- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105014094
作品紹介・あらすじ
アメリカ文学界に衝撃を与えた記念碑的デビュー作を、村上春樹が新訳。新鮮な言語感覚と幻想に満ちた華麗な文体で構成された本作は、1948年に刊行されるやいなや、アメリカ中で大きな波紋を呼び起こした。父親を探してアメリカ南部の小さな町を訪れたジョエル少年の、近づきつつある大人の世界に怯え屈折する心理と、脆くもうつろいやすい感情とを描いた半自伝的なデビュー長編。
感想・レビュー・書評
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母を亡くし、別居の父が住む所へと一人旅に出た13歳のジョエル少年。そこで出会う奇妙な街、不思議な登場人物達…
比喩の多用、難解な構成だったけど、好きな世界観と展開の面白さ。素晴らしい読書時間でした。 -
13歳の少年ジョエルは、母親を病気で亡くし、叔母に引き取られていたところ、行方知れずだった父親からの手紙を受け取る。
父親との生活を始めるため、ジョエルはスカリーズ・ランディングという街を訪れる。でも、そこでの暮らしは、彼が想像していたものとは、全く異なる生活だった。
ジョエルの心情や行動が抽象的な表現で描かれている場面も多く、現実に起きた出来事なのか、想像の中の出来事なのかの判読が難しかった。
1948年カポーティの初めての長編小説らしいが、もしかして実体験を反映させている部分もあるのかなと思うような内容だった。 -
ときどき迷子になりながらもなぜか進む一冊
世界観が独特でついついハマってしまう
叙情的で俯瞰的表現は脳内で映像化されてしまう
何度も読んで何度も迷子になるべき作品 -
初めて読んだカポーティは、春樹さんの訳に、山本容子さんの素敵なイラストのついた『おじいさんの思い出』や『クリスマスの思い出』だったけど…
あの時のノスタルジーにもっと幻想性を持たせたような…
幻想的でときに凄まじく、あまりにも美しい描写や比喩たち。
容易く読めないけれど、魅力的すぎて沼に浸かるような読書体験でした。
母をなくしたジョエル。
叔母のところに父からの手紙が届く。
父に会いに行くためには、
そのランディングという街に行くには、機械化された交通手段がないという。
もうこの序盤で、私はファンタジーの世界に入っていくのかしらと思ってしまいました。
ジョエルの唯一の安らぎだった黒人娘のズー、不思議な、大人になったカポーティの化身のようなランドルフ、マッカラーズの主人公みたいにエキセントリックな女の子アイダベル。
この物語の中に彼らってほんとにいたのかな…
_火は弱まって灰になっていった。そして古い壊れた時計が疲弊した心臓のようにこつこつと時を刻んでいるあいだ、床に落ちた陽光の斑点は拡散し、暗さをましていった。壁の上に菱形格子模様を描いていたイチジクの葉の影は、大きく膨らんで、くらげの透き通った身体のような、ひとつの巨大な震えるかたちに変わっていた。_
ときどきこんなふうにトリップします。
素敵すぎて
辛すぎた。
『ティファーで朝食を』などとはまったく違った世界観。
23歳のカポーティの、初の長編作品。
春樹さんでさえ、高校生の時に『夜の樹』を原文で読んだ春樹青年でさえ、この『遠い声、遠い部屋』は、当時の英語力ではこの凝りにこった美しくもややこしい原文にはついてゆけず、日本語訳で読んだのだそう。
実はあまりにこの麗しい文体についてゆけず、途中、アマプラで『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』を観たりしたことが、少しは助けになったかも。
それから、この不思議な表紙、透明なスーツケースに入った鍵。
これもカポーティのノスタルジックでイノセントな世界にピッタリでした。
現代美術家の宮永愛子さんの『suitcase-key-』という作品です。
この鍵はナフタリンでできていて、いつか消えてしまうんですよ…
作品のメタファ的なものを春樹さんが感じられたんでしょうか…なにもかもが素敵です。
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遠い声、遠い部屋というあまりにも秀逸な邦題が良すぎる。河野一郎氏が付けたようだ。
幻想的ともいえる文章は読んでいて疲れもしたが、心地の良い疲労感というか、充足感を味わえる。 -
村上春樹の新訳によるトルーマン・カポーティのデビュー作。カポーティについては学生時代に主要な作品を読んだ気がしていたのだが、本書は未読だったために、新鮮な気持ちで読むことができた。
本書は親に見捨てられて親戚に育てられた少年が、父親からの連絡によってその元へと戻るシーンからスタートする。このように、複雑な背景を持つ少年の姿というのは、あまり幸福な少年時代を送れなかったカポーティ自身の一種の投影にも近しい側面があるのだと思う。それもあってか、カポーティの作品における少年や子供が主人公の作品での、あまりの心理描写のリアルさには本当に驚愕させられる。
本書でいえば、自分自身が過去に忘れてしまったような幼少期の頃の記憶がふっと蘇るかのような強い煌めきが存在している。大人になれば誰もが忘れてしまうような煌めきを、ここまでかくも鮮やかに現前化することができることこそ、カポーティが作家としての天性の性能を持っていることの証左であろう。
村上春樹自らが「まるでジェットコースターに乗ってお伽の国を旅しているような感覚」と称した、物語展開のスピード感や、出てくる登場人物それぞれのエキセントリックさも見逃せない。いったいどのように物語が着地しているかの予想がつかず、幻想的な煌めきの中で着地していく読書体験というのは、本当にカポーティ特有のものであると強く実感した。 -
村上春樹訳ということで興味を持ち読んでみましたが、私の理解力では内容があまり頭に入って来なくて楽しめなくて、残念です。
トルーマン・カポーティの作品






<書評>『遠い声、遠い部屋』トルーマン・カポーティ 著:東京新聞 T...
<書評>『遠い声、遠い部屋』トルーマン・カポーティ 著:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/279258?rct=shohyo