インフォメーション―情報技術の人類史

制作 : James Gleick  楡井 浩一 
  • 新潮社
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レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (589ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105064112

感想・レビュー・書評

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  • 太鼓の音で遠方と会話しようとするトーキング・ドラムの話からシャノンの情報理論、DNA、インターネットまで「情報」にまつわる博覧的な内容。

    英語の場合、例えばQの次にはUが来るので、”QU"は”Q"に比べて冗長なだけ。こういうふうに、英語の場合であれば50%の冗長性が組み込まれており、シャノンによると圧縮できるということは情報の量が少ないということになる。これに対して今でも人の頭のなかで「理解」がされた時に情報が生まれるという心情的には同意したくなるような意見もあるが、それを乗り越えないと情報理論がなかなか腑に落ちない。

    ・音声や歌、話しことばなど、人類によって生み出され、消費される情報はかつては消え失せるものであったが、今やすべてのものが記録され、保存されるようになってきた。コンピュータ時代の現代では特に顕著になってきており、これをもって情報による疲弊、痴呆化ということも言われているが、写真機が初めて出てきた時も同じようなことが言われていたらしい。

    ・大半の論理演算にはエントロピー・コストがかからない。0が1になったり、1が0になる時、その情報は維持されるし、過程は可逆的でエントロピーが変えられることはない。情報が消去されるという不可逆的な過程の場合のみ熱が放射される。

    ・情報、乱雑性、複雑性は基本的に同等のもので、この3つの強力な抽象概念は、人目を忍ぶ仲のごとく秘かに結びついている

    ・通信というものの本源的な課題は、ある地点で選択されたメッセージを、別の地点で精確に、あるいは近似的に再現することである(クロード・シャノン)

  • 巻頭のエピグラフは「通信の数学的理論」からの引用である。クロード・シャノンはこの論文で情報理論という概念を創出した。同年、ベル研究所によってトランジスタが発明される。「トランジスタは、電子工学における革命の火付け役となって、テクノロジーの小型化、偏在化を進め、ほどなく主要開発者3名にノーベル物理学賞をもたらした」。ジョージ・オーウェルが『一九八四年』を書いていた年でもあった(刊行は翌年)。
    http://sessendo.blogspot.jp/2014/05/blog-post_12.html

  • 2013 1/1読了。Amazonで購入。
    シャノンの情報理論確立を中心軸に、そこに至るまでの発明(符号化、アルファベット、単語、バベッジの階差機関・分析機関、電信、電話など)と、情報理論確立後の諸分野への波及(サイバネティクス、認知科学、エントロピー、遺伝子、ミーム、量子情報学・・・)を描く、情報の通史。
    図書・図書館史の授業参考用に、とも思ったけど今年は間に合わず。来年は反映しよう。その点でも面白いし、情報理論確立後は各分野におけるパラダイム的な検討もできるかも。
    以下、気になった点メモ:

    ◯プロローグ
    ・ベル研究所でシャノンが情報理論を発表して以来の計れるものとしての情報(ビット)の話

    ◯1章:短音と長音
    ・アフリカのトーキング・ドラム(太鼓の音でメッセージを遠くまで伝える)の話
    ・モールス信号の話・・・モールス信号には長音・短音のほかに「間」もいるので二進法言語ではない
     ・原理的に似ているが・・・モールス信号がアルファベット(文字)を表現しているのに対し、トーキング・ドラムを使う人々の言語に文字はない(音声を直にドラム化)
    ・声調言語・・・中国語が代表。音の高低で単語の意味も変わる
     ・トーキング・ドラムはその声調だけで成り立つ言語・・・同音の単語が多数生じるので、わざとメッセージは迂遠にしてある(「月」ではなく「地上を見下ろす月」など)
      ・「冗長さによって曖昧さを克服している」
       ⇒・余剰ビットで曖昧性回避・誤り訂正をする発想と同様/類似のもの・・・航空無線でb、vを発音する際に「bravo」「victor」とか云ったりすること
    ・「利用できる記号の種類が少ないほど、一定量の情報を相手に伝えるのに、より多くの記号を送信しなくてはならない」

    ◯2章:アルファベット・・・このあたり、ギリシアで哲学が羽ばたいた一つの理由として、来年の図書・図書館史の授業でも使えそうだな
    ・書き言葉と人類・・・いったん書くことを覚えてしまえばそれ以前については想像できない
     ・例によってのプラトンの書くこと批判
     ・「口頭言語はどれも、語彙の総数が数千であるのに対し、記述言語は、世界で最も広く書かれてきた英語単独でも、文書に記録された語彙が優に百万語を超え、年に数千の新語が加わる」(p.43)
    ・アルファベットの話・・・ここらは図書館史の授業2回の中身でもある
    ・「論理は書き言葉に由来」・・・恒常的に残ることで論理的であることに意味がある(後でチェックできないなら論理的な結論は意味を持たない)/ホメロスに三段論法は出てこない
     「「ギリシャ文化が形式論理を発明したのは、アルファベットで書くというテクノロジーを取り込んだあとであることがわかっている」と、ウォルター・オング(これは、インドや中国にも当てはまる)」(p.52)
    ・ロシアで行われた読み書きのできない人への調査・・・読み書き能力の有無で知識ではなく思考方法に著しい差が生じる
    ・文字の文化の中の住人であれば、たとえ本人に読み書き能力がなくても文字化の影響は受けている
     ・無文字(声の文化)ではそれがない・・・カテゴリー化や三段論法を受け入れられない
     ・自身の体験や事物から切り離された「情報」を読む能力
    ・古代バビロニアの粘土板から・・・当時既に数学が盛んに行われていた記録が発見されている

    ◯3章:単語・・・ここも図書館史で使えそうだなあ・・・印刷の影響の回
    ・16世紀英国・・・単語の綴りは一定ではなかった(時によって同じ語を様々に適当に書く)。基本、口に出すものなので使用後は消え去るし他と比較も評価もされない⇔印刷の登場により「正しい綴り」が意識されるようになる
    ・アルファベット順配列・・・アレクサンドリアのパピルス文書中に記録あり
     ・アルファベット順で配列されるのは「ほかに順番付けの手立てのない大量の収集データがある場合だけ」
     ・アルファベット順の目録は1613年、オクスフォード大学ボドリアン図書館の目録が最古(その20年前、オランダ・ライデン大学図書館の大学図書館初の目録は主題順)
    ・綴りの固定化/意図しようとしまいとそれを促進する「辞書」
    ・語彙の増加をインターネットがさらに促している?:「インターネットも、単純に情報を異なる形で移送することによって、言語を変容させている。サイバースペースが、従来のすべての情報テクノロジーと異なるのは、最大から宰相まで音規模の混在ぶりだ。数千万人に向けての広報と、特定集団に向けての狭報、一対一のインスタント・メッセージが、有利不利なく共存している」「この状況は、機械式の計算装置の発明がもたらした、まったく予想外の結果だと言っていい。当初、その装置は、数にまつわる発明だと思われていた」(p.103)


    ◯4章:数/チャールズ・バベッジ
    ・バベッジの階差機関の話⇒解析機関のはなしへ
    ・当時流行のゲームソリテールを計算で解けるか・・・ってこれ、以前うちにあった玩具じゃないか!
    ・解析機関は数のみならず情報を扱いうる機関
     ・理解者・エイダ(バイロン卿の娘)による、再帰的アルゴリズム・・・「変数」の発想
    ・本人すら気付かなかったバベッジの主題・・・情報、メッセージの送信、符号化、処理
     ・バベッジ後、汎用的計算機が実際に実現するには一世紀近くを要する
    ・ここ面白いけど、社会への影響の話につながったりはしないあたり、本当に異質なはやさだなバベッジの機関・・・

    ◯5章:電気(電信・電話)
    ・電気を通じてどう信号を伝えるのか?
     ・前例・・・腕木通信・・・ただし正確に伝えられるのは夏期で2/3、冬期は1/3になることも
    ・電信による情報伝達を早期に受け入れ、普及に力を貸したのは新聞
    ・「ほんの二年前は、情報が目的地に届くのに数日を要したというのに、今ではものの数秒で-どこにでも-到着する」・・・ケタ違いの飛躍
     ・影響1:天候に対する意識の変化・・・土地ごとの特異現象ではなく広範囲に連続している出来事であるとわかり、捉えられるように⇒政府における気象局等の誕生
     ・人間同士の交流の妨げ、歪みを生じさせるような「時間」の削減/空間の縮小
      ・ここで地域ごとの時間の差異が問題に・・・標準時の誕生と普及
     ・日常に関するこまごまとしたことが保存される・・・電信記録の保存
     ・メッセージ/「送る」等の語が物理的媒体と切り離される・・・特にメッセージ概念はものと結びついているものではない、と切り離して考える必要が生じる
     ・街に電信線が張り巡らされる
     ・「符号化」・・・例:モールス信号/記号の代用品としての記号、単語の代用品としての単語。ある表彰レベルから別レベルへの動き=「符号化」
     ・コスト削減のための文体の変化
    ・電信暗号/電信符号(単語に数字を割り当てて簡素化)・・・コストは削減できても電信符号は些細な誤りに致命的に弱い
     ・符号ミスで2万ドル失った裁判の話は授業等で紹介するのには印象的でよいかも
    ・ブールとド・モルガンの記号論理学
     ・ブール・・・「数のない数学」「0と1=無と万物のみ許容」 


    ◯6章
    ・シャノンとヴァンネヴァー・ブッシュ
     ・ブッシュの微分解析機の話
     ・ブッシュの助手時代にシャノンが論理回路/二進法演算につながる修士論文を執筆
     ・省庁記号をとりあえ使える機械装置の発明・・・論理学に新たな命を吹き込む/論理学と数学の一体化
    ・記号論理学により数学を完全無欠のものにするラッセルとホワイトヘッドの野望
     ・思考の完璧な符号化によるその実現が、古くはライプニッツが(空想として)手を付けている
     ・パラドックスの話・・・まさかラッセルのパラドックスにここで遭遇するとは
     ・ゲーデルの不完全性定理の話
    ・ベル研究所の話
     ・登場初期の電話に対する電信関係者の冷淡な目
    ・電話
    ・電気工学・・・世界を記号で表現することの実現へ

    ◯7章
    ・チューリング
     ・チューリング・マシン
     ・エニグマ暗号の解読・・・マンハッタン計画以上に戦局に影響?(そりゃそうだ、原爆はヨーロッパに落ちてない)
    ・シャノンの暗号研究と「情報理論」

    ◯8章
    ・情報理論の波及?
     ・サイバネティクス
     ・チューリング・テスト
     ・心理学・・・ここが停滞を突破できたのは情報理論に負うところ大?
      ・認知科学の誕生・・・コンピューター、心理学、哲学の合体。「情報的転回」

    ◯9章
    ・p.332「"エントロピー"の意味を、誰も知らなかったと言っては大げさだろう。とはいえ、エントロピーはそういう難解語のひとつだった。ベル研究所のうわさでは、シャノンはこの単語をジョン・フォン・ノイマンから伝授されたことになっていた。誰にも理解できない用語だからどんな論争にも勝てる、とノイマンが助言したというのだ。事実ではないが、ありそうな話だ」
    ・エントロピー
    ・物理学⇒情報理論へ
    ・シュレーディンガー・・・遺伝学と生化学を組み合わせる、のちの分子生物学へ
     ・その嚆矢となった講演も生物と安定性への疑問からはじめられている

    ◯10章
    ・遺伝子の話
     ・ワトソン・クリックのクリックの方はシュレーディンガーから刺激を受けて生物学に身を投じている
    ・p.373より あまり本質的ではないけど面白いフレーズなので:「アメリカの哲学者ダニエル・デネットが「学者とは、図書館が別の図書館を作る方策にすぎない」と言った。デネットも、まるきりの冗談のつもりではなかった」

    ◯11章
    ・ミームの話
    ・人間は好むと好まざるとに関わらずめったに自分の脳を"管理"していない
     ⇒・お? 期せずしてなんか最近追っかけているネタに近いような・・・?

    ◯12章
    ・乱雑性の話・・・数学よりの話で面白いが授業等では使いにくいな

    ◯13章
    ・量子力学/量子情報論

    ◯14章
    ・図書館、ウィキペディア
    ・「名前」の問題・・・namespace、ドメイン名、商標
    ・宇宙全体の情報量の話・・・クラウドや各種の容量(図書館や事典等)も

    ◯15章
    ・比較的冒頭・・・印刷機の話から
    ・繰り返される「多すぎてとても読めない」論/その影響論
    ・情報過多対策のための戦略は突きつめれば濾過(フィルタリング)か検索
     ・それは昔からずっとそう。図書館のカード目録も索引集も地名辞典もそう
     ・「書籍の供給過剰という認識が、さらなる多数の書籍の生産をあおった」(p.511、アン・ブレアからの引用)

    ◯エピローグ
    ・相互接続

    ・p.527 「今やわたしたちはみなバベルの図書館の利用者であり、司書でもある。有頂天から落胆へ、また有頂天へと変転する。ボルヘスはこう語る。「その図書館がすべての書物を所蔵していることが公表されたときの第一印象は、はなはだしい幸福感に類するものだった。誰もが手つかずの秘宝の持ち主になった気がした。個人的または世界的問題のうち、その解決法が六角形の回廊のどこかに存在しないようなものはなかった。宇宙は根拠を与えられた」。その後、悲嘆が訪れる。見つけられない貴重な書物などなんになろう?」

  • 文字の発明で論理的な思考を手に入れた人類が、電信、電話を経てコンピュータ、そしてインターネットで各個人が相互に繋がる世界へ、と「情報」の観点で人類史を再定義しなおした一冊。

    まずは、真に偉大な発明はトランジスタよりもシャノンの情報理論、特に全ての情報をビットであらわすという概念なしにはここまでの世の中にはならなかっただろう、という考察から。ノイマン、チューリングといったおなじみの人たちとの関係や、当時の時代背景とあわせて理論が生まれるまでのお話だけでも読む価値あり(-_-)

    次に、情報理論が他の分野に与えた影響について。生物化学はもとより、心理学にも大きな影響を与えて、認知心理学という分野が成立したってのは知らんかった。おおざっぱにいうと、外部の刺激→心のはたらき→外部に見える反応、うん、まんま入出力やね。

    で、最後は量子コンピュータの話、そしてインターネットで各個人が繋がる世界を一つの生命体とみなすSFチックな考え方で〆、てわけでえらく壮大な一冊でした。いやー、これはホント読んで良かった。著者に感謝。

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