量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (527ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105064310

作品紹介・あらすじ

世界の根源には何がある? 量子の謎に挑んだ天才物理学者たちの100年史。200世紀に生まれた量子論は、ニュートン以来の古典的な世界像をどう書き換えたのか。アインシュタイン、ボーア、ハイゼンベルク、ド・ブロイ、シュレーディンガー…… 彼ら「偉大なる頭脳」たちが火花を散らした量子革命100年の流れを、豊富な逸話をまじえ、舌を巻く物語術で描き切る驚異のポピュラー・サイエンス!

感想・レビュー・書評

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  • 数学の知識も物理の知識もカケラもないこてこて(?)の一般人ですが、それでもとても面白く読めた!
    ボーアって誰?ってくらい知識ない当方でしたが、久々に興奮する知的体験をしたと思いました。
    物理や数学の知識があったら、もっと面白く読めるのでしょうね。知識ある人羨ましいです。

    こんな量子力学に何の知識もない人間が読んでも面白いと思えるのですから、著者及び訳者の力が素晴らしいと心から思います。
    これだけ噛み砕いて理解しやすくこの世界を綴られた本は少なくとも日本には他にないのではないでしょうか?

    物理学者たちの交友、発奮、議論などなどを国際情勢・歴史背景を考えながら読むと「もしここで戦争がなかったらどうなっていたのか」とか「もしここにこの人がいなかったらこっちの人はどうなっていたか」とか詮無いことをいろいろ想像してしまい、物事が大きく動いたり発見されたりする時には歴史や環境などの背景がとても重要なのだと思い知らされます。

    この本に描かれたアインシュタインって、これまで思っていたのと全然違う人でした。そしてどうしてボーアという人はこれだけのことをしたのにどうしてアインシュタインくらい(少なくとも日本では)知名度がないんだろうかととても不思議でした。

    「真実を手に入れたいという願望は、真実を手に入れたという確信よりも尊い」って言葉にとても感動しました。
    物理の世界だけでなく、みんなそう思って生きていますよね。

  • 本書のプロローグに挿絵として出てくる1927年の第5回ソルヴェイ会議の写真。『そして世界に不確定性がもたらされた』の表紙にも使われている歴史的な写真だ。量子力学をめぐるアインシュタイン=ボーア論争の象徴的な写真でもある。その写真に写る人物の多くが、本書に登場する。量子力学100年の歴史。非常に読み応えがあり、面白い。

    ベルリンでのプランクの黒体放射問題から始まり、スイスのヴェルンでのアインシュタインの光量子仮説、マンチェスターのラザフォードの原子モデル、そしてコペンハーゲンのボーアの電子の量子論。ド・ブロイの粒子と波の二重性、パウリのスピンと排他原理、ハイゼンベルグの行列力学とシュレーディンガーの波動方程式を経て、不確定性原理と相補性、観測による波動関数の収束などに代表される量子力学のコペンハーゲン解釈が確立する。

    アインシュタインが「神はサイコロを振らない」という言葉で異を唱えたコペンハーゲン解釈。本書の後半では、このコペンハーゲン解釈に対する論争を中心に進められる。アインシュタインは孤軍奮闘にも近かったが、本書は最終的にこのコペンハーゲン解釈に懐疑的で、ヒュー・エヴェレット3世が初めて示した多世界解釈に好意的である。実際に1999年に行われた物理学者90名へのアンケートでコペンハーゲン解釈に票を投じたのは4名しかいなかったという(エヴェレットの多世界解釈への票も30名しかおらず、50名はわからないという回答だった)。

    一方で著者は、ボーアやその他の物理学者に対して敬意を持って量子力学の苦闘の歴史を丁寧に描き出している。時にスリリングに、時にウェットな人間ドラマを交えて。初期の量子力学が多くのドイツの科学者とユダヤ人の科学者によって推進されていたこともあり、この時代におけるナチスの台頭と第二次世界大戦が、この物語にも印象的な影を落とす。そして科学が人間によって作り上げられたものであることを改めて気付かされる。

    ボーアが死の前日に、「かつての議論をもう一度反芻しながら、彼が最後に書斎の黒板に描いたのは、アインシュタインの光の箱だった」というエピソードは出来過ぎだが、本書のテーマをよく表している。「真実を手に入れたいという願望は、真実を手にいれたという確信よりも尊い」という哲学者レッシングの言葉で終わるこの本は、著者の筆を通したアインシュタインからのメッセージのようだ。

    青木薫さんの訳は相変わらず安心感がある。
    本書に惚れ込み、翻訳を熱望し、ゴーサインが出たときんはガッツポーズまでした青木さん渾身の翻訳を楽しんだ。

    そして、大学のときにもう少し量子力学を真面目に勉強をしていればよかったなと思った。

  • 量子力学は20世紀最大の発見ですが、この本はそれを非常に分かりやすく解き明かした名著だと思います。

    プランク→ラザフォード→アインシュタイン→ボーア→(パウリ、ハイゼンベルク、シュレーディンガー、ディラック)→EPRパラドックス→量子暗号/量子テレポーテーション、と続く100年間の歴史を、劇的なエピソードを交えて、見事に書き切っています。単なる量子論の歴史のみならず、その時、天才物理学者たちは何を思い、何を悩んで、その結果どういう発見が成されたのかを、分かりやすく書いているので、分厚い本にもかかわらず、一気に読めてしまいます。

    私は、電子スピンの発見のところから読み始めましたが、これは朝永振一郎博士の名著「スピンはめぐる」と重ね合わさる部分で、そういう意味でも、この両者を読み比べてみると、二重に楽しめると思います。

    それにしても、ボーアのコペンハーゲンの研究所における、ボーア、パウリ、ハイゼンベルクの関係が、そのまま日本における仁科芳雄、湯川秀樹、朝永振一郎の関係にそっくりで、時を変え、場所を変えつつ、歴史というものは螺旋状に繰り返すのだなあと、そういうところに感動しました。しかも、ボーアはボーアで、イギリスのラザフォードを手本にし、師匠として仰いでるんですよね。これも、仁科芳雄とボーアの関係に似ています。

    それから、なんといってもアインシュタイン。この人は他の物理学者と群れることは無く、いつも孤高の存在で居るわけです。シュレーディンガーもそれに近い。

    変わったところでは、ディラックでしょうね。この人は「美しい数式こそが世界を表す」という信念の人で、その信念でやすやすと相対論的量子力学を建設してしまうのですから、まあ、とんでもない天才がそろって同じ時期に出てくるもんですな。

    他にもいっぱい書きたいことがあるのですが、今日はとりあえずこの辺で。

  • 驚異のリーダビリティ。難しい内容をこれだけ興味深く書けるとは、科学ライターとして、サイモン・シン以来の著者だと思う。(訳者が同じ青木薫氏というのもあろうが……)。量子という概念の発見から、その発展を追うなかで、科学者たちの悪戦苦闘が描かれる。その紹介の仕方が巧みで、まるで三国志かなにかを読んでいるようだ。物理学という学問が「実在」をめぐる宗教論争のようになっていく過程、最初は抵抗をうけつつじりじりと「コペンハーゲン解釈」派が勝利を収めていくようすは非常にスリリング。近年出色の1冊だ。

  • アインシュタインとボーアの量子力学の論争を中心に、量子革命の百年あまりの歴史を描かれている。
    量子力学の歴史と時代背景がわかって、楽しめた。

  • 量子力学は私の大学時代はさわりをわずかに学んだだけだ.カーナビの技術に量子力学は無くてはならないという話を聞いても、イマイチ理解できない.本書ではアインシュタインを筆頭に数多くの天才が量子力学を構築していく過程が個人的な裏話も含めて詳しく述べられている.すごい著作だと感じた.

  • 【「教職員から本学学生に推薦する図書」による紹介】
    戎修二先生の推薦図書です。

    "量子力学がどのように誕生し、どのように発展してきたかについて、数多くのノーベル賞受賞者の苦悩や激論とともに語られている。
    副題にはアインシュタインとボーアのみが記されているが、その時代を生きた数多くの科学者について詳細に描かれており、彼らの人間性も本から感じとれる。
    20世紀初頭の話だけではなく、最近の量子テレポーテーションまで話題は及んでおり、読み物として面白いだけではなく、量子力学をより深く知ろうとしたときの参考書としてもお薦めである。"

    図書館の所蔵状況はこちらから確認できます!
    http://mcatalog.lib.muroran-it.ac.jp/webopac/TW00348671

  • 読了後、頭と胸の温度が上がった気がしました。量子力学の神殿を打ち立てた神々は、ギリシャ神話の神々のような、極めて人間っぽいドラマを繰り広げます。その中心はアインシュタインとニールス・ボーアの実存と解釈を巡る激しい頭脳戦なのですが、二人を取り巻く神々もお互いに影響しあいながら物理学を刷新し続けます。そう、この戦いの感動ポイントは相手の疑問に真剣に向き合うことで、さらに理論が更新されていくところです。自分の尊敬している相手に納得して欲しい、正しいかもしれないが本当にそうなのか?その応酬。そして、それは今でも続いているのです。自分が学生のころは、こと、量子論についてはコペーハーゲン解釈の圧勝的なイメージがありましたが、今、アインシュタインの評価の見直しがなされていることも知りました。「真実を手に入れたいという願望は、真実を手に入れたという確信よりも尊い」という言葉は本書のテーマそのものだと思います。真実を求め続ける人間たち、という存在にグッときました。

  • 量子力学をめぐり対決するアインシュタインの実在論ととボーアのコペンハーゲン解釈。おもしろかった。学生な時に読みたかったなぁ。

  • 自分が理系だったらもっとすんなり読めたと思う。

    物理面白いな。

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