バット・ビューティフル

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105063115

作品紹介・あらすじ

レスターは上官の罵声を浴び、モンクは警棒を振り下ろされ、ミンガスは破壊することをやめない。酒、ドラッグ、哀しみの歴史に傷つき、自ら迷路をさまようミュージシャンたち。しかし彼らの人生には、それでも美しいジャズの響きがあった-伝説的プレイヤーの姿を、想像力と自由な文体で即興変奏する、ジャズを描いた8つの物語。サマセット・モーム賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/767925

  • 村上春樹訳ということで手に取る。ジャズミュージシャンの名前はほとんどわかるが、それほど詳しくないので、聴きながら読んだりした。詳しければもっと楽しめたと思う。

  • 実際のジャズミュージシャンについて書いてるのだけどあくまでフィクション。早々に挫折。

  • ジャズ関連オススメ本ということで購入。

    自分の感覚で端的に言うと、「極めて洗練されて、もはや原作者がスピンオフ作品を書いたのではないか、と思うような同人誌」だと思った。
    ジャズの巨人たちの生きた断面について、実際のエピソードも交えつつ、今その場所で起こった事実を描写するかのような文体で描いたもの。虚実交えたもので、必ずしも事実のみに依って伝記小説にした訳ではない、ということだが、そのことがかえって、事実の羅列よりも臨場感を生み出すことに繋がって、没入できた。
    ああ、たしかにこのミュージシャンはこんな感じだろう、というところから、なるほどこのミュージシャンはこんな背景があってこそなのか、というところまで、ますますそのミュージシャンに興味が湧く一冊だった。
    訳書だが、随所に村上春樹フレーバーが感じられる文なので、ジャズにはそれほど興味がない村上春樹ファンも楽しめるかもしれない(全くジャズに興味がない、だとちょっと厳しいかもしれない)。

    世間的評価も高く、村上春樹としても訳者あとがきで絶賛しているだけあるな、と
    感じられる本だった。

  • バット・ビューティフル

  • 音楽を言葉で表現するのはとても難しい。この本の中では、7人のジャズプレーヤーについて、プレーのスタイルだけでなくその生き様までが、まるで小説を読むように語られている。
    プレーヤーや、その紡ぎ出される音楽について、こんなふうに描き出す方法もあるのかとやや驚かれたが、やっぱり音楽を言葉で表現するのは難しいという読後感が残った。

  • エッセイとか翻訳では村上春樹さん、よい仕事をなさる。
    おもしろいスタイルの作品で、
    7 人のジャズ・レジェンド(レスター・ヤング、セロニアス・モンク、
    バド・パウエル、ベン・ウェブスター、チャールズ・ミンガス、
    チェト・ベイカー、アート・ペパー)が登場する。
    さらっと読み流した「序文」にしっかりと書いてある、
    よく知られたエピソードや情報をもとに著者がインプロヴァイズ(即興変奏)した「想像的批評」や近似フィクションと言う表現がよくわからなかったが、
    読んでみるとなるほど、ありありといきいきとしたすばらしい表現法だと思う。
    訳者あとがきにあるように、この本を読みながらここに描かれたミュージシャンたちの演奏する音楽を聴きたくなる。

  • レスター・ヤング、セロニアス・モンク、バド・パウエル、ベン・ウェブスター、チャールズ・ミンガス、チェト・ベイカー、アート・ペッパーというジャズの七人の巨人達のひりひりするような生き様の一端を評伝や自伝など様々な資料をリサーチした後に、ある程度事実に基づきながらも想像を加えながら描き出した短編小説とそれらをつなげるデューク・エリントンとハリー・カーネイの演奏旅行途中でのエリントンの曲の発想の様子を描いた掌編、加えて最後に結構な長さの現代のジャズの批評があるという、訳者(村上春樹氏)によると想像的批評スタイルだという本を読了。ジャズ喫茶を経営していたくらいだから村上春樹氏はジャズに造詣が深い訳で、この本も自分でニューヨークで書店で見つけ自分で翻訳してモンキービジネスという雑誌に寄稿したのがこの本の出版に繋がったらしい。かなりマイナーな本なので早晩絶版になると思われるのでまあめっけもんの読書でした。ジャズメンたちの孤独さが伝わってくる文章と評論の組み合わせの妙を楽しむBGMとして選んだのがArt Pepperの"Living Legend"

  • セロニアス・モンクをはじめとするジャズの巨匠7名を取り上げた評伝とフィクションがミックスしたような不思議な短編集。ジャズに詳しい村上春樹が、NYの書店でそれとなく手にして購入した後、暫くは積読状態だったというが、柴田元幸さん主催のMonkeyに一編ずつ翻訳して掲載。
    実は、モンク以外は名前は知っているけれど、どういう人物でどのような演奏をしていた人たちかを全く知らなかったので、まずネットで略歴をチェックし、それからYoutubeで音源にあたりながら読んだら、どれもとてもよかった。
    特にチェット・ベイカーの哀愁を帯びたトランペットと、消え入りそうな細い歌声を聴きながら「その20年はただ単に、彼の死の長い一瞬だったかもしれない」を読むと、ひとつひとつの表現がヴィヴィッドに胸をつく。
    本書は原作者がimaginative criticismと読んでいる手法で書かれており、村上春樹による意訳「自由評伝」とは言い得て妙だが、まるで、目の前に往年のジャズプレイヤーがいるような錯覚さえ呼び起こす語り口に、すっかり引き込まれた。

  • 村上春樹の小説は読まないが、彼の訳になる小説やエッセイ類には結構お世話になっている。特にチャンドラーの翻訳と、ジャズ関係の文章は必ずといっていいほど目を通す。一昔前、植草甚一氏が果たしていた役割。ニュー・ヨークの本屋やレコード店をめぐっては見つけてきた本その他の話題を日本の読者に紹介するという目利きの仕事を、今受け持ってくれているのが村上春樹ではないのだろうか。村上氏が見つけてくるジャズ関連の書物は、もしかして彼がいなかったら、邦訳すらされなかったかもしれないものが少なくない。これもその一つ。ジャズ・ファンなら何をおいても読んでみたくなる一冊。

    著者によれば「想像的批評」というジャンルになるそうだが、平たく言えばジャズ・ミュージシャン七人のポルトレ(評伝)である。どこが「想像的」なのかといえば、著者は伝記的事実を尊重しつつも、方法としては、ミュージシャンの写真を前にして想像をめぐらせ、頭の中に浮かび上がってきた映像を文章化してゆくという。その結果、セロニアス・モンクとバド・パウエルが麻薬不法所持で警官に逮捕される有名な場面が、車から投げ捨てられ、水溜りに浮かぶヘロインの袋にいたるまで、著者自身その場で目撃していたようなタッチで描かれることになる。

    レスター・ヤング、セロニアス・モンク、バド・パウエル、ベン・ウェブスター、チャールズ・ミンガス、チェト・ベイカー、アート・ペパー、いずれ劣らぬ名手七人の肖像写真を収めるギャラリーの壁にあたるのが、ワンナイト・ギグの演奏会場に向けて車を走らせるデューク・エリントンが車中で曲の構想を練る場面のエピソードだ。ジャズの代名詞ともいえるデュークと長年の相棒ハリーの気どらない会話が、いずれも個性の強い、どちらかといえば破滅型のミュージシャンたちが繰り広げる人生の一幕の色彩を浮き上がらせる役割を果たしている。

    ノンフィクションとフィクションが垣根を越えて行きかうような描写は、まるで短篇小説を読んでいるようだ。これのどこが「批評」なのかと疑問を覚えた読者は「あとがき」を読んで納得するにちがいない。ジャズ・ミュージシャンは、常に先行するミュージシャンの音をなぞるように演奏する。たとえば、マイルズはディジーのように吹こうとした。ところが、ディジーのトレードマークである高音部の跳躍を持続させることができなかった。それがあのマイルズの「孤独な背筋が寒くなるほど美しいサウンド」をもたらしたのだ。演奏自体が批評行為である、というのが著者の見解である。

    それにしても、ジャズ・ミュージシャンという人種は、なぜこんなにも破滅的な人生を送らなければならないのだろう。描かれる人々は、どれも麻薬中毒やアルコール中毒患者、さらには精神を病んで精神病院に入院した経歴を持つ。早死にした者も多い。著者が選んだミュージシャンに偏りがあるとは思えない。「あとがき」で著者も書いているように、これがジャズ・ミュージシャンなのだ。一晩のギグのために、全精力を傾けての演奏。それも、インプロヴィゼーション(即興演奏)がその中心となるだけに、気を抜けるところがない。クスリやアルコールに頼りたくなる気持ちも分かるというもの。

    表題『バット・ビューティフル』は、スタン・ゲッツとビル・エヴァンスの名演奏で知られる曲だが、あるサックス奏者のどうしようもない生活、その生き方の破滅的な様相を前にして、なおかつその演奏を耳にした女が漏らすひとことでもある。村上春樹氏も訳しながら、彼らの演奏を聴いていたというが、この七人にデューク・エリントンを含めた七人+αの演奏を聴きながらページに目を落とすとき、知らず知らずのうちにあなたも口にしているだろう。彼らの人生はなんと凄惨なんだろう。「けれど、その音楽はなんと美しいことか…」と。

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