅事情には大いに問題がある。これからの人口減もあり、中古物件の空室率もどんどん上がる。なのに昨今どういう風に吹かれてか駅前のタワマンが大人気だそうな。どんなところに住みたいかは、それぞれ人の価値観だとは思うけど、ちょいと目を覚ませよと思わないでもない。本書は、そんな世相に一石投じる意味はあるのだが、上記のような、してやったりの武勇伝を得意満面に語られてもな。

     著者のように、不動産に興味を持ち、業者S氏という人脈もしっかり築き、したたかな交渉術を持ってしかできないお話なので、真似してみようなんて思わないことだね。一歩間違えばクレーマー。性質の悪いお客として業界からマークされかねないよ。

  • 著者はイギリス関係の著作を多数執筆している出版社経営の方。こういう外国かぶれの方は好きではないのですが、読んでみました。吉祥寺のぼろマンションをイギリス風にリフォームする話がメイン。「ロンドンフラット」と称して著者が自慢げに映っている冒頭の写真は笑えます。いかにも経営者っぽい高飛車な感じが鼻につきますが、リアリティーがあり、まあおもしろかったです。

    ただ一番面白かったのはこのメインとなるリフォームの話ではなく、サブストーリーとなる部下のマンションを値切って半値で買う話。こんな話あるんですね。マンションの価格なってあってないようなもんだな、と思ってしまいました。というか、こういう安く変えた話は普通こっそりしておくのでしょうが、本に書いてしまう点はすごいですね。おもしろかったです。交渉術って大事ですね。

  • 何故に井形慶子さんはこれほどまでに住宅好きなのか?
    何はともあれ身銭を削って実践する...!
    すごみすら感じて脱帽。
    結果..不動産投資という面から見ても見習う事 大!
    東京R不動産を個人レベルで実践しちゃってる感有り。

    それを本にしちゃってる所も見習わねば...

    日本の住宅事情に苦言を発するとこも流石!

  • 口絵の写真を見て驚きました。職人の手に掛かるとビフォーアフターはこれほど変わるのか!

  • これは見事な再生ストーリー。中古マンション+リフォームで快適住環境を安く入手するという、当然の思考をあらためて認識させてくれた。というものの自分も妙なこだわり?から新築戸建のみで探し、ローンでへろへろというとほほ人生になっているとはこれいかに?!ということで本書の登場人物にならって、あたらな道へすすもうかと画策しはじめる次第。猛烈なインパクトがあった。
    リフォームに関して、優秀な業者を見つける、ということがいかに難しいかは理解できる。このまれな成功例にありつけるのか?心配なところはそこ。DIYですべてできる腕があればよいが・・・

  • 自分の家を持ちたくなった。
    近い将来、引っ越す予定の自分。
    どんな家に出会うのか楽しみだ。

  • かなり以前に読んだのですが、感動でした☆
    500万円で購入した老朽マンションが見事に甦り、写真を見比べ変わるもんだなぁ~と。
    購入過程も参考になりますが、住居に恵まれてなかった社員さんが住むことになるオチも良かったです~

  • 半分くらいはフィクション入ってそうだがなかなか面白い。
    実際には中古住宅のリノベーションにここまで手間と情熱を注げる人は多くないとは思うが、もっと積極的に中古住宅を再生・利用すべきというのは賛成。

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著者プロフィール

自ら取材、撮影をもとに書いたイギリスのエッセイの他、住宅論、日英文化論、恋愛など多岐にわたる。 住宅ノンフィクションでは、東京都下にイギリスで見たコテージ風の家を建てた「戸建て願望」(新潮文庫)。 「老朽マンションの奇跡」(新潮文庫)、「よみがえれ!老朽家屋」(ちくま文庫)などがある。

「2018年 『いつか一人になるための家の持ち方 住まい方 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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