奇跡の脳

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105059316

感想・レビュー・書評

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  •  自ら脳科学者である著者が37歳で脳卒中になり、左脳の機能を失うと言う経験とその回復の過程を克明に記録した一冊。分析的、論理的な左脳の機能を失うという経験のなかで、右脳を中心とした感覚やその世界感が興味深い。
     8年間に渡る回復のプロセスは左脳の支配をコントロールする過程にもつながっている。心の平和は右脳に有り、むしろ左脳的な分析を黙らせることが平安につながるという視点は興味深い。
     回復への道のりの、作者のポジティブで好奇心あふれる態度、そして母親のGGのサポートのあり方も心に残った。
     TEDのスピーチも多くの人の感動を集めている。

  • 脳科学者の著者が脳卒中で倒れ、手術そしてリハビリを経て復活するまでの8年間の脳の可能性と神秘そして愛の記録、今まで積ん読にしていたのがとても悔やまれる素晴らしい書。

    左脳が機能しなくり右脳だけでの世界観これだけでも相当に貴重なものでは無いだろうか。そして手術後リハビリのなかでシナプスを繋いでいく様子で朧気ながら見えてくる脳の可能性は神秘的というよりもとてつもなく感動的だ。

    このリハビリは血のにじむような努力ではないかと想像するが、泣き言など一切無く愛と感謝に満ち溢れているのは左脳を補っていた右脳の影響なのだろうか。物忘れなどを直ぐ年のせいにして自分を誤魔化しているのは、とても怠慢なのではと反省するコトしきりです^^;

    脳卒中は昭和55年以降死亡する確率が減り、死亡原因のトップを癌に譲ったもののまだまだ患者数の多い、万が一を考えて読んでおくのも良いかも知れません。ちなみに竹内薫氏の翻訳が素晴らしく翻訳物であることを殆ど意識せずに読み終えることが出来たことを付記しておきます。

    <追記>
    Book Logで検索したら文庫が2012年3月に発売されているようです。

  • 自分の想像ができない世界の話なので、翻訳本だけれどぐいぐい読み進んでしまう。まだ1/4くらいしか進んでいないけれど、これからどのように印象が変わるか、楽しみ。

  • 脳科学者ジル・ボルト・テイラーによる、
    自己の脳卒中経験と、そこからの回復過程で
    発見したこと、感じたことを
    科学と感情、どちらもたっぷりに語りつくす
    ノンフィクション。

    まさに、世界で唯一、彼女だけが書けるストーリーである。
    すばらしくおもしろい、そしていろいろと考えさせられる。

    36歳の12月、彼女は脳血管の先天的異常に起因する
    左脳の脳卒中を起こし、左脳の機能の大半を失っていく。
    その過程で彼女が自分についての感覚や能力ということについて
    発見したことは、
    「右脳が左脳から解き放たれると、世界のすべてと繋がっている
     『今』の感覚に満ち溢れ、すばらしい」
    ということだった。
    とはいえ、そのままにしておけば取り返しのつかないことになる
    というのも脳科学者である彼女はよくわかってもいて、
    あらんかぎりの苦闘の末になんとか自分で病院に行くまでの
    手筈をつける。
    そして、入院、手術を経て、何年にもわたるリハビリの道を歩む。
    母親との二人三脚で、必死に脳を回復させる取り組みを続ける。
    その過程は、まさに「再構築」のストーリーで、
    脳卒中という病気の重さと、そこからの回復に置いて努力と慈悲の心が
    どれほど大切かを感じる。

    そして、ようやく8年かけて彼女は「回復」したのだけれど、
    元に戻った、というわけではない。
    明らかに変化はしているのだ、という。

    それは、右脳の持つ「思いやり」「ひとつになる喜び」の意味を
    実体験を通じて深く感じ取るようになった、ということであり、
    それを多くの人に伝えたくて、この本を書いた、ともいえる。

    この右脳の感覚というのは、いわゆる宗教体験、特に「禅」で
    集中の極みに入り、世界と一体になる感覚と大変近いものだと推測する。
    おそらく、古代から、こうした宗教体験に到達した人々というのは、
    右脳の持つ可能性を左脳の束縛から解放させられたに違いない。

    もちろん左脳を悪だと言ってるわけでもなくて、
    著者の経験したように、左脳が働かなかったら私たちの日常社会生活は
    まずもって成り立たない。
    電話もできず、モノを片付けることもできない。
    私たちが作り上げてきた複雑な文明なるもの…はこれ、全力で左脳と、
    それを多くの人々で同時代に、あるいは時系列的に繋いできた産物として
    今日に至っているのだ。

    とはいえ、私たちは個人として、この右脳の「思いやり」が心底重要で
    素晴らしいものだということを、どんどん気づかなくなっている。
    きっと、人類が文明を築き始める前は、右脳が大いに活躍することで、
    助け合いが加速され、「弱い」人間であっても力を合わせて生き延びることが
    できたのだと思う。
    人類は血縁(遺伝)を超越した助け合いを共感で可能にして、発展してきた
    に違いない。

    だが今日では、そんなことを意識しなくても生きていくことができるように
    なってしまった。
    発展の結果、「思いやり」を失っていく傾向にあるわけだ。
    これは人間性の喪失といっても過言ではあるまい。

    著者も、まさに科学者という「左脳極致」のところから、
    その左脳の機能喪失を経て、右脳のすばらしさとやさしさを発見するに
    至ったわけだ。
    きっと世が世なら、宗教指導者になっていだろうね(笑)。

    私たちはこの著者の経験と言葉から実に多くのこと、そして大切なことが学べる。
    左脳的な、過去から未来を知りたがる、計算高い力と、
    右脳的な、いまここの感覚とすべてに対する思いやりを
    変な混ぜ方をしてはいけないのだ。
    右脳の持つ限りない「思いやり」を解放することができれば、自分も周りの人も
    幸福にするための力が発揮されることだろう。

  • NHKのスーパープレゼンテーションという番組で彼女がプレゼンしていた。
    がぜん右脳って面白いな~と興味がわくわく。

  • 早く読みたい・・・

  •          -20090325

    脳出血によって言葉や記憶、歩行能力を失った脳科学者の回復体験を綴った注目の書。言葉を失い、それを取り戻す過程を、脳と関連付けて語ってくれる体験録は、人間らしさには言葉が不可欠ということが、それを失ったことでわかると同時に、言葉以外にどれだけ大事なメッセージがあるかを具に明らかにしてくれる。

  • 大好きな読書家からのリファレンス。告白すると、小学校高学年の頃から「閃輝暗転」という症状を持っていまして。この症状が出ると外部からの情報が一切処理できなくなる(症状が出なくてもそうだろう、と笑われる部分は差し引いても)。
    消化器系の体調も悪くなるので4時間寝ないと回復しない。最悪、禁じ手の煙草で脳側の血管を「絞める」。
    でもまあ、そういう悪友みたいな症状と一生付き合うことを覚悟した結果、脳という未知な器官には主体的な興味が持てて本作に逢えた。脳っつーのは難しいプレゼントだし、ややカルトな匂いもするw。
    神経解剖学者である著者が脳卒中を通じて出会った脳とは、もっと素直な、生きていさせてくれて「ありがとう」かも知れない。
    8章「GGが街にやってる」では、新規開拓したサイゼリアさんで号泣。すんませんでした。

  • 脳科学者が脳卒中になり、回復までの過程を記録した本。

    出血個所が左脳。

    ゆえに、左脳の機能が低下したとき、人は感覚をどのように認識するのかがわかります。

    固体であるはずの自分の体が液体のようになるそうですよ。

    現在、現役復帰した著者を見ると、彼女は右脳の世界を知らせるために、この病気になったのでは、と思ってしまいす。

  • からだの各パーツに感謝することの大切さを教えてもらいました。考えてみれば、これほどまでに精緻な仕組みをもつからだを使わせてもらっているなんて、奇跡ですね。

    エゴのおしゃべりを黙らせること。エゴとは脳の中でもごく小さい部分なのですってね。そこに振り回されているのか……。

    エゴのおしゃべりが消えるということは、自分と繋がることなのでしょう。平安、静寂、喜びと繋がること。

    とってもスピリチュアルな本です。

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