きげんのいいリス

制作 : Toon Tellegen  長山 さき 
  • 新潮社
3.62
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本棚登録 : 231
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (149ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105069926

作品紹介・あらすじ

あなたに似たどうぶつがきっといます。『ハリネズミの願い』の作家による幻の名作完全版! ブナの樹の上に暮らす忘れっぽくて気のいいリス。知っていることが多すぎて、頭の重みに耐えかねているアリ。始終リスを訪ねてきてはあちこち壊す夢みがちなゾウ。思いとどまってばかりのイカ。チューチュー鳴くことにしたライオン。……不器用で大まじめ、悩めるどうぶつたちが語りだす、テレヘン・ワールドへようこそ!

感想・レビュー・書評

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  • 確かに、51編のみんな 読んで幸せ イラスト眺めて幸せ になれました♪ とりわけアリとリスの交流が気持ちいい。さすがにオランダの作家なので出てくる生き物が豊富ですねぇ、中でもしきりに木から落ちる象は微笑ましい。そして大人だからこそ受け止め方が多分人それぞれでしょうね 笑!大人こそ読んだほうが良いかも知れない童話です。

  • つけられるものなら5つといわず、10でも、50でも、100でも星をつけたい。
    こんなに大好きな本に出合えることはなかなかないだろう。
    「人生を変えた一冊!」みたいな大げさなことではないのだけれど、この本を読む前と、後とでは、たしかに世界が違って見える。私の中にほんのりあったかい灯りをともしてくれた感じ。さみしくなったり、不安になったときにはいつでも、この灯りのもとに立ち戻ればいいんだ、そしてこのぼんやりしたあたたかさをただ感じればいいんだ。

    『ハリネズミの願い』で知ったトーン・テレヘンの世界。日本語版の表紙は本作も同じく祖敷大輔さんのイラストで、両手で木の実を抱えたリスの可愛らしい姿に、さっそく心を掴まれてしまいます。(祖敷さんのイラストは挿絵としてもたくさん出てきます!)
    『ハリネズミ』同様、たくさんの動物たちが登場する短い寓話的なおはなしが、こちらはぜんぶで51編。原語版は『ハリネズミ』よりも前の1993年に出版されたそうです。
    ハリネズミくんも登場しているのですが、まだあの「ネガティヴ・キャラ」は確立されていません。本作では、ちょっと危険を冒してみたい「衝動」にかられて高い木のうえに登ったりして(リスにおんぶしてもらってるけど)、なかなかの勇敢っぷりを見せています。
    個人的には『ハリネズミの願い』よりもこちらの方が好きだ。もちろん、100%ポジティヴ要素で出来ているというわけではなく、それなりにダークな感じもチラチラするのだけど、「心やさしく忘れっぽく、きげんのいいリス」のキャラクターがすべてを溶かしてしまいます。かたく凝り固まった頭も心も、すっかりほぐれる。

    訳者の長山さんのあとがきによると、原題を直訳すると「ほとんどみんなひっくり返れた」となるそうです。このちょっと謎なタイトルは、冒頭の「サギのお話」に由来しているのでしょう。

    「ものすごくとっても、ひっくり返ってみたい」のに、どうしても、ぜったいにひっくり返ることができなくて、ピーンとはりつめた不動の一本足で立ち続けている孤高の鳥、サギ。どうぶつたちはみんなで知恵をしぼってサギをひっくり返してあげようとするけど…。サギは、傍でピョンピョン飛び跳ねて、何度もたやすくすべってはひっくり返っているカエルを、うらやましそうに見ている。

    このあとに続く二つ目のお話は、一話目の不思議な緊張感とはうって変わって超脱力系。もう、一気に力が抜けて、思わず吹き出してしまう。

    友だちのアリに手紙をしたためるリス。「アリへ。 話したいことがあるんだけど、手紙のほうがいいかと思ったので、こうして手紙を書いています。でも、やっぱり直接言ったほうがいいかもしれません。リス 」手紙を受けとったアリがリスのところへやって来る。一緒にお茶をのんで、お菓子を食べながら、ひとしきり何でもないおしゃべりをする。「で、ぼくになにを話したかったの?」帰りぎわにアリがようやくきり出す。リスはためいきをついて答える。「やっぱり手紙のほうがいいと思うんだ」。「いいよ」とアリ。その夜、リスはまたアリに手紙を書く。「やっぱり直接言ったほうがいいと思う。でも、どっちにしてもたいしたことではない」…。
    リスとアリの関係が最高です。すごく良い空気感。

    読み進めていくと、アリはアリで、これまたなかなか面倒くさい性分であることがわかる。アリはすぐ旅に出たがるんだけど、なんだかんだ理由をつけてはリスのもとに戻って来る。
    「リス、ぼく、旅に出なきゃならない」とやけにドラマチックに言い放ち、リスからは何も反応がないのに、「ほんとうに行かなきゃならないの?って聞いちゃだめだよ」とか「なげいたり、涙をながしたり、さびしくなるな、とか早く帰ってきて、とか言ったりしないで」とか、ひとしきり一人でグダグダしたあと、お別れの仕方が気に入らないと言って「これじゃあ旅に出られないよ」とふてくされる。
    また別のお話では、とうとう本当に旅に出たアリに、今度はリスがドラマチックに叫んでしまう。「アリ!帰ってきて!」小さくなっていくアリのうしろ姿を見ていたら、いたたまれなくなってしまったのだ。「アリが遠くにいるのを見たら、どうしようもなかったんだ。もしかしたら、永遠にいなくなっちゃうかもしれない!と思って」「だって、いやなんだよ。アリが旅に出るのが」と言って、心臓をドキドキさせている。
    か、かわいい…。

    どうぶつたちに性別は設定されていないので、ニュートラルな存在だと思うのだけど、関係性によっては、男女の関係のようにも見えてきたりするから不思議だ。
    アリとの関係の中では、いつもアリにリードされている感じのリスだけれども、別の友だちのゾウとの関係の中では、とても頼りになるお姉さんのような感じだったりもする。

    ゾウはいつもどこかにぶつかって周りのものを壊したり、高いところから落っこちてたんこぶをこしらえている。「きっとゾウは自分でもどうすることもできないのだろう」と、何も言わずに見守るリス。
    ものすごく暑い日に、すっかり溶けて「灰色の液体」になってしまったゾウが河に流れ込みそうになったので、リスはあわてて小さな土手を作って阻止する。おかげで、太陽が沈んだ後、ゾウはぶじ元の姿に戻ることができた。
    また別の日、朝早く、まだ寝ていたリスのもとを訪ねてきて「ねえ、踊らない?」と言うゾウ。ブナの木の上の、小さなリスの家の玄関の前で踊ろうというのだ。リスは「ぜったい下に落っこちるよ」と言いながらも、片方の腕をゾウの肩に置き、もう片方を腰にまわす。いち、に、さん、でひとつだけステップをふんで、案の定、下へ落っこちるリスとゾウ。でもそのたった一度きりのステップは本当にほれぼれするようなステップだった。

    他にもたくさんのどうぶつたちが登場する。
    あれこれ心配してばかりの陰気なカメは、自分が「カメである」という確信が持てない。
    ある朝、とつぜん自分のことが怖くてたまらなくなったライオンは、もう二度と吠えたり、恐ろしげににらんだりしないと誓って、かすかな声で「チューチュー」とネズミのように鳴いてみる。
    自分の明かりが急につかなくなったら…と心配するホタルに、どんな明かりでも消してしまえる何かがあれば欲しいと願うミミズ。「ぼくたちって、ぜんぜんちがうんだね」と言いつつも、ひととき一緒にダンスをする。
    爆発してバラバラになったコオロギは、カミキリムシに元どおりに治してもらったものの、浮かぬ顔。カミキリムシは、コオロギの「陽気な考え」をうっかり入れ忘れてしまったことに気づき、それをちょっと自分の頭のなかに入れて、踊ってみる。

    作者のテレヘンさんは、「どうぶつたちの物語」を書くにあたって、いくつか枠組みとなる規則を設けたという。「皆同じ大きさ」「同種類のどうぶつは複数登場しない」「物語内でだれも死なない」「人間とペットは出てこない」「どうぶつたちは入れ替わることができ、固有の個性をもたない」「どうぶつたちに過去と未来は存在しない」。
    「だれも死なない」というのが、なんだかすごく良いな、と思った。
    あと、どうぶつたちは皆、互いに関係し合いながらも、依存はしていない。いちばん最後の、リスと紅茶のお話を読み終わった時、ああ、だれも皆、孤独を引き受けて、静かに生きているんだな、と思ったら、なんだか胸がぎゅっとなった。


    この本はきっと私にとって、アリの持っている「小さな黒い箱」みたいなものになるだろう。アリは、この箱の中に「いろんなもの」を入れてとっておく。リスと一緒に「木々のいただきや星々を見ながらハチミツを食べ」、話をしながら過ごした「今晩」も、とっておくのだと言う。箱の中に入れたものは、いつでもまた取り出すことができる。たとえば、リスとアリにとって最も素晴らしい誕生日の思い出。アリが「ツグミの誕生日」を箱から取り出すと、リスとアリは「あまいクリのケーキをふたたび食べ、ナイチンゲールがうたい、ホタルの光が点滅するなか」、また一緒にダンスをすることができるのだ。
    箱を開ければ、そこにはいつでも素敵な思い出が待っている。

  • 2017年翻訳部門で本屋大賞を受賞した『ハリネズミの願い』の作家のもの。ハリネズミだけでなく、リスとアリをはじめ、ゾウやイカなど色々な動物たちが個性を発揮して出ている。読んでいると「ぼのぼの」を思い出した。ギャグはないけれど哲学的。動物たちが大真面目に何か考えていたるするところが可愛らしくしかも表現が素敵だ。「ハチミツの味が聞こえてきたような気がした」とか。リスの落胆とか敗北とか「不協和音からなる有毒の歌」とかよく考えますなあ。そして『ハリネズミ〜』同様、こちらも絵だけでもまた惹きつけられる。

  • 『ハリネズミの願い』が思いの外気に入ったので、その原点となる本書も読んでみた。
    『ハリネズミの願い』と比較するとそこまで陰気臭くはないが、やはりアイデンティティがテーマとなっていて非常に哲学的だった。
    面白いのは、どの動物にも必ず欠点があるところだ。
    欠点に気付いて悩んでも、結果的にどうでもよくなってしまう流れがどことなく救われた。
    幼稚とも思うが、アリみたいに意識的に忘れようとする逃避行為も大事ではないだろうか。
    気になる点が3つあったので以下に挙げる。
    ・ゾウの落下する癖
    ・アリが旅に出た後、アリが登場する話は動物達の懐古 か? 過去・現在・未来等の時間が一切存在しないの で時系列に捉われなくていいのか
    ・登場人物は全員男性なのか
    結局、動物の世界なので気にしなくていいのかも知れない。
    「ちょっと幸せだよ」と言えるように、私も少し幸せな状態が最も幸せなのではないかと感じた。
    『ハリネズミの願い』でもお馴染みの動物が登場する為、読了する頃には完全に庇護欲と母性が彼らに芽生えてしまった。
    是非彼らの別の物語を読みたい。

  • どうぶつたちがみな愛おしく、ユーモアたっぷりでくすりと笑える。ときどきじっくり考えたり、驚いてみたり、一度読んだだけでは物足りない。何度も再読したい一冊。

  • 悩める動物たちのお話。哲学的にも感じる、とても不思議な雰囲気の本でした。

    象とリスがダンスしたりと、動物たちのサイズ感も不思議なので、読み進めていくうちに、ピングーのようなクレイアニメで脳内再生するようになりました。

    挿し絵も可愛らしくて、ほっこりしました。

  • ちょっと不思議な本。
    51番の紅茶と話をするリス、が好き。

  • ほんとに忘れてたんだよ。でも、またリスのことを考えちゃったんだ
    どうでもいいような大事な話。ちょっと心が休まる話。

  • リスや友達のアリ、森や海に住むたくさんのマイペースな動物たち。他の誰かとお茶をしておしゃべりをしたり、比べて考えたり、一人で考えたり。どこか自分や周りのだれかと似ているようにも見えてくる。
    だれかと関わることで、だれかや自分自身を今まで知らないところまで見ることができる。

  • このころのハリネズミは性格がちがうのね。元々は児童文学だそうです。

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著者プロフィール

1941年生まれ。作家、詩人、医師。1984年に幼い娘のために書いた動物たちの物語『一日もかかさずに』を刊行後、動物を主人公とした物語を50作以上発表し、文学賞を多数受賞。2016年には、邦訳刊行された『ハリネズミの願い』(新潮社)で本屋大賞翻訳小説部門を受賞した。その他の邦訳作品に『きげんのいいリス』『おじいさんに聞いた話』(新潮社)や、絵本『小さな小さな魔女ピッキ』(徳間書店)などがある。

「2018年 『リスのたんじょうび』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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