よみがえれ!老朽家屋

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104761043

感想・レビュー・書評

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  • ハラハラドキドキ、そりゃ無理だよ…なんて声が出そうなストーリーに気持ちが入っていく。
    井形慶子さんの本は2冊目。
    初めに読んだ「老朽マンションの奇跡」では、あまりの内容に周囲の人にも読んでもらいこんなことあるかと議論したのを忘れられない。

    お金を払ってるんだから、その対価の家は正当なものである。本来はそうだけど、職人の技能は低下していたり、取ってつけたような欠陥の家もある。
    幸運だから不幸だからではないが、一定数そうしたものに当たる方もいる。
    井形慶子さんのマンションも、今回の一軒家も、自分で手繰り寄せているものがある。きっとホントはもっと…があるだろう。

    物価高人件費高騰、工事にまつわるものは何でも倍近くになっている。延ばし延ばしの補修案を更に思案している自身としては身に積まされる思いだが、夢がある井形慶子さんの住まい方に憧れてしまう。
    改めて人の縁と自分から取りに行く姿勢を忘れないようにしたいと思う。

  • ドキュメンタリーは、著者の体験に気持ち的に共感できないとまったく面白くなく、ページを繰る気がおきなくなるが、本書はまず読み物としてなかなか面白かった。このまま小説になってもおかしくないような、わくわくさせる展開があり、すらすら読めた。

    リフォーム経験がほとんどないのでよく知らなかったが、日本の「家」をめぐる状況には、構造的な問題がいろいろとあると初めて知った。どうして家がこんなに高いのか、家を手に入れるとなるとすぐ新築ということになるのか、なるほど目から鱗だった。

    ロンドンに住んだことがあり、ただその時は、みんな古い家を大切にするんだね、ぐらいにしか思わなかったが、英国人があれほど家を大切にするのには、日本とは逆の政策があり、それにより古家の市場価値、人々の考え、そして業界構造までもが違っていたとは。

    日本では、どうしても戦後復興の中で、新しいものがいいのだ、というスクラッチビルド的な風潮ができてしまい、家に限らず多くのものが捨て去られてしまった。そういった、世代から世代へときちんと受け継がれるべきだったものが受け継がれずに失われているのは、ほんとうに問題だと思う。

    日本でも、政策的な転換があれば、古い市場慣習を変えていくことができ、古いきちんと建てられた家であれば、再生して大切に使うということが可能なのだろうか。最近は大都会でも老朽化し放置された家屋が増えている話をときどき耳にするようになった。古民家は静かにブームになっているような気もするが、田舎だけでなく都会でも空き家が増えている状況は、政治としても放置できない問題と思うが、政策によって問題の解決が可能なのであれば、政治家が何をどう考えているのか気になる。

    本書で著者が再生に奮闘する古家は、昔の大工がきちんとしっかりと建てた家。その再生プロセスに様々なアクシデントに翻弄されながらも、著者自身がしっかりと参加していて、著者の理想とする家のイメージが具体的に伝わってくる。女性ならではの感性とこだわりがあり、男の自分には、そうかそういう風にこだわりが生まれるのか、と思う点が多かったが、その点も勉強になった。

  • めっちゃ参考になる。古い家の住人である私の自宅はちょっとした修理も見つからん。井形慶子さんのこの本を読んで納得である。

    手入れはもっとアメリカとかの様に広がっていい文化だと思う。でも古くなるのに価値が上がるのは賛成じゃないかな。

  • 10年近く前の本なので、全てが参考になるわけではないが、中古物件をイギリスのようにリフォームしてイギリスコテージ風店舗付き住宅に再生する過程は、山あり谷ありで読み応えある。また、人手不足の弱小工務店の大変さも垣間見えた。2018.8.21

  • 『老朽マンションの奇跡』といっしょくたに借りたので、読んでみたけど、まぁ、もういいか、って感じ。

    吉祥寺駅の乗降者数、ハモニカ横丁の賃料、近隣商店街開店時の保証金などの数字くらいか、役立つ情報は(ただし、2007年度当時のものが多い)。

    あ、リフォームのコツ、
    「一戸建てにかかわらずリフォームの立ち上がりで肝心なのは、コンセント、テレビ線、電話線、証明用の電源をどこにもってくるかを、解体前に必ず決めることだ。」

    これくらいは、メモっておこう。

  • 著者が古い家を買ってリフォームした時の出来事などをまとめたもの。 勉強になる要素もあり、リフォームに興味のある人は楽しんで読めると思う。 そして自分でもやってみたくなるはず。 色々と業界の問題点などにも触れているけど改善しようという人はいない(多くない)のかな? うまくやれば儲かると思うんだけど。

  • 吉祥寺で老朽家屋を格安で購入して、住居兼ショップとして使えるようにイギリス風の素敵なリフォームを施すまでの顛末が書かれた本。不動産業者や職人とのやり取りなどがリアルで、同じようなことを考えている人にはとても参考になると思う。著者お得意の「英国礼賛」もほどほどで、とても読みやすかった。

  • 一気に読む、いい!

    ノンフィクション!文章にスピードが有り著者と同じ気持ちでワクワクドキドキでとてもスリリングに読み進む。
    住宅好きリフォーム好きにはとても面白く(いろんな意味で)読み進める一冊。

    おわりに(あとがき)は本当にそう思う...と共感!
    日本のリフォーム事情の現実を暴露?
    DIY...etc...リフォームがもっと身近になれば良いとしみじみ思う

  • 語られている思想としては『年収300万~』とほぼ変わらず。
    違いは著者の実体験をノンフィクション的に記していることなのだが、これだけ実在する(であろう)人たちをボロクソにけなして大丈夫か!?とちょっと心配である。

  •  老朽家屋でも新築でも結局それを手にする本人のモチベーションで何とでもなる。そんな夢を持たせてくれた。

     日本の家屋を真面目に作っている工務店が次々と倒産していくという矛盾が建築業界の闇を生んでいるのではないか。

     常に良いものを作ろうと考えず、もっと気軽にそしてもっとまっとうに家を建てられるような時代が来てほしいと願う。

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著者プロフィール

自ら取材、撮影をもとに書いたイギリスのエッセイの他、住宅論、日英文化論、恋愛など多岐にわたる。 住宅ノンフィクションでは、東京都下にイギリスで見たコテージ風の家を建てた「戸建て願望」(新潮文庫)。 「老朽マンションの奇跡」(新潮文庫)、「よみがえれ!老朽家屋」(ちくま文庫)などがある。

「2018年 『いつか一人になるための家の持ち方 住まい方 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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