雪のひとひら

  • 新潮社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (110ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105018023

感想・レビュー・書評

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  • 1990年 22刷 の新潮社の単行本。活版印刷!
    美しい装丁の古い本なのにとても読みやすい。

    矢川澄子訳というと、児童文学でお世話になってきた訳者、
    読み始めはまるで少女文学といった美しさでした。

    でも、ポール・ギャリコ。
    ここまで擬人化してしまうのか!という驚きと、雪のひとひらの気高さに惚れ惚れしました。

    まだ若かった雪のひとひらが、自分の落ち着いた山村の中腹で、美しい日輝きや、可愛らしい女の子を見て幸福になる中、牝牛を見た時の驚きが好きで忘れられません。

    「なんてものやわらかな、美しい眼だろう」
    「美って、何なのだろう。わたしもいままでに、空と、山と、森と、村を見た。それから日の出、女の子、そしてこの灰色の牝牛の眼。それぞれちがったものでありながら、わたしをしあわせにしてくれたことでは、いずれもおなじなのだ」

    自分をもたらしたもの、そして、ほかの全ての美を創り出したのは誰なのか、折に触れその事を思いながら、雪のひとひらは、自分の生を全うしていく。

    橇にはねられたり、雪だるまの鼻にされたり、そのまま雪にうもれたかと思えば、川に流され、水車を回し…恋人の雨のしずくを得て、火事にも立ち向かう。なかなか壮大な水たちの物語だけれど、ファンタジーとして、人生のメタファをありありと読みました。

    西洋の物語なので神の存在も感じますが、
    私は妙にカズオ・イシグロの「クララとお日さま」の中の、お日さま、神としての太陽の存在を感じました。

    考えてみれば雪の結晶だって、私たち人と同じくいくつかの分子からできたもの。地球の中で存在は同じではありませんか!
    私たち人も、雪のひとひらみたいに消えて、空にもどれたら素敵なのになぁ。。

  • 「女性の一生」を描いたファンタジー。

  • 空から降ってきた雪のひとひらが、積もり、溶けて水となり、川を下って、最後に海から空に戻るまでを、一人の女性の生涯を辿るように描いた物語。淡々とした描写の中にも優しさが溢れていて、素晴らしい作品ですね。

  • ある寒い日、雪のひとひらは生まれた。地上に舞いおりたときから、彼女の長い旅がはじまった。伴侶となる雨のしずくとの出会い、新たな命の誕生。幸福なときも試練のときも、彼女は愛する者のために生きた。やがて訪れた、夫との永遠の別れ、子どもたちの門出。雪のひとひらは、その最期の瞬間、自らの生の意味を深く悟る――。自然の姿に託して女性の人生を綴る、優しく美しい物語。

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著者プロフィール

1897年、ニューヨーク生まれ。コロンビア大学卒。デイリー・ニューズ社でスポーツ編集者、コラムニスト、編集長補佐として活躍。退社後、英デボンシャーのサルコムの丘で家を買い、グレートデーン犬と23匹の猫と暮らす。1941年に第二次世界大戦を題材とした『スノーグース』が世界的なベストセラーとなる。1944年にアメリカ軍の従軍記者に。その後モナコで暮らし、海釣りを愛した。生涯40冊以上の本を書いたが、そのうち4冊がミセス・ハリスの物語だった。1976年没。

「2023年 『ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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